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国立がん研究センター 中央病院

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患者・医療者の皆様

医療者の皆様へ

A-TRAINの概要

研究概要

Fig1.png

Asian multicenter prospective study of circulating TumoR DNA SequencINg (通称、A-TRAIN)はアジア10カ国で行う国際共同トラスレーショナル・リサーチです。 

乳がん、卵巣明細胞がん、上咽頭がん、卵巣がん、子宮体がん、トリプルネガティブ乳がんの6つのがん種コホートへ参加施設の患者にご参加頂き、ctDNAの網羅的遺伝子解析を行うことで、治療開発の標的となる遺伝子異常を見出します。

ロゴの由来

A-TRAINロゴ 子宮頸がん

A-TRAINは「Asian multicenter prospective study of circulating Tumor DNA Sequencing」の略称です。
ロゴマークのリボンはDNAを意味しており、がんに関する遺伝子情報が徐々に紐解かれていく様を表しています。各コホートによってリボンの色が異なったロゴが使用されます。
(表示は子宮頸がん)

A-TRAINは、なぜアジアで行うのか?

Q. アジアと欧米諸国のがん患者さんでは何が違うの?

most common cancer world wide

生活習慣や環境因子などの違いから、アジアと欧米諸国では頻度の高いがん種が異なります。アジアでは感染や喫煙、飲酒による発がんが多く認められます。また、同じがん種でも組織型や罹患年齢などに欧米諸国との違いがあります。

出典:Ahmedin Jemal, et al (2019). The cancer atlas, third edition, The American Cancer Society, Inc.

Q. アジアに特徴的ながん種とは?

がん種とその原因

アジアでは胃がんや肝臓がんの割合が欧米諸国より高いという特徴があります。また、男性では口腔がんや上咽頭がんが、女性では子宮頸がんが多いと報告されています。これらのがんの原因の一つに感染が深く関わっていることが知られています。

また、卵巣癌については明細胞癌が欧米では卵巣癌全体の4-12%に対して、アジアでは10-20%を占めます。乳癌についてはアジアの方が欧米に比べ、診断時の年齢が若い傾向にあり、Luminal Bの症例が多いという特徴があります。

Q. アジア各国と共同で研究することの意義とは?

握手するイラスト

アジアと欧米諸国では頻度の高いがん種が異なります。そのため欧米諸国を中心とした治験や臨床試験ではアジアのがん治療を改善していくことは困難です。A-TRAINは、アジアに多いがん種をアジアの中で解決するための支援になると考えられます。また、複数の国々と共同で研究することでより早く、より 多くの症例を集めることができ、研究を加速させることができると考えられます。

Q. なぜ日本がリーダーシップを取るのか?

ATLASロゴ

日本人のがんもアジアと共通する点があり、欧米諸国のデータではわからなかった標的分子や遺伝子異常を含んだ特徴が見つかる可能性があります。また、日本だけでは症例数が少なく研究が進まなかったがん種についても、アジアと協力することでそれを克服することができ、治療薬開発を加速化させることができると考えられます。

A-TRAINは、なぜ Liquid Biopsy に注目するのか?

Q. リキッドバイオプシーとは?

Liquid Biopsy とは?

血液や体液などを利用して、バイオマーカーを診断・測定する技術の総称です。血中に流出した腫瘍由来のDNA(血中循環腫瘍DNA, circulating tumor DNA:ctDNA)解析が、現時点で最も臨床応用が進んでいます。今後、がんの早期診断や再発のモニタリング、治療標的の探索、治療後の効果予測などの様々な臨床応用が期待されています。

出典:Nature Reviews Clinical Oncology volume 18, pages297–312 (2021)

Q. 従来の腫瘍組織の採取ではどんな問題があったのか?

従来、がんの遺伝子などのバイオマーカーの解析を行うためには生検や手術による腫瘍組織の採取が必要でした。腫瘍組織の採取は身体への負担が強い一方で、リキッドバイオプシーは採血や尿から腫瘍由来の材料を採取することが出来ます。

Q. 侵襲度が低く素早く何度も解析できることは、どのように有益なのか?

生検や手術のような大きな侵襲を伴わないため、患者さんの負担が少なく検体が採取できます。したがって、生検や手術が困難な場合でも遺伝子異常の解析が可能になります。さらに、それが複数回に実施することができます。組織検体を用いるよりも結果の返却が早いことも大きな特徴です。

LBの利点
加えて、血液や尿の検体を用いることで、転移巣を含む腫瘍全体についての遺伝子異常をリアルタイムに評価することができます。がんの遺伝子異常は再発時や進行時など、時間と共に変化していくことがわかっており、リアルタイムな遺伝子情報を入手することは重要です。また、繰り返し評価を行うことで、病気の進行度合いのモニタリングに用いることもできます。

出典:Nature Reviews Cancer volume 17, pages223–238 (2017)

Q. 採取した血液検体からどのように遺伝子変異を検出するのか?

血球成分を取り除いた血漿中に遊離しているDNA断片を調べます。

Q. 組織検体に比べ血液や尿からの検体を使うことで起こる不利益はないか?

増殖速度が遅い腫瘍や腫瘍量が少ない一部の腫瘍を検査した場合、十分な遺伝子量が得られず偽陰性となる場合があります。