人とのコミュニケーションを拒んで、ずっと家の中にいた人ががんになりました。医師、看護師、薬剤師、カウンセラー、栄養士など、接する人間のすべてとも関わろうとしません。手術や薬物療法、経過は良好になっていくはずでした。ところが、思ったようによくなりません。医師たちは何が原因なのか、徹底的に調べました。しかし、原因がみつかりません。なぜなら、本人が、処方された薬を飲んでいなかったからです。それでも、医師や看護師はあきらめず、話しかけ、気持ちを理解しようとしました。やがて、ゆっくりと気持ちがほぐれていき、おそらく、その人は何年かぶりに、人と気持ちが通じあえるようになりました。人としての信頼関係を築くことができました。その人が、看護師や医師に相談し、自分で出した結論は、自分の意思として、もう、これ以上治療を続けたくない。でした。答えも、正解もない。たったひとつの生き方が、何万通り、何百万通り、何千万通りあります。62
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