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問題の所在

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たばこの流行は公衆衛生上の最大の悲劇であるように思われる。既に世界的にみれば、10人に1人はたばこによって死亡しており、これは1年で約500万人が死亡している計算になる。西太平洋地域ではこのような死亡が20%を占めることから、この地域の加盟各国はたばこ関連の死亡では過剰な重荷を背負っていることになる。

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たばこの使用はこの地域の疾患の負担に対しても主要な原因となっている。地域内の先進国および発展途上国の双方において、たばこの消費はいくつかの慢性疾患を発症させ、また悪化させており、これは失われた全障害調整生存年数(DALY)の18%以上を占めている。この推定値には受動喫煙への曝露によって健康が損なわれた非喫煙者の健康寿命の喪失年数は含まれていない。さらに喫煙への曝露と臨床疾患の発症との間の長期のリードタイム、そして西太平洋地域における若年喫煙者集団の急速な増加は、たばこ使用を抑制するための措置が即時にとられなければ、この地域内でのたばこ使用の結果が、将来はさらに大きくなることを示唆している。

たばこ使用に起因する病気の苦しみおよび早期死亡の大部分は、特に貧困層に影響を与える。世界的には貧困層および教育を受けていない人々においては、高所得層および高等教育層よりも高い喫煙傾向が認められる。死亡率に関する信頼できるデータが存在する国々では、貧困層および教育を受けていない層の過剰死亡率の原因の多くは喫煙である。さらに低所得および中所得国に住む喫煙者が禁煙に至る頻度は低い。

マーケ画像 貧困とたばこ使用は別の面でもつながりがある。いくつかの研究によって、一部の低所得国の最貧困層の家庭では、家計支出の10%から17%がたばこに費やされていることが明らかにされている。このことは貧窮化した家庭においては、食糧、医療および教育のような必須項目に費やすべき金がさらに削られていることを意味している。貧困をさらに悪化させる上でのたばこの役割は実際には十分に解明されているわけではなく、さらに詳細な調査が必要とされる。

社会に対するたばこの経済的コストは膨大な額に上る。たばこ関連疾患を治療するための高い代償に生産性の損失が加わる。疾患の増加によって、喫煙者の労働生産性は低下する。たばこに起因する死亡は人生の生産年において発生し、国内の労働力の損失となる。

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さらにたばこの害に曝露される女性および小児の数の増加について、西太平洋地域の加盟各国の懸念が増大しつつある。既に太平洋の多くの島嶼国では、女性において噛みたばこおよび喫煙の双方を含むたばこの使用が極めて高率となっている。世界青少年たばこ調査(GYTS)の最近のデータでは、この地域の青少年における憂慮すべき高率のたばこ使用と低年齢からの喫煙開始が示されている。これとは別の問題として、特にカンボジア、中国、フィリピン、ベトナムのように男性における喫煙率が極めて高い国々では、受動喫煙に曝露される女性および小児が極めて多いということが挙げられる。

ニコチンの常習性は、禁煙に前向きなたばこ使用者についてさえもその中止を困難なものにしている。多くの西太平洋地域の各国において効果的な禁煙ガイドラインおよび禁煙プログラムが存在しないことと相まって、特に噛みたばこの問題への取り組みやニコチン中毒の薬物療法は加盟国が取り組む必要のある重大な課題となっている。





更新日:2007/05/01