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先端医療開発センター

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外部評価 第2回(2010年)

1. 概要

2010年7月12日に第2回評価委員会が開かれ、臨床開発センター(現・先端医療開発センター)の各部・室およびプロジェクト研究の代表者が過去1年間の研究成果の総括ならびに今後の研究方針について口頭発表を行った。

評価委員会名簿

氏名職名
澁谷 正史 上武大学 副学長
下遠野 邦忠 千葉工業大学附属総合研究所 教授
山本 一夫 東京大学大学院 教授
大西 秀樹 埼玉医科大学国際医療センター 教授
遠藤 啓吾 群馬大学大学院 教授
中釜 斉 独立行政法人国立がん研究センター研究所 副所長

2. 全体に対する評価

総評

  • 臨床開発センターのオリジナルな研究および開発が進み、このなかのいくつかについてはトランスレーショナルリサーチ(TR)に向けての成果が出ていると思われます。独立行政法人になり、産官学との連携をさらに進める研究体制の確立を望みます。

澁谷 正史

  • 全体として着実に進んでいます。臨床開発に関して特徴を出しつつありますが、国際的にはまだ不十分と考えられます。センター全体の強化、また、中央病院とどのように役割分担をするかも含めて、今後さらに検討してほしいと思います。基礎研究の重要さも十分取り入れてほしいです。

下遠野 邦忠

  • 本日拝聴したいずれの研究内容も、本センターオリジナルな研究および開発であると思います。また、一部のテーマに関してはTRに向けて成果を挙げつつあります。
  • 今後も本センターのオリジナリティーを継続されることが期待されますが、そのためには人材の確保と教育への実践を続けていくことが重要であると思われます。そのなかからどのようにしてユニークな研究環境を見出し育てゆくかが、指導体制側の腕の見せ所になるのでしょう。

山本 一夫

  • 江角先生の説明から、本センターの位置付け、ミッションなどがよくわかりました。少ないスタッフでいろいろな研究を上手く展開していると思います。成果は短期間で見えてくるものではないので、ぜひ10年、20年という長期的なスパンで継続していただき、日本のがん研究のパイオニアとして頑張ってほしいです。何らかの成果が見えれば、必ずそれに追随するところも出てくると思います。
  • 独法化のメリットは、おそらく産官学のうち、特に産との連携がしやすくなる点ではないかと思います。デメリットもあるでしょうが、産業界との連携を上手く利用して、研究を進めていけるような体制をつくっていけたら理想ではないでしょうか。

大西 秀樹

  • "さすががんセンター!"だなと思います。世界の最先端の知見を聞かせていただきました。感謝申し上げます。これだけの研究を少人数で行っているのですから、人員(常勤)を増やせばさらによい研究に着手できると思います。
  • 今後、国民の代表者の方々にも説明をする機会が増えてくると思います。わかりやすい言葉で説明していただければ、さらに周囲の方々の理解が深まり、それが研究センターに対する後押しになると思います。

遠藤 啓吾

  • 研究レベルは全体に非常に高いです。研究に従事する常勤医師が各部ともごく少数です。将来のことを考えると常勤ポストを増やし、若い医師(研究者)を養成すべきでしょう。
  • 臨床開発をミッションとするならば、PMDAとの関係を密にする必要があるでしょう。大学ではPMDAなどに詳しい人材はいないし、これからも育たないでしょう。薬・医療機器の認可の遅れは我が国の問題点のひとつです。

中釜 斉

  • 国立がん研究センター全体としても、研究センターとしても、開発研究を含めた臨床研究を推進していこうとしていると思いますが、センター全体での臨床開発センターの位置付けをどう考えるのでしょうか?
  • 全体として開発研究の方向で動いていると思いますが、一部の研究部(研究者)においては必ずしもその流れに乗り切れていないような印象を受けました。より基礎的な面も合わせてencourageするとよいのではないでしょうか。
  • 精神腫瘍学開発部の方向性と臨床開発センターにおける位置付けが今ひとつ明確に見えてこない印象がありました。部長欠員の影響もあるかと思いますが、センター全体として十分に議論を尽くされるタイミングではないかと感じました。

3. 各部署に対する評価

臨床腫瘍病理部

  • Podoplanin陽性間質細胞の存在は興味深いが、まだその意義に関する研究が十分とはいえない。PodoplaninやIGF1/2を標的とした治療に関して、正常組織に対する影響はどうなのか。治療戦略として考える際にこの点を注意深く考慮する必要があるのではないか。
  • 間質細胞の意義は重要であり、がんだけでなく重要なマーカーを見つけ、この分子的基盤を明らかにするべく着実に進んでいる印象をもった。ニッチを構成する間質細胞のがん化/増殖を及ぼす研究に進展がみられる。微小環境の血管系とも関連付けながら基礎的解析を行ってほしい。
  • 組織バンクをもっているメリットを生かして、病態の進行や悪性度などとの関連についてますます展開され、臨床応用に結び付けてほしい。組織・血清検体バンクはがん研究の基盤となるものであり、他の研究施設への提供、共同研究にまで発展させてほしい。
  • μVOISが診断・治療法の新しい武器となることを期待する。

がん治療開発部

  • 腫瘍内のフィブリン量と治療効果との関連性がわかると面白いのでは?抗フィブリン抗体をドラッグデリバリーシステム(DDS)に利用するのは期待できる。ただし、ほかの方法と比べて優位性があることをin vitro, in vivoで示す必要がある。マウスにも交差する抗体なので、マウスを用いた検討をお願いする。また、フィブリン抗体を用いたDDSの開発なども期待される。
  • ミセルの開発と抗腫瘍剤の組み合わせおよび組織特異的デリバリーは大変重要な課題なので、今後の研究に期待したい。
  • 抗体医薬、核酸医薬などで重要な問題となるドラッグデリバリーについて精力的に取り組んでいる点が評価される。DDSに高分子ミセルが有効であることがわかったが、なぜ毒性が少ないのかなどの理由がわかれば、よりよいアプローチや手法について工夫することができるように思う。ミセル製剤の臨床的応用が進んでおり、今後が期待される。今後、がんセンター独自のものを開発してほしい。

先端医療開発プロジェクト

  • GPC3のペプチドワクチンは、安価で容易、安全で、将来的には大きなニーズにつながる研究であろう。ペプチドワクチン療法単独および1種類のペプチドに限定したワクチン療法に加えて別の療法との組み合わせが重要。将来的な研究の展望として、まだペプチドのデザインに関してもいろいろと試みる余地があり、ペプチドワクチン療法について、さらに踏み込んだ研究を期待したい。
  • 血中循環がん細胞の検出法の開発、スフェロイドに対する薬剤感受性テストなど、ユニークな研究がみられるが、スフェロイドの集族性を用いた薬剤効果の判定法の有用性についてははっきりしない。幹細胞性の組織に影響を与えているのかどうかについて、他の生化学的あるいは生物学的な指導を用いた解析が必要なのではないか。
  • がんワクチンの開発で優れた臨床効果が得られつつあるが、今後の研究方針の1つであるがんの超早期診断法の開発「画像診断で見えないがんの診断」は、よく使われる言葉だが、容易ではない。

がん組織生理機能解析プロジェクト

  • がん組織に特異的な低栄養環境に注目した抗腫瘍剤の開発はユニークな視点の研究であり、アルクチゲニンの効果など見るべき成果が出ている。アルクチゲニンの作用の詳細、また、血管抗生阻害剤との併用の可能性を是非検討してほしい。
  • 先端医療としての薬剤感受性予測にかかわる遺伝子特異検索は、将来的に1つのスタンダードになる重要なテーマであろう。十分に考察されているようだが、アリル変異をどう評価するのか、active formとinactive formをgeneの配列からどのように予測していくのかなど、システマティックに検証していけるようなプロジェクトができるとよいと思われる。
  • 栄養、運動とがん予防、治療との関連は国民の関心も高い。データは出にくいだろうが、科学的エビデンスが待たれている。運動とサイトカイン(IL-6)との関係について現象を超えたエビデンス(分子メカニズム)が見出されるとさらに面白い。IL-6とSNARKシグナルの関連性が不明。
  • SNARK欠損マウスにおけるエネルギー代謝制御の異常と発がんとの関連性についての分子メカニズムがはっきりしない。SNARK欠損の発がんへの関与を示した点について、現象としては面白いが、今後の展開をより明確にするべき。

機能診断開発部

  • 欧米では動物イメージングの研究が活発に行われている。小動物を用いた核医学研究は本センターで可能な研究なので、しっかりとしてデータをとって治療に向けた情報を収集してほしい。特に9.4TのMRIは我が国で唯一のものとのことなので今後の研究が待たれる。
  • 非侵襲性の画像診断は重要なテーマであろう。最先端の設備が整い、これからデータも蓄積されるものと思われるが、ぜひプローブの開発も行ったらよいと思う。低酸素部位可視化マーカーの開発にさらに力を入れてほしい。治療によりマーカーの局在などがどう変化するか、マーカーがどのような利用価値があるかを十分検討してほしい。
  • 腫瘍内および腫瘍特異的環境の可視化という今後の展開が大いに期待される領域に精力的に取り組んでいる。臨床面での応用と画像診断がどのように結び付いていくのか、今後の研究の進行が待たれる。

精神腫瘍学開発分野

  • 患者および家族からのフィードバックを十分取り入れて、改善と全国への展開を図ってほしい。医師だけでなく、看護師などへの教育が最も効果的と思われる。一方、患者さんおよび家族への具体的なメリットをどのように評価し、次のステップに生かしていくのかがもう少し明確に見えてくるとよいと思われる。
  • 日本で唯一の精神腫瘍学ということであり、成果が他の機関に速やかに浸透し、国内での研究体制が充実していくよう期待する。精神腫瘍学という新しい領域を立ち上げている状況も理解できた。少人数で苦労も多いと思うが、経験したことを効率よく普及させ、全国的な普及にも努めている。フィードバックさせてほしい。

粒子線医学開発部

  • 着実に進展している。共同研究の充実などにより、成果を外の医療機関へ十分アピールしてほしい。陽子線照射装置を用いたより良質な医療提供に向けて研究が進められている。陽子線治療に関して8~9年間で600例強の実施例というのは若干パワー不足のように思われるが、人材・人員は十分なのか?
  • 放射線量の線量評価、照射法の開発、位置確認技術の重要性は理解できるが、何が臨床で大きな問題になっていて、そのためにどのような開発が必要なのか、説明をしてもらうとわかりやすいと思う。手腕、技術は素晴らしい。今後はこの技術によって治療成績が大幅に向上するかどうかの検証が必要だと思われる。

臨床試験支援室

  • 治験の支援体制は、独法化に伴いますます重要になっていると思う。治験に対する体制の確立を目指しており、併せて早期開発試験実施体制に向けて努力している。体制が出来上がるまでにある程度の試行錯誤が必要になると思うが、早急に体制が出来上がることを期待する。企業との連携、知財の確保を含めて、総合的に研究を進めてほしい。
  • 未承認薬の治験など、ぜひ進めてほしいニーズが山積みしているように思うので、外部の産官学を巻き込んでますます頑張ってほしい。臨床試験は今後も増えることだろう。ただ、臨床開発コンサルティング機能はPMDAとの関係など、難しい面もあるだろう。