患者さまが受けられた医療に関するご遺族の方への調査報告書
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 Ⅲ 考察のまとめ  59●施設で死亡したがん患者の遺族では、病院など他の場所と比べて、介護負担感が高かった。施設に患者が入所しても家族の関与が必要なことや、他の場所と比べて、患者が高齢であるため、病気の進行が比較的緩やかで療養期間が長くなる可能性があること、日常生活動作や認知機能が低下していること、主介護者が配偶者より子が多くなることなど、複合的な理由によって介護の負担をより感じた家族が、患者の療養場所として施設の利用を選択していることが影響したと考えられる。●がん患者の遺族では、どの療養場所でも死別後1-2年が経過した時点で抑うつ症状を抱えていた割合は●施設で死亡したがん患者の遺族では、他の場所と比べて、死別後1-2年が経過した時点で強い悲嘆を抱えていた割合が低かった。施設で死亡したがん患者が高齢であるため、遺族の続柄に子が多いことが影響したと考えらえる。●一般病院で死亡したがん患者は、がん診療連携拠点病院(以下、拠点病院と示す)で死亡したがん患者と比べて、年齢が80歳以上の割合が高いため、日常生活動作の低下や認知症を併存している割合が高かった。一般病院は、一般病床だけでなく療養病床を有する病院も含まれることや、患者が高齢であるため、積極的治療や通院による負担を避け、近隣の一般病院を選択して療養している可能性がある。●調査に回答した遺族の続柄は、拠点病院で死亡した患者の遺族では配偶者の割合が53.5%、一般病院で死亡した患者の遺族では子の割合が43.9%とそれぞれ最も高かった。拠点病院と比べて、一般病院で死亡した患者の年齢が80歳以上の割合が高いため、回答遺族の続柄は子が多くなったと考えられる。●一般病院・拠点病院で死亡したがん患者の遺族は、いずれも医療者は患者のつらい症状にすみやかに対応していたと回答していた割合が80.5%以上であった。医療者の評価は概ね良好であると考えられる。●拠点病院で死亡したがん患者の遺族では、一般病院で死亡したがん患者と比べて、からだの苦痛や気持ちのつらさがなく過ごせたと回答した割合がやや低かった。一般病院と比べて、患者が若年であるため、積極的な治療を希望することによって、治療や処置に伴う避けられない苦痛を感じていた可能性がある。●拠点病院で死亡したがん患者の遺族では、一般病院で死亡したがん患者と比べて、死亡前に痛みや倦怠感、息苦しさなどの苦痛となる症状を抱えていたと回答した割合が高かった。一般病院と比べて、患者の症状が重たいため、拠点病院から他の療養場所に移ることが難しいことが影響したと考えられる。●一般病院・拠点病院で死亡したがん患者の遺族は、患者と医師の間で最期の療養場所に関する話し合いがあったと回答した割合は29.3%以下、心肺停止時の蘇生処置の実施について、患者と医師の間で話し合いがあったと回答した割合は32.6%以下であり、一般病院・拠点病院のいずれも低い割合だった。19.9%以下であり、療養場所に依らず、高い割合ではなかった。E 家族の介護負担感F 最近2週間の遺族の抑うつ症状G 最近1カ月間の遺族の強い悲嘆患者・遺族の背景の違いA 死亡場所で患者が受けた医療の構造・プロセスB 死亡前1カ月間の患者の療養生活の質C 死亡前1週間の患者の苦痛症状D 最期の療養場所の希望や医療に関する話し合い3 一般病院・がん診療連携拠点病院別の結果を解釈するうえで留意する点

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