トップページ > 研究組織一覧 > 基盤的臨床開発研究コアセンター > 創薬・疾患モデルコア > 創薬標的・シーズ探索部門 > 研究プロジェクト > 胃がん、食道がんの個別化医療を目指した本態解明および診断薬、治療薬の開発

胃がん、食道がんの個別化医療を目指した本態解明および診断薬、治療薬の開発

胃がん

未分化型胃がんの再発形式は腹膜播種が多く、治癒的切除可能進行がん(IIからIII期)の開腹時腹腔洗浄細胞診(CY)陽性患者の80%は3年から4年以内に腹膜播種を起こす。

さらに、5年以内に85%の患者で腹水を貯留し、この段階で予後2か月から3か月と診断される。I期から腹水を貯留する卵巣がんと異なり、未分化型胃がんはI期ではほぼ100%の患者でCY陰性である。

IIからIII期では、末梢血、骨髄液中にがん細胞が既に存在しているにも関わらず、腹膜播種が主な死因である。

すなわち、肝臓や肺への遠隔転移より、腹膜へ転移しやすい性質を持つと考えられ、CY陽性の時期から有効な治療が行われれば、予後は大きく変わる可能性がある。

本年度は、共同研究によって腹膜播種関連キナーゼ遺伝子DDR2を同定した。

また、診断薬としては、本年度も、腹腔洗浄液中の微量がん細胞を検出し、術後再発の予測と術前化学療法の効果を監視できる6種のマーカー遺伝子と3種の内外部コントロール遺伝子からなるミニDNAチップの改良を住友ベークライト株式会社との連携で行った。

同社では、2017年4月から研究用ニミDNAチップ受託解析サービスを事業化することになった。

食道がん

食道扁平上皮がんの根治的化学放射線療法(根治的CRT)は低侵襲性な治療であるが、5年生存率が37%であるため、治療前効果予測と予後不良症例の本態解明が重要である。

そこでIIからIII期の局所進行がんの治療前生検試料274症例を用いた網羅的な遺伝子発現解析を行った。

治療開始時期によって107例と167例の2つのセットに分け、教師無しクラスター解析と転写因子ネットワーク解析により根治的CRTでの予後に相関したサブタイプの同定を行った結果、5つのサブタイプ(1a, 2a, 3b、5, 7)を見出し、サブタイプ1aはM1(間質型1)、2aはI(免疫活性化型)、5はM2(間質型2)および7はE(上皮型)と命名した。

各サブタイプで特異的に高発現する遺伝子から固有の分子経路を推定したところ、サブタイプM1では転写因子PRRX1による間質誘導の分子経路が、サブタイプM2では転写因子FOXE1による放射線抵抗性・薬剤抵抗性関連の分子経路が、サブタイプEでは転写因子SIM2による分化誘導の分子経路がそれぞれ活性化していることが予想された。


2016年度は、予後が良いサブタイプEの分化形質やCDDP、放射線に対する感受性形質をSIM2が規定していることをin vitro およびin vivoで示し、論文を投稿した(Tamaoki M et al)。さらにEタイプ以外の症例では、転写因子SIX1によってTGF-βの分子経路が活性化し、悪性基底細胞の自己複製を促し、分化を抑制し、放射線に抵抗性となることを示した(Nishimura T et al、Cancer Sci. 2017)。

以上のように、生物学的根拠を基にした診断薬の開発を着実に進めることができている。

さらに、CRTによって細胞障害性T細胞が活性化している信号が誘導されるIサブタイプ(Tanaka Y et al, PLoS One 2015)の患者に対する、免疫チェックポイント阻害剤の医師主導治験の準備を開始した。


 一方で、治療前生検による予知医療のための体外診断薬の開発については、2014年から2016年度までAMED革新的がんの支援を受け、全国10施設から226例の治療前生検試料を集め(SUCCESS試験、下図)、予後良好なサブタイプEを治療前に分類するためのマイクロアレイを使用した我が国初の診断薬として、製薬会社と共同で開発を継続している(2017年から2019年もAMEDの継続支援)。

AMED革新的がん