患者さまが受けられた医療に関するご遺族の方への調査報告書
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●施設や自宅で死亡したがん患者は、病院や緩和ケア病棟(以下、PCUと示す。)で死亡したがん患者と比べて、症状が比較的落ち着いているため、施設や自宅での療養が可能になるなど、療養場所によって患者の病状や療養場所の希望が異なることが考えられる。●施設で死亡したがん患者は、病院など他の場所で死亡したがん患者と比べて、年齢が80歳以上の割合●自宅で死亡したがん患者の遺族の回答では、死亡前6カ月間に在宅診療を利用していたと回答した割合は76.2%であり、必ずしも医師の訪問診療を受けていないことに注意する。外来通院中や急死、回答遺族が当時の状況を把握していないことなどが考えられる。●PCUで死亡したがん患者は、遺族の回答をもとに死亡場所を特定したため、実際の死亡場所とは異な●調査に回答した遺族の続柄は、病院・自宅・PCUで死亡したがん患者の遺族では配偶者の割合が43.1%以上、施設で死亡した患者の遺族では子の割合が61.7%とそれぞれ最も高かった。他の場所と比べて、施設で死亡した患者の年齢が80歳以上の割合が高いため、回答遺族の続柄は子が多くなったと考えられる。●がん患者の遺族は、どの療養場所でも医療者は患者のつらい症状にすみやかに対応していたと回答していた割合が80.1%以上であった。療養場所に依らず、医療者への評価は概ね良好であると考えられる。●病院で死亡したがん患者の遺族は、施設など他の場所で死亡したがん患者と比べて、からだの苦痛や気持ちのつらさがなく過ごせたと回答した割合が低かった。他の場所と比べて、患者が若年であるため、患者が積極的な治療を希望することが多く、治療や処置に伴う避けられない苦痛を感じていた可能性や、就労などの心理社会的な課題を負うなど、複合的な理由が潜在すると考えられる。●自宅で死亡したがん患者の遺族は、病院など他の場所で死亡したがん患者と比べて、患者は望んだ場所で過ごせた、落ち着いた環境で過ごせたなど、療養環境に関連する回答における割合が高かった。他の場所と比べて、患者が希望する療養場所での生活を継続したことに加えて、遺族が患者と接する時間が長いことから、患者の療養状況をより理解できることが回答内容に影響したと考えられる。●施設で死亡したがん患者の遺族は、病院など他の場所で死亡したがん患者と比べて、死亡前に痛みや倦怠感、息苦しさなどの苦痛となる症状を抱えていたと回答した割合が低かった。他の場所と比べて、患者が高齢であるため、日常生活動作や認知機能の低下を併存しており、症状がはっきりと現れず非定型的となる可能性があることや、症状が比較的落ち着いているため、施設での療養が可能となり、施設の利用を選択して療養していたと考えられる。●病院や施設で死亡したがん患者の遺族では、患者と医師の間で最期の療養場所に関する話し合いがあったと回答した割合は28.0%以下、患者と医師の間で心肺停止時の蘇生処置の実施について話し合いがあったと回答した割合は35.8%以下と限られた割合だった。●他の場所と比べて、病院で死亡した患者の場合は、治癒や治療に対する希望があるため、最期の療養生活に関する話し合いをする心の準備に至らなかったことが考えらえる。施設で死亡した患者の場合は、高齢で認知症を併存しているため、患者との話し合いが難しいことが影響したと考えられる。58が86.3% と高く、日常生活動作の低下や認知症を併存していた割合が高かった。る可能性がある。2 死亡場所別の結果を解釈するうえで留意する点患者・遺族の背景の違いA 死亡場所で患者が受けた医療の構造・プロセスB 死亡前1カ月間の患者の療養生活の質C 死亡前1週間の患者の苦痛症状D 最期の療養場所の希望や医療に関する話し合い

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