コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター 東病院

トップページ > 診療科のご案内 > 食道外科 > 胸部食道がん(胸腹部食道がん)

胸部食道がん(胸腹部食道がん)

診断:がんの広がり(進行度)を調べる

がんの進行度を診断するため、上部消化管バリウム造影、上部消化管内視鏡、頸胸腹部CT、頸部・腹部超音波の各検査を行います。そして、毎週火曜日に行われる食道外科、消化管内科放射線治療科および放射線診断科が参加する食道カンファレンスにおいてこれらの検査結果を検討し、進行度を診断しています。このように、すべての症例に対し、複数の診療科の専門家が集まって診断を行うことで、より正確に、かつ最適な治療方針を立てられるようにしています。

上部消化管バリウム造影

バリウムを飲み、エックス線で撮影をします。この検査では、病変の大きさと位置関係を見ることができます。

上部消化管バリウム造影

上部消化管内視鏡

病変の位置、大きさ、数を調べるだけでなく、組織を採取して確定診断を行います。特殊な染色液(ルゴール液)を用いて、小さな病変まで見つけ出します。

上部消化管内視鏡

頸胸腹部CT

病変の位置、広がりや深さ、周囲臓器との関係を見ることができます。リンパ節転移や遠隔臓器転移も調べます。

頸胸腹部CT

頸部・腹部超音波

頸部超音波では頸部リンパ節への転移の有無を、腹部超音波では肝臓への転移の有無を調べます。

PET

上記の検査で診断が確定されない場合のみ、放射性ブドウ糖液を用いて検査します。

進行度分類:病期

病期とは、がんの進行度を表す言葉です。病期は以下の3つの因子によって、4段階に分類されます(図8、表1、表2参照)。

  • T因子:がんの深さ
  • N因子:リンパ節転移
  • M因子:遠隔リンパ節転移または臓器転移

図8:食道壁の構造とがんの深さ(T因子)の分類

図8

表1:食道がんTNM分類(UICC第7版)

表1

表2:食道がん病期分類(UICC第7版)

表2

治療方針:集学的治療

手術は、内視鏡的切除(胃カメラによる切除)が不可能であり、かつ他臓器への浸潤と転移のない、完全切除が可能な症例が適応となります。したがって、臨床病期I(T1b以上の腫瘍)からIV(遠隔臓器転移を有する症例は適応外)までが適応となります。
臨床病期cT1bN0は手術単独となりますが、cT1bN0より進行した症例では、手術の効果を高めて長生きできるように、手術前に抗がん剤や放射線を組み合わせた補助治療を行っています。

病期別治療方針

  • 臨床病期IA:T1aに対しては内視鏡的粘膜切除(胃カメラによる切除)
    T1bに対しては手術(病理学的にリンパ節転移を認めれば、術後に抗がん剤を追加)
  • 臨床病期IB以上:術前補助療法→手術

術前補助療法

当院では、さらなる手術治療成績の向上を目指して術前補助療法の開発を行い、以下のように進行度に応じた補助療法を行っています。なお、現在、術前補助療法に関する臨床試験が進行中です。詳しくは「研究について」の項をご覧ください。

病期別の術前補助療法

  • 臨床病期IBからIIB:シスプラチン+5-FU
  • 臨床病期III以上:シスプラチン+5-FU+ドセタキセル、または化学放射線療法

手術術式

食道がんに対する手術術式は、頸部・胸部・腹部の3領域に及ぶリンパ節郭清を行い、食道を切除する術式を標準手術としています。当院の特色として、食道がんに対する手術をがん切除と再建に分け、がんの進行度に応じた手術治療の個別化を行っています。また、耐開胸性(胸を開けた手術に耐えられるかどうか)がない症例や80歳以上の超高齢者に対しても、術式を工夫して手術を行っています。

がん切除

食道がんに対する標準的ながん切除の方法は、右開胸(胸を大きく開ける手術)による手術です。当院では、がんの進行度に応じて、低侵襲性手術として完全胸腔鏡(穴を開けるだけの手術)で手術を行っています。

がん切除のアプローチ法とその適応

  • 右開胸アプローチ:胸部上部リンパ節に転移を認める症例or救済食道切除(注1)
  • 完全胸腔鏡アプローチ:胸部上部リンパ節に転移を認めない症例
  • 非開胸アプローチ(注2):耐開胸性はないが開腹に耐えられる症例

再建

再建術は基本的に腹腔鏡で行っています。

再建のアプローチ法とその適応

  • 開腹アプローチ:開腹手術歴がある場合
  • 腹腔鏡アプローチ:開腹手術歴のない症例

図9:食道がん手術のアプローチ法

図9

注1:救済食道切除:根治的化学放射線療法後の遺残と再発症例に対しては、標準術式に工夫を加え救済手術を行っています。

注2:非開胸アプローチ:多くの臓器機能に障害を有する症例や耐開胸性はないが耐開腹性がある症例に対しては、非開胸アプローチで開腹食道切除に腹部から中下縦隔、頸部から上縦隔リンパ節を可能な限り郭清し、根治性を高めた手術を積極的に行っています。

二期分割手術

通常は切除と再建を1回で行いますが(一期的手術)、80歳以上の超高齢者や臓器障害をもつ方では身体的な負担がきわめて大きく、一期的に手術を行っても、多くの場合、術後に質の高い日常生活が営めません。当院では、80歳以上の超高齢者や臓器機能に障害を有する場合、総合的に判断を行い、切除と再建を別の時期に行う「二期分割手術」を行っています。
二期分割手術では、1回目のがん切除の前に、胃カメラを用いて胃ろう(内視鏡的胃ろう:PEG)を造設し、がん切除術を行います。その後はいったん退院し、胃ろうによる栄養管理とリハビリテーションを行い、臓器機能が回復するのを待ちます。条件が整ったら再入院し、再建術を行います。

一期的手術と二期分割手術の適応

  • 一期的手術:切除と再建を1回で行うだけの体力と臓器機能がある80歳未満の患者
  • 二期分割手術時80分歳以上の超高齢者、または耐開胸性はあるが、ほかの臓器機能障害のために一期的手術に耐えられないと考えられる患者

図10:

図10