11-17 がん細胞の分化誘導機構を基盤とする新しいがん治療法の開発に関する研究
 
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11-17 がん細胞の分化誘導機構を基盤とする新しいがん治療法の開発に関する研究

主任研究者 国立がんセンター研究所 齋藤 政樹


研究者氏名、所属および分担研究課題
研究者氏名
所属施設 地位
分担研究課題名
齋藤 政樹
国立がんセンター 部長
分化誘導に関与する標的分子の発現制御を介する癌分化誘導療法の開発
大西 一功
浜松医科大学 講師
レチノイドならびに砒素による分化誘導療法の開発
佐藤 光信
徳島大学歯学部 教授
頭頸部癌の分化誘導療法の開発
本間 良夫
埼玉県立がんセンター 部長
分化誘導物質による肺癌細胞の増殖抑制機構の解明とその治療への応用
橋本 祐一
東京大学分子細胞生物学研究所 教授
細胞の分化を誘導・制御する化合物の開発
本間 好
福島県立医科大学医学部 教授
グリオーマ細胞の分化誘導に関する研究
山口 壹範* (班友)
宮城県立がんセンター 研究員
がん細胞におけるシアリダーゼ遺伝子発現上昇機構の解析とその発現制御の試み
*:平成12年度


平成12年度研究報告 研究成果の要旨

研究成果を要約すると、1)ATRA治療後のAPL再発症例で、新レチノイド・タミバロテンにより46.2%、亜砒酸療法(アポトーシス誘導)で62.5%の完全寛解が得られたが、後者で3例に重篤な心室性頻拍が生じた。2)レチノイン酸耐性APL細胞株UF-1を樹立、さらにAPLモデルマウスの作製に成功し、GM-CSFとヒ素製剤の併用でヒ素投与量を減量、より安全に投与できる可能性が示された。3)ヒト口腔扁平上皮癌或いは唾液腺癌に対して、放射線治療、5-fluorouracil及びリポタイコ酸関連分子(OK-PSA)の同時併用療法が非常に有効であった。4)既存レチノイドとは物性的に全く異なる合成レチノイド及びそのアンタゴニスト、またフタルイミドを基本に新規アンドロゲンアンタゴニストや各種酵素阻害剤、等の創製に成功した。5)肺癌及び悪性リンパ腫細胞に対する酪酸誘導体(AN9)とAdriamycinの併用で相乗的効果を見出した。6)蛋白質修飾酵素ペプチジルアルギニンディミナーゼPAD Vは顆粒球/マクロファージ系分化と強く連携、また、皮膚の角化、脳の脱髄症、リウマチ関節炎患者の自己抗体形成と関連付けられている。7)各種ヒトがん組織で形質膜シアリダーゼ(hmSD)活性及びmRNAレベルが上昇していた。大腸がん細胞をブチル酸で分化・アポトーシス誘導すると、これらが低下した。TCFファミリー結合配列がhmSD遺伝子の発現制御に関与している可能性が示された。8)ヒト白血病細胞を分化誘導するシアロ糖脂質ガングリオシドGM3は細胞膜中で超分子集合体(マイクロドメイン)を形成、さらに小粒子として放出される現象を走査電顕画像で捉えることに成功した。


平成11年度〜12年度総合研究報告 研究成果の要旨

細胞の接着・識別、分化誘導などに関与する分子を標的として、殺細胞効果によらない新しい悪性腫瘍治療法の開発を目指し、以下の研究成果を得た:1)ATRA治療後APL再発症例で、新レチノイド・タミバロテンにより46.2%、亜砒酸療法で62.5%の完全寛解が得られたが、後者では重篤な心室性頻拍が少数例見られた。2)ATRA耐性APL細胞株UF-1を樹立、APLモデルマウスの作製に成功、GM-CSFとヒ素製剤の併用でヒ素投与量を減量、より安全に投与できる可能性が示された。3)ヒト口腔扁平上皮癌、唾液腺癌、肺癌、グリオブラストーマ、悪性リンパ腫など固形癌細胞に対して、既知の非抗癌薬剤、抗癌剤、放射線治療の同時併用療法が癌分化療法として非常に有効であることが判明し、この基盤機構を分子レベルで解析した。4)既存レチノイドとは物性的に異なる新規合成レチノイド、そのアンタゴニスト、フタルイミドを基本にした新規アンドロゲンアンタゴニストや各種酵素阻害剤などの創製に成功し、標的分子を生物応答調節因子や癌増悪因子に拡張した(血管新生阻害剤・細胞浸潤阻害剤)。5)制癌作用を持つ糖鎖複合体の合成・分解酵素、蛋白質修飾酵素等について、癌分化療法を担う標的分子として、遺伝子レベルの解析を進め、癌分化能をもつガングリオシドGM3が細胞膜中で超分子集合体(マイクロドメイン)を形成、小粒子として外界へ放出される現象を初めて画像で捉えることに成功した。

本ページは、研究成果の要旨のみを掲載しております。
詳しい研究報告をご覧になりたい方は、「厚生労働省がん研究助成金による研究報告集 平成12年度」を全国の医学部・医科大学図書館に配布しておりますので、そちらをご利用下さい。



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更新日:2004/12/01