コンテンツにジャンプ
がん対策情報センター

トップページ > プロジェクト > がん情報普及のための医療・福祉・図書館の連携プロジェクト > 「図書館の健康医療情報コーナーの先にあるもの~医療・福祉側からの期待とこれからの可能性~

「図書館の健康医療情報コーナーの先にあるもの~医療・福祉側からの期待とこれからの可能性~

日時:2016年11月9日(水曜日)10時から11時30分
場所:パシフィコ横浜 アネックスホール2階 202

会場風景

このたび第18回図書館総合展の運営委員会主催フォーラムにて、国立がん研究センターがこれまで行ってきた、図書館と医療機関の連携プロジェクトの一部をご紹介させていただきました。多くの図書館関係者を前に、図書館と医療機関、福祉機関が連携することでできる環境づくりについて、身近な事例を紹介しています。

八巻知香子室長

まず、総合司会の高山智子部長(国立がん研究センターがん対策情報センター)より、本日のフォーラムの概要を紹介した後、八巻知香子室長(国立がん研究センターがん対策情報センター)が、「医療・福祉側から図書館への期待~図書館と医療福祉の連携プロジェクト概要~」について説明を行いました。

がんの罹患者が増える中で、がん相談支援センターなどでの情報周知の方法に課題があること、医療機関の中ではなく、日常生活になじむ場面での情報提供を模索する中で図書館との連携の取り組みが始まったこと、その後、JST事業の助成により、大阪府堺市、神奈川県逗子市、北海道浦河町の3地域での実際の活動が始まったことが説明されました。本日主に紹介する堺市での活動では、講演会、写真紙芝居などを企画する中で、さまざまな組織との関係づくりが進み、パスファインダー作成や「ブックdeトーク」と名付けた読書会などの活動も進んできたことがあげられました。

続いて、堺市の活動に携わる3人の関係者から、それぞれ取り組みを始めたことによる変化などについて報告がありました。

 

原田敦史さん

堺市立健康福祉プラザで点字図書館長を務める原田敦史さんからは、視覚障害者にがん情報を提供する取り組みについて紹介されました。事業の発足時には、視覚障害者を支援する点字図書館の役割、つまり自分たちのことを知ってほしいというところからスタートしました。
けれども実際に始めてみると、医療機関、図書館の方が積極的に関わってくれたことで、がん情報をどう提供していくかという今までになかった視点をもつことができ、その中で自分たちが視覚障害のある人たちに向けて医療情報、目の病気である眼疾患についても情報を提供していなかったことに気付いたのです。また、これまで医療の情報は、点字版、音声版での提供はほとんどなく、あっても古い情報の場合も多かったのですが、今回の連携事業として一緒にパスファイダーなどを作成するにあたっては、点字版、音声版も同時につくることができ、新しい情報を遅れることなく視覚障害者に発信することができたのはとてもよかった。さらには、がん検診の体験コーナーなどを企画したことで、情報を、点字・音声・拡大図書という文字情報だけではなく、聞いて、見て、触ってといった新しい形での情報提供の在り方を試行でき、それが自分たちの新しい事業展開にもつながっています、と協働の成果が報告されました。

 

がん看護専門看護師の古谷さん

堺市立総合医療センターのがん看護専門看護師の古谷さんからは、病院でのがん情報を提供する取り組みついて紹介されました。病院でも書籍を置いていたが治療に関する情報に限られ、患者さんが読んでホッとできる内容のものはなかったことも含め、置き方の工夫が不十分でした。医療機関以外の場、市民にとっては身近な場である図書館で、がんの相談場所を周知できることや、医療機関には置きにくい闘病記などの本が置かれている図書館との協働で情報提供が可能であることなど、今回の活動に参加して知ることできました。また、自分の好きな本を紹介しながら、病気や健康、命について語る「ブックdeトーク」は自分自身も好きな活動で、本を通して当事者目線で、重くも暗くもならずに思いを語ることができる場となっており、本を置くだけでなく、どのように情報を提供するかを考える機会にもなり、今後も続けていきたいと思っています。これらの活動を一緒に進める中で、どうしても医療者目線になりがちな情報提供が、当事者目線でできるようになったこと、視聴覚障害の方への情報提供の在り方は、医療者でもわからないことが多く、協働していく中で、病院での視聴覚障害者の方への情報提供だけでなく支援の在り方について考える機会につながっています、と協働の成果が報告されました。

 

堺市立西図書館の岡野さん

堺市立西図書館の岡野さんからは、図書館でのがん情報を提供する取り組みについて紹介されました。連携が始まる前後の図書館の書架の写真を示しながら、連携後は健康情報コーナーの一角にチラシを置くなど、がんに関心がない人にも目が届くような工夫をしたなどの変化がありました。また事業に参加したことで、まず図書館員ががんに関するレファレンスや照会先を知ることができたこと、がんになる前の予備知識が大事であり、その予備知識を身近で提供する場としては、図書館が最適な場の1つであることを自分たち自身が認識できたことは大きな成果でした。今後は、図書館と図書館の取り組みを市民により知ってもらい、活用してもらうために、まず職員に知ってもらうこと、コーナーを充実させること。そして、自分たちがこの取り組みを通して、知らなかったことを知ることができたように、図書館以外の方にも知る喜びを知ってもらうための取り組みを充実していきたいと考えている、と協働による成果が報告されました。

 

3人の報告を受け、それぞれの活動を見守られてきた田村俊作名誉教授(慶應大学)からは、堺市のこれらの活動には、この日参加できなかった堺市の行政担当者が加わっていることが重要なキーの1つになっています。
そして、この活動の意義は、図書館、医療機関と市の担当課の3者が一緒に取り組んだ活動そのものだけではなく、参加した機関それぞれがそこで学んだことを次の活動へと生かしており、このことが相乗的にいい波及効果を生んでいます。また、こうして楽しくお互いから学ぶことの波及効果は、堺市だけではなく、その他の地域、逗子市や浦河町でも見られています、との協同による成果が報告されました。

 

大阪南医療センターの萬谷和広さん

次に、今回紹介したプロジェクトとは別に、大阪府河内長野市で始まった取り組みについて、大阪南医療センターの萬谷和広さんから紹介がありました。この取り組みは、平成26年度にがん相談支援センターを紹介する講師として参加した図書館員向けの研修会で、偶然参加していた同じ市内の図書館員との名刺交換がきっかけで始まりました。関係づくりを進める中で大事なことは、それぞれの活動の強みや弱みを共有し、お互いを補完・強化できる試みを行うこと。そして、この試みが、住民や国民のニーズ/療養の質の向上に対応できる情報提供の体制を構築することにつながると考えています、と協働の重要さを述べ、今年9月に行われた講演会を例に、連携の取り組みについて具体例が紹介されました。図書館からのリクエストで、世間でも話題になっている乳がんについての講演会を企画し、乳がんの罹患(りかん)が多い年代層を想定した準備を行ってきたこと。子ども連れでも参加できるようにキッズコーナーを設け、医療センター小児科からマットを借り、図書館からの絵本を用意し、さらに市の子ども・子育て総合センターからおもちゃを借りて、会場を準備したこと。これらの結果、ターゲット層の集客につながる会となり、参加者からの満足度も高く、主催者側も楽しみながら、思ったより簡単に実現できたのではないでしょうか。こうした協働を始めるために、「広報」という観点からスタートするのは、医療機関も図書館も任務としてあげられていることでもあり、お互いに取り組みやすいと考えられます。まずはがん相談支援センターに、あるいは地域活動自体を業務にしている医療ソーシャルワーカーに、ぜひ一度提案ください、との呼び掛けで締めくくられた。

 

逗子市立図書館の小川俊彦館長

最後の講演として、図書館を運営する立場から、逗子市立図書館の小川俊彦館長からお話がありました。医療関係者、行政担当者はそれぞれ「ホームグラウンド」での勝負だが、図書館の立場からすると、医療は「アウェイ」であること、図書館で新しい仕事を始めることは、その地域の了解をとる、組織の了解をとる、という点では、困難がありました。結果としては、偶然も重なって、逗子市の中で、逗子市立図書館で行う医療・健康をテーマにした取り組みが認められていくことにつながりましたが、この背景として、逗子市の高い高齢化率と、がん検診率の低さなどがあり、医療・健康のことは、市にとっても重要なテーマであったのかもしれません。

この活動を通じて感じたのは、「医療関係者の皆さんがとても役者揃い」だということです。実際に、自分たちでシナリオを書き、医師や看護師、保健師が役者となって寸劇をやるという試みは、図書館員だけではできなかったと思います。
そして、活動による一番大きな変化としては、他領域の人たちと関わる中で、図書館の中で「人が育った」ことです。
常勤であるかないかに関わらず、書架の展示方法や選書、成人向けブックトークの企画など、自分たちが何をやるべきかを考えるきっかけになったと述べられました。これは、医療側から求められていることを実感してこそ、それをどう形にできるか図書館員としてできることを考える機会につながったのではないかと感じているとのことでした。

本日の総括として、田村名誉教授から3つのキーワードがあげられました。

 

田村名誉教授

1つ目は「出会い」です。出会いがあり、その中で生まれる活動にいろいろな人を巻き込んでいくことが大事なポイントとなります。萬谷さんの紹介にあった「つながるための戦略」を考えていくのは大事なことでしょう。出会いにより、堺市では健康福祉プラザにまちライブラリープラザ「ひといき」がつくられ、この「ひといき」の活動を医療者や市の職員が支えています。のみならず、この戦略にはボランティアの方の関わりや活動も大きかったのではないかと思われます。

2つ目は「気付き」です。本日の話の中に点字図書館、障害のある方への情報提供の話がありましたが、障害の問題は実は障害者だけの問題ではなく、アクセスの問題でもあるのです。このことは、高齢になればだれもが抱える問題です。参加することで、気付きと学びがあり、いろんなことがわかってきます。そして、皆さんがさまざまな問題に気付けば、自分たちだけではできなかったことが、できるようになります。

3つ目は「楽しさ」です。「ブックdeトーク」のように、本を通して学べる、そんな学びがあることが、楽しさにつながっていくのではないか、と感じます。参加することで楽しめる。このことをそれぞれが持ち場にもって帰ることで、さらに広げていけます。楽しい中で医療者と患者さんのためになれば、こんなにいいことはない。これからも、こういった取り組みに関わっていけたらと思っています、と挨拶で締めくくられました。

最後に、さらなる連携事例の紹介として、大分県立図書館では11月28日に、岩手県立図書館では2017年1月23日に、図書館とがん相談支援センターの連携ワークショップが企画されていること、この図書館総合展においてブース出展も行っていることが紹介され、本フォーラムは終了となりました。

会場風景

プログラム

講演内容一覧・資料