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成人T細胞白血病リンパ腫における高深度全ゲノム解析

これまで我々が実施してきた成人T細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma: ATL)の統合解析により、多数のATLの遺伝子異常が明らかにされてきました。しかし、これまでの解析はエクソン領域を中心とした解析であり、未解明のゲノム領域が残されていました。そこで、我々は国内外の施設から150例のATLサンプルを収集し、全ゲノム解析を行いました。タンパクコード・非コード変異、構造異常、コピー数異常のデータを統合して解析することで、56個のドライバー遺伝子を同定しました。この中には、以前は解析されていなかったエクソンに多数の異常を認めたCIC遺伝子(ATL33%)や、構造異常によるC末端切断が高頻度に起きていたREL遺伝子(ATL13%、GCB型のDLBCL13%)等の11個の新規遺伝子が含まれていました。また、タンパク非コード領域ではスプライス部位の変異を繰り返し認めました。さらに、全ゲノム解析による遺伝子異常の情報を用いて、ATL患者を二群に分類でき、この分類は臨床所見や予後と関連していることを明らかにしました。このように全ゲノム解析は、様々な種類の異常を包括的に同定することができ、今後のがん研究において不可欠な技術と考えられます。また、本研究で得られた知見は難治性血液がんであるATLの新たな診断法や治療薬の開発につながる基盤となることが期待されます。

 

全ゲノム解析で明らかになった解明されたATLのゲノム異常の全体像

図:全ゲノム解析で解明されたATLのゲノム異常の全体像(Kogure Y et al., Blood. 2022.)

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