No How To Book
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がん治療によって、外見が変化し、それに伴う心の痛み。「外見が変わって、他人からがんだと気づかれた」「周りの人から、かわいそうだと思われたくなかった」。そんな気持ちから、外出の機会が減ったり、職場との人間関係や家族との関係がおかしくなったり。あるいは仕事や学校をやめたりする人もいます。そのために外見をどうするか、というのが、今までとても重要であると考えられてきました。ところが、こんな興味深い事実があります。「もしも自分が無人島で暮らすことになったら、外見は気にしますか」という質問に、ほとんどの人が「気にしない」と答えているのです。一人なら、気にしない。つまり、外見の変化からくる心の痛みは、自分以外の誰かがいるという、いわゆる社会があることによって生まれる痛みなのです。外見を解決するというのは、答えの一つであって、それよりも社会との関係性をどう回復して、自分らしい気持ちで人と付き合っていくことができるのか。それこそがもっとも大切なことなのです。会社と、友人と、家族と、町のコミュニティとどう今まで通り付き合っていくのか。たとえば、脱毛したらウイッグをするという答えが全てではなく、まず、どうしたら社会と今まで通りの関係性をつくれるのか、を考える。そのためにウイッグが必要かどうか。その答えは、一人ひとり違います。

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