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現在、世界には推定13億人の喫煙者がいます。たばこ消費による死亡者数は年間490万人;もし現在の消費傾向が続けば2020年には1000万人にまで増加し、その70%は発展途上国での増加であろうと予想されます。このような事態を防ぐためには今行動を起こさなければなりません。政府や法律制定者には果たすべき役割がありますが、役割を担っているのは彼等だけではありません。社会全体がこのたばことの戦いに参画する必要があるのです。社会の中でも、ある特定の領域における専門性のゆえに、特別の役割を担ってる専門家集団がいます。その領域とは健康です。
たばこ消費は、世界中の予防可能な死亡の主要原因であり続けています。たばこ消費が健康に与える悪影響についての研究と発見は続いており、悪影響の被害を受けている人数も増加しています。それに伴い、たばこ消費に起因する疾病数は増加しています。現在では白内障、肺炎、急性骨髄性白血病、腹部大動脈瘤、胃がん、膵臓がん、子宮頸がん、腎臓がん、歯周炎等もその数に含まれています。従来、喫煙と関係が深いと考えられてきた疾患はvesicle、肺、食道、喉頭、口腔および咽喉頭のがん等ですが、それらに慢性の肺や心臓血管の疾患及び生殖器官に悪影響を及ぼすものが加わったという事になります。しかしながら、こういった悪影響の危険にさらされているのは喫煙者だけではありません。世界中の子供たちの半数を含む何百万人もの人々が環境たばこ煙曝露され,それはいわゆる受動喫煙、として知られています。受動喫煙は、成人では心循環器疾患、肺がん、その他呼吸器系疾患、子供では呼吸器系疾患、耳感染、乳幼児突然死症候群等のリスク増加との関連性について確証が示されていますが、これらは受動喫煙が引き起こす悪影響の幾つかの例に過ぎません。受動喫煙に対しては社会の積極的な取り組みが必要な健康問題である。たばこ消費による疾病に加えて受動喫煙による疾病、そして「国際疾病分類ICD-10」に記載されている通り、たばこ依存症自体も疾病の一つなのです。往々にして再発性が高い慢性病として、ニコチン中毒は適切な治療が必要です。
今日では多くの危険性が発見されているにもかかわらず、たばこ消費量は世界的に増加し続けています。この流行は特に発展途上国において、現在でも拡大しています。これらの国ではたばこに対する規制が弱く、多くの新規顧客を特に女性の中から開拓できる可能性があるとして、たばこ産業はこれらの国々を巨大な潜在的市場として捉えています。
たばこと性別
近年、たばこ流行は世界的に女性の間で拡大しました。最近の「世界青少年たばこ調査(Global Youth Tobacco Survey)」よると、少女のたばこ消費が全世界で大幅に増加しており、多くの場合、その喫煙者割合は少年のそれと同程度、あるいは上回っている、というデータがあります。
発展途上国では出産時の健康状態の改善、また乳児・妊産婦死亡率の減少に多大な努力を要していますが、喫煙する妊産婦の増加により、その活動目標に対して新たな課題を抱えることになりました。喫煙する母親から生まれた赤ちゃんは喫煙しない母親から生まれた赤ちゃんに比べ、平均200グラム(8オンス)分体重が軽いのです。更に、妊娠中の母親が吸うたばこの数が多いほど、赤ちゃんの出生時体重が軽くなる傾向があります。低出生体重は乳児死亡の主な原因です;出生時に十分な体重でない赤ちゃんは、特に低所得国で死亡リスクが高いのです。さらに、母乳の分泌が不十分になる事、また新生児のその他の健康リスクが増加するなど、喫煙がもたらす悪影響について調査結果は示しています。
喫煙する女性が子宮頸がんを患うリスクは、喫煙しない女性と比較すると最大4倍にまで増加し、またそのリスクは喫煙の継続期間に比例して高くなるという結果を示した研究もあります。たばこと健康について記載した最新の米国公衆衛生総監報告では、喫煙は子宮頸がんの要因であると結論付けています(VI)。
子宮頸がんは世界中の女性にとって死亡率の高いがんであり、年間50万件以上が新たに診断されています。たばこ規制活動や禁煙により、先進国および発展途上国における女性の健康及び母子保健の向上に貢献できるかも知れません。
たばこと感染症
喫煙と結核についてその感染、疾病及び死亡率との関連性について示す証拠が増加しています。例えばインドで実施された研究では、インドの男性結核死亡者の半数が喫煙による死亡であり、結核菌(TB)に感染していた喫煙者のうち4分の3はもしもたばこを吸っていなかったら感染を免れたであろう、と示しています。この関連性についての正確な生理学的メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、もしかするとたばこの煙による肺の粘膜の損傷、そして喫煙者の体重の減少と栄養不良といった原因により、感染しやすい環境が作られるというメカニズムなのかも知れません。後者は特に最も貧しい地域の人々にとって、特に女性にとって重要な要因でしょう。
一部の発展途上国における結核の発生率は高く、最近ではHIV感染とエイズの流行によりさらに悪化しています。こういった国々でたばこが流行する事は、結核感染を著しく増加させ、結核による大量死を引き起こす可能性があります。
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