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脳腫瘍(のうしゅよう)

更新日 : 2023年10月5日

公開日:2014年4月28日

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脳腫瘍について

脳腫瘍は脳の細胞や神経・脳を包む膜から発生する原発性脳腫瘍と、肺がんや乳がんなどが脳に転移する転移性脳腫瘍と大きく2つに分けられます。

原発性脳腫瘍は、さらに良性の脳腫瘍と悪性の腫瘍に分類されます。脳腫瘍には他のがんのようにTNM分類やステージ分類といったものはありませんが、そのかわり悪性度(グレード)が1から4(ローマ数字のI/II/III/IVを使うことが多い)までに分類されています。良性腫瘍のほとんどは悪性度(グレード)が1で、代表的なものとして髄膜腫(ずいまくしゅ)・下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)・神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)があります。これらの良性脳腫瘍のほとんどは手術ですべて摘出すれば再発はまれですが、わずかな残存組織から腫瘍が再発することがあります。

一方グレードが2から4のものは悪性の脳腫瘍で、手足の動きや言語などの機能を温存して手術でできるだけ摘出し、放射線治療や化学療法を行います。悪性脳腫瘍の代表的なものは、グリオーマと呼ばれる神経膠腫(しんけいこうしゅ)や中枢神経系悪性リンパ腫です。子どもに多い胚細胞腫瘍や髄芽腫(ずいがしゅ)はグレード4の悪性脳腫瘍ですが、化学療法できちんと治療することによって、治癒(寛解)することが期待できます。神経膠腫は大きく星細胞腫(アストロサイトーマ)と乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)(オリゴデンドログリオーマ)に分けられますが、星細胞種と乏突起膠腫の混在した乏突起星細胞腫(ぼうとっきせいさいぼうしゅ)も、しばしばみられます。星細胞腫や乏突起膠腫は悪性度が2で、これがさらに悪性化し、悪性度が3になったものが退形成性星細胞腫(たいけいせいせいせいさいぼうしゅ)・退形成性乏突起膠腫(たいけいせいせいぼうとっきこうしゅ)・退形成性乏突起星細胞腫(たいけいせいせいぼうとっきせいさいぼうしゅ)です。グレードが4と最も悪性な腫瘍は膠芽腫(こうがしゅ)(グリオブラストーマ)です。乏突起膠腫は星細胞腫に比べて、ややおとなしい腫瘍で、化学療法剤がよく効きます。グレード1の神経膠腫には毛様状星細胞腫(もうようじょうせいさいぼうしゅ)がありますが、多くは子どもの小脳や視神経に発生することが多いです。神経膠腫の中には主に脳室の壁の近くに発生する上衣腫(じょういしゅ)(エペンディモーマ)という腫瘍もあります。

主な原発性脳腫瘍と悪性度

主な原発性脳腫瘍と悪性度画像

日本国内での脳腫瘍の発生頻度は年間におおよそ2万人と考えられますが、脳腫瘍は組織学的におおよそ150に分類されます。

主な25の脳腫瘍の頻度
組織名 グレード 頻度 推定患者数 年齢 5年生存率
毛様細胞性星状細胞腫 I 1.4% 287 21.7 92.1
びまん性星細胞腫 II 2.8% 569 37.8 75.0
乏突起膠腫・乏突起星細胞腫 II 1.6% 314 42.2 90.0
退形成性星細胞腫 III 3.8% 764 49.3 41.1
退形成性乏突起膠腫
・退形成性乏突起星細胞腫
III 1.7% 345 48.3 68.2
膠芽腫 IV 11.1% 2217 58.8 10.1
上衣腫 II 0.6% 116 30.7 86.3
退形成性上衣腫 III 0.4% 82 25.7 58.1
神経節膠腫 I 0.4% 89 29.3 98.1
中枢性神経細胞腫 II 0.5% 97 32.0 98.4
髄芽腫 IV 0.8% 150 10.9 68.7
胚腫(germinoma) IV 1.7% 350 19.2 97.1
中枢神経系悪性リンパ腫 IV 3.5% 707 64.4 42.3
グレードI髄膜腫(注) I 22.8% 4564 58.4 97.9(注)
グレードII髄膜腫 II 1.3% 258 56.9 91.2
グレードIII髄膜腫 III 0.3% 60 56.8 86.6
神経鞘腫(注) I 10.1% 2013 51.9 98.8(注)
GH産生下垂体腺腫(注) I 3.6% 715 48.2 99.2(注)
PRL産生下垂体腺腫(注) I 3.6% 725 33.7 99.4(注)
ACTH産生下垂体腺腫(注) I 1.0% 207 46.3 97.2(注)
非機能性下垂体腺腫(注) I 10.4% 2088 54.8 98.3(注)
頭蓋咽頭腫(注) I 2.5% 493 41.5 96.5(注)
脊索腫 II 0.4% 86 46.9 89.1
血管芽腫(注) I 1.4% 278 46.6 96.3(注)
類上皮腫(注) I 0.9% 182 45.0 98.8(注)
  • 患者数の推定は脳腫瘍全国統計2001年から2004年のデータに基づく
  •  (注)は良性のグレードIの腫瘍

症状について

腫瘍が大きくなると頭蓋内の圧力が上がり、頭痛や吐き気、まひ、歩行障害、しびれ、ふらつきなどの症状がでてきます。これらの症状に気が付いたらすぐに医療機関を受診してください。

診断について

CTやMRI、PETなどでの画像診断と診察や他の検査結果をあわせて、腫瘍の種類や病期を鑑別し、診断を行います。

脳腫瘍は細かく分類すると150種類にもわたるため、最終的には手術を行わないと診断ができません。手術中に行われる病理迅速診断によって、病理診断だけでいいのか、できるだけ摘出したほうがいいのかの手術方針が変わります。したがって、手術をうける施設に術中診断を行ってくれる病理医がいるかどうかがとても大切です。

治療について

外科手術、放射線や薬物療法などを組み合わせて治療を行います。脳腫瘍の手術で最も重要なことは、腫瘍がどのようなものか病理診断を行うこと、さらにこれまで通りに話したり、考えたり、歩くことができるように、脳の機能を温存しながらできるだけ腫瘍を取り除くことです。言語の機能を守るためには、患者さんと対話しながら手術を行う覚醒下手術が行われます。神経膠腫のように脳の組織から発生する悪性脳腫瘍は、正常脳組織との境界がわかりにくいため、ナビゲーションや電気生理学的モニタリング検査、術中MRI、蛍光診断などを手術中に行いながら手術を行います。手術をうける施設を選ぶ際には、これらの特殊な技術を用いて手術を行えるかどうかを主治医に確認することも大切なポイントです。

病理診断が確定すると、それにあわせて、放射線治療や化学療法を行います。腫瘍の種類によって、薬の種類や投与期間も異なりますので、よく専門の先生と相談してください。治療を受けるときには、自分の腫瘍が病理学的に、あるいは画像検査からどういう腫瘍が疑われるのかを知っておくことが大切です。

メール相談

少しでも神経膠腫(グリオーマ)の患者さんによりよい治療や情報を提供するために、メールによる相談を行っています。メールでの相談には、責任を持って答えるために、患者さんの名前・年齢・性別・代理人名・診断名・治療経過・治療を受けている病院・医師名・質問内容を書いていただくようお願いいたします。個人情報は相談の返答以外には用いません。またこちらから治療をうけている医師に問い合わせることもありませんのでご利用ください。

Eメール:glioma●ml.res.ncc.go.jp(●を@に置き換えください)

希少がんリーフレット

脳腫瘍

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 (収録日:2018年12月14日)

啓発ポスター

20210129脳腫瘍

執筆協力者

成田 善孝
  • 成田 善孝(なりた よしたか)
  • 希少がんセンター
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 脳脊髄腫瘍科