患者さまが受けられた医療に関するご遺族の方への調査報告書
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●本調査は、2017年と2018年にがんで死亡した者の遺族を対象に行い、54,167名から回答を得た。●本調査によって、がん患者の人生の最終段階の療養生活の状況は、より症状の重い患者・家族が、がん診療連携拠点病院を含む病院の利用を選択し、症状が比較的穏やかで高齢の患者・家族が介護施設の利用を選択していたことが明らかになった。医療・介護施設がそれぞれ担う機能に応じて、患者・家族が最期の療養場所を選択していたことが示唆された。●療養場所によって患者の病状や治療への希望が異なるため、本調査によって、最期の療養場所として、●がん患者の遺族全体では、患者の苦痛に対して医療者は良く対応をしていたと回答した割合は82.4%であった。一方で、からだの苦痛が少なく過ごせたと回答した割合は41.5%であった。基本的な対応では症状を緩和することが難しい場合が一定数存在する可能性がある。痛みを含む苦痛症状は、がん患者の療養生活の質に影響する重要な要因であるため、改善を図る必要がある。●がん患者の遺族全体では、患者と医師の間で最期の療養場所の希望や医療に関する話し合いがあったと回答した割合は35.7%であった。患者の意向・希望に沿った医療の提供を実現するためには、主治医等の医療者から提供される情報に基づく患者本人による意思決定が基本となるため、改善を図る必要がある。話し合いが十分にできていないことにより生じる影響を調査したうえで、具体的な対策の検討が必要である。●本調査結果と海外の状況については、似たような調査結果を用いて比較できる可能性はあるが、海外とは文●本調査の報告書には、都道府県別に回答を集計した結果も記載した。都道府県別の結果は予備的な解析●今後はさらにこの調査を発展させ、以下のような調査研究を行うことで、わが国の現状をさらに精密に60どちらが良い・悪いと単純に比較・判断することは困難である。化や医療制度など民族的・文化的・社会的背景が異なるため、直接比較して解釈できるものではない。であり、参考値として示す。今後、より詳細な調査解析が必要である。把握し、具体的な政策の提言につなげることができると考える。•本調査結果の推移を把握するための定期的な継続調査•患者と医療者の間での療養場所や医療に関する情報提供や意思決定支援の把握•多死社会を踏まえた、がん以外の疾患も含めた遺族を対象とする調査•認知機能低下等の高齢者特有の併存症をもつ高齢・超高齢者への望ましい医療提供体制の把握E 家族の介護負担感●一般病院で死亡したがん患者の遺族では、拠点病院で死亡したがん患者と比べて、介護負担感がやや高かった。拠点病院と比べて、患者が高齢であるため、日常生活動作や認知機能の低下を併存しており、介護の負担に加えて、病状に不安を感じた家族が、患者の療養場所として一般病院の利用を選択していることが影響したと考えられる。F 最近2週間の遺族の抑うつ症状●がん患者の遺族では、一般病院・拠点病院ともに死別後1-2年が経過した時点で抑うつ症状を抱えていた割合は、21.5%以下であり、一般病院・拠点病院のいずれも高い割合ではなかった。G 最近1カ月間の遺族の強い悲嘆●拠点病院で死亡したがん患者の遺族では、一般病院で死亡したがん患者の遺族と比べて、強い悲嘆症状を抱えていた割合が高かった。一般病院と比べて患者がやや若年であるため、遺族の続柄に配偶者が多いことが影響したと考えられる。 4 結語

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