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国立がん研究センター 中央病院

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画像診断(がぞうしんだん)

更新日 : 2021年10月19日

公開日:2014年4月28日

画像診断について

画像診断とは、がんを早期発見したり、がんの広がりや性質を調べるなど、がんの診療に欠かせない検査の1つです。適切な治療を行うための方針の立案や予後の予測に重要な役割を果たします。

画像検査には、超音波検査、レントゲン、CT、MRI、核医学検査などがあり、超音波やX線、磁気を使って安全に正確な診断を行うことができます。人間の体の輪切りの画像をつくったり、造影剤の投与前後での変化を調べることで、病気の種類(組織診断)を推察したり、腫瘍の形・位置・広がり・正常組織との関係を調べます。

希少がんで行う画像診断

超音波(エコー)検査

図1 超音波検査
図1
悪性黒色腫 肝転移
高エコー腫瘤を認める

超音波を発する装置を当て、音波のはね返る様子を画像にすることで、体内の状態を観察します。超音波が伝わりやすくなるように検査用のゼリーを塗り、超音波を送受信する器械を体に当てて検査を行います。

X線(レントゲン)検査

図2 X線検査
図2
骨肉腫 右大腿骨
均一な骨硬化性病変を認める

X線の通りやすさの違いから、内部の状態を観察する検査です。頭部、骨、胸部、腹部、などの撮像を行います。消化管検査ではバリウムや造影剤を使って調べることもあります。

CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(核磁気共鳴画像)検査

CT(コンピュータ断層撮影)検査

図3 CT検査
図3
間葉性軟骨肉腫 左腸骨
不均一な骨硬化を伴う腫瘤を認める

CTはX線を使った検査です。単純X線写真ではわかりにくい体の深部に発生した腫瘍の位置や大きさ、内部性状のみでなく、腫瘍の広がり、血管、神経など重要な組織との関係をみることができます。また内臓への転移の有無や、原発腫瘍を探すときなどにも役立ちます。治療後は定期的に検査を行い、腫瘍の大きさの変化や形状の時間的変化などをみたり、再発の有無を調べます。

図4 CT検査(2)
図4
骨肉腫 肺転移
左肺野に著しい石灰化を伴う腫瘤を認める

検査の目的によっては、造影剤を腕の静脈から注入することがありますが、ぜんそくやアレルギー体質の人は蕁麻疹やかゆみが出るなどの副作用が起きる可能性が高くなります。特に以前に造影剤でアレルギーが出たことがある方は、あらかじめ医師に申し出てください。また検査が終わって数時間後に症状が出た場合には、なるべく早く担当医や担当者に連絡してください。

MRI(核磁気共鳴画像)検査

図5 MRI検査(1)
図5
膠芽腫 右側頭葉
不均一な造影効果を伴う腫瘤を認める

MRIは磁石の力を使った検査です。磁気共鳴法という強力な磁石の力を用いた検査で、体のさまざまな角度(体の輪切り像、前後や左右に縦割りにした像)の断面を見ることができる検査です。脊髄や骨盤の中、骨の断面など、CTでは撮影しにくい部分も調べることができます。
検査のときは、機器の寝台の上にあおむけになり、そのまま寝台ごと筒状の機械の中に入ります。検査中は装置から大きな音がしますが、これは磁場を起こすためのものなので心配ありません。
MRIは強い磁場を発するため、心臓ペースメーカーを装着している患者さんには用いることができません。金属製の物質が体内にある場合にも、撮影できないことがあります。

図6 MRI検査(2)
図6
子宮平滑筋肉腫
子宮に不均一な信号変化を示す腫瘤を認める

薬の種類は異なりますが、CT検査と同様、静脈から造影剤を注射して検査をすることもあります。

核医学検査(PET、骨シンチグラフィ)

PET(陽電子放出断層撮影、ポジトロンCT)

図7 PET(陽電子放出断層撮影、ポジトロンCT)
図7
骨肉腫 左大腿骨
原発巣に一致して強い異常集積を認める
他臓器の異常集積は認めない

がん細胞や活動性の高い病変ではそのエネルギー源であるブドウ糖の代謝が盛んであることがわかっています。PET検査ではFDG(放射性ブドウ糖類似物質)というブドウ糖に似た薬剤を注射することにより、体内でブドウ糖代謝が盛んな部位を描出します。CTやMRIではがんの大きさや広がりを調べることができますが、それに加えてPET検査ではがん細胞の活動状態(活発にブドウ糖を消費しているか、など)を調べることができます。がん研究センターでは、がんの位置をより正確に把握できるCTと組み合わせたPET/CT検査や、癌と周囲構造の関係がより詳しく把握できるMRIと組み合わせたPET/MRIを実施しています。
検査当日の朝は絶食となります。FDGを腕から注射したあと、お薬が病変に集まるまで1時間ほど安静にしてお待ちいただいてから撮影になります。撮影は通常あおむけの姿勢で行い30分ほどかかります。そのため、FDGを注射してから2時間近くは検査室から出ることはできません。
FDGは一般にがん細胞に取り込まれますが、がん細胞以外の細胞にも取り込まれたり、また反対にがんであってもあまり異常としてみられない場合もあり、ほかの検査結果と合わせて総合的に判断されます。また、注射された薬から出る放射線は時間とともに弱くなり、多くは尿と一緒に体の外に排出されますので心配ありません。

図8 PET/CT検査
PET/CT検査1
PET/CT検査2

上:PET/CT 悪性黒色腫 PET/CTでは病変がどこに広がっているかを容易に観察できる。
下:PET/MRI 舌根部癌 PET/MRIでは病変と周囲構造や血管との関係を容易に把握できる。

骨シンチグラフィー

骨に転移がある場所では骨が壊されたり新たにつくられたりしていることがわかっています。骨の成分によく似た放射性薬剤を注射して、その成分がどこでたくさん使われているかを調べるのが骨シンチグラフィー検査です。
絶食など検査当日に制限はありません。お薬を腕から注射したあと、2時間から3時間ほどお待ちいただいてから、あおむけの姿勢で30分ほどの撮影になります。注射から撮影までの間は検査室から外出できます。

執筆協力者

曽根 美雪
  • 希少がんセンター 放射線診断、IVR担当 曽根 美雪(そね みゆき)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 放射線診断科 IVRセンター
渡辺裕一
  • 国立がん研究センター中央病院 渡辺裕一(わたなべ ひろかず)
  • 放射線診断科
菅原 俊祐
  • 国立がん研究センター中央病院 菅原 俊祐(すがわら しゅんすけ)
  • 放射線診断科 IVRセンター