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国立がん研究センター がん予防・検診研究センター「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版発行

対策型・任意型検診に新たに胃内視鏡検査を推奨

2015年4月20日
国立研究開発法人国立がん研究センター

国立研究開発法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター(所在地:東京都中央区、センター長:津金昌一郎)は、胃がん検診の科学的根拠を示すガイドラインとして「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版を発行し、ホームページで公開しました。ガイドラインでは、胃がん検診の利益(死亡率減少効果)と不利益について科学的な根拠を示し、わが国で実施すべき方法を推奨として提示しています。

本ガイドラインでは、胃X線検査、胃内視鏡検査、ペプシノゲン検査(単独法)、ヘリコバクターピロリ抗体検査(単独法)、ペプシノゲン検査とヘリコバクターピロリ抗体検査の併用法について、利益と不利益について検討しました。

その結果、2014年度版においては、胃内視鏡検査は複数の観察研究において死亡率減少効果を示す相応な証拠を確認し、対策型検診・任意型検診(注)(NCC管轄サイトへリンクします)ともに実施を推奨するとしました。胃内視鏡検査については、2005年度版では死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため対策型検診としては推奨せず、任意型の検診では個人の判断で検診受診するための情報提供を行うべきと判断していました。

現在の胃がん検診においては、40歳以上を対象としたX線検査による検診が標準的な方法として実施されています。胃内視鏡検査が胃がん検診に推奨されることは、受診者にとっては胃がん検診の選択肢が増えることとなり検診受診率の向上が期待できます。また、対策型検診において行うべき科学的根拠のある検診と根拠不明な検診を明示することにより、自治体や個人が胃がん検診の目的である死亡率減少を達成できる検診方法を正しく選択することが出来るようになります。

本ガイドラインは、2013年から2014年度国立がん研究センター研究開発費の研究班「科学的根拠に基づくがん検診法の有効性評価とがん対策計画立案に関する研究」(主任研究者:がん予防・検診研究センター検診研究部 部長 齋藤博)において作成されました。また、本ガイドラインは国立がん研究センターによる政策提言であり、厚生労働省の見解や政策を示すものではありません。

背景

わが国では、1999年度からがん検診が一般財源化され、検診の実施、検査方法の選択などは市区町村の判断に委ねられています。がん検診は、科学的根拠に基づき標準化された方法を正しく精度管理し実施する必要がありますが、地域によって実施状況にばらつきがあります。「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2005年度版公開後9年を経過しており、胃がん検診の新たな予防対策の科学的根拠を明確にすることが求められていました。

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版における胃がん検診の推奨例

胃X線検査

利益(死亡率減少効果)を示す相応な証拠があります。不利益については偽陽性、過剰診断(NCC管轄サイトへリンクします)、放射線被ばくの可能性があります。両者を勘案して対策型検診・任意型検診としての実施を勧めます。検診対象は50歳以上が望ましく、不利益について適切な説明を行うべきです。

胃内視鏡検査

利益(死亡率減少効果)を示す相応な証拠があります。不利益については偽陽性、過剰診断(NCC管轄サイトへリンクします)、前処置の咽頭麻酔によるショックや穿孔・出血などの偶発症の可能性があります。両者を勘案して対策型検診・任意型検診としての実施を勧めます。検診対象は50歳以上が望ましく、検診間隔は2年から3年とすることが可能です。ただし、重篤な偶発症に迅速かつ適切に対応できる体制が整備できないうちは実施すべきではありません。さらに、精度管理体制の整備と共に、不利益について適切な説明を行うべきです。

その他の方法

ペプシノゲン法、ヘリコバクター・ピロリ抗体、これらの併用法は利益(死亡率減少効果)が不明なことから、対策型検診(注)としての実施は推奨しません。任意型検診(注)として実施する場合には、死亡率減少効果が不明であることと不利益について適切な説明を行うべきです。

研究への提言

胃X線検査

今後の継続には、死亡率減少効果の大きさを再検証すべきです。偶発症に関する関連学会の調査が行われているが、過剰診断(NCC管轄サイトへリンクします)や放射線被ばくなどの不利益についての検討が必要です。40歳代に対する推奨について、ピロリ菌感染率をもとに再検討するための基礎資料を蓄積すべきです。

胃内視鏡検査

国内・国外での研究が進みつつあるが十全ではないことから、死亡率減少効果について引き続き評価研究を行うべきです。また、偽陽性、過剰診断(NCC管轄サイトへリンクします)、偶発症などの不利益に関する検討が必要です。40歳代に対する推奨について、ピロリ菌感染率をもとに再検討するための基礎資料を蓄積すべきです。

その他の方法

ペプシノゲン検査(単独法)やヘリコバクターピロリ抗体検査(単独法)、あるいは両者併用によるリスク層別化に内視鏡検査やX線検査を組み合わせた検診の死亡率減少効果に関する評価研究が必要です。さらに、リスク層別化、内視鏡検診に除菌を組み合わせた予防法について長期間追跡による評価研究が必要です。

用語解説

注:対策型検診と任意型検診:
対策型検診とは、集団全体の死亡率減少を目的として実施するものを指し、公共的な予防対策として行われます。このため、有効性が確立したがん検診を選択し、利益は不利益を上回ることが基本条件となります。わが国では、対策型検診として市区町村が行う住民検診が該当します。一方、任意型検診とは、対策型検診以外の検診が該当しますが、その方法・提供体制は様々です。典型的な例は、医療機関や検診機関が行う人間ドックが該当しますが、保険者による予防給付や個人による受診選択など受診形態も様々です。検診方法の選択、精度管理などの問題がありますが、個々の受診者への対応が可能となるという利点もあります。

参考

がん情報サービス「がん検診について」

プレスリリース

  • 「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版発行

関連ファイルをご覧ください。

報道関係からのお問い合わせ先

  • 国立研究開発法人 国立がん研究センター
    郵便番号:104-0045 東京都中央区築地5-1-1
    がん予防・検診研究センター 検診研究部 検診評価研究室長 濱島ちさと
    電話番号:03-3542-2511
    Eメール:canscreen●ml.res.ncc.go.jp(●を@に置き換えください)
  • 企画戦略局 広報企画室
    電話番号:03-3542-2511(代表)
    ファクス番号:03-3542-2545
    Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えください)

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