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国立がん研究センター

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平成28年度トピックス

医療の提供に関する事項

医療政策の⼀環として、センターで実施すべき⾼度かつ専⾨的な医療、標準化に資する医療の提供

⾼度・専⾨的な医療の提供

東病院、厚生労働大臣より特定機能病院の承認を取得 -要件見直し後、初の承認病院に-

平成29年3月、東病院が厚生労働省より特定機能病院として承認を受けた。

特定機能病院は、医療や医療技術の開発及び研修を実施する高度な能力を備えた病院として、平成5年の第二次医療法改正において制度化されたもので、今回の承認は、平成28年6月の医療法施行規則改正による承認要件見直し後、初の承認となる。

  • 参考 特定機能病院数(平成29年4月1日現在)
    85病院(うち大学病院以外は7病院) 注:中央病院は平成5年9月に承認済
東病院に次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT棟)竣工
NEXT棟外観

平成29年3月、次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT棟)が竣工し、平成29年5月から診療を開始した。多くの患者に最適な治療の機会と質の高い治療を提供するため、手術・内視鏡室を大幅に拡充し、医療機器開発センターや遺伝子検査室などの研究部門を設置した。また、世界有数の外科・内視鏡技術と最先端の科学技術のマッチングを通じ、日本
発の革新的医療機器の創出を目指すこととしている。

8Kスーパーハイビジョン技術を医療応用するプロジェクト -腹腔鏡手術システムでの実用化目指し始動-

中央病院は、8Kスーパーハイビジョン技術(8K技術)を用いた新しい腹腔鏡手術システムの開発と高精細映像データの活用を検討する研究を開始した。

8Kスーパーハイビジョン技術を医療応用するプロジェクト

これにより、日本発の医療機器等の振興を図り、あわせて、高精細映像データの診断等への利活用に向けた課題の検討・検証を推進する。

本研究は、日本発の次世代放送技術である8K技術を医療機器に応用する初の試み。その実用化により、がん手術をより精密かつ繊細に行えるようになり、腹腔鏡手術をはじめとする内視鏡手術の安全性と根治性を向上させることが期待される。

希少がん及び難治がんを含めた各種がんの標準的治療の提供

明細胞肉腫と胞巣状軟部肉腫の医師主導治験を開始 -企業主導開発が困難な超希少がんの臨床試験計画や新薬開発手法の確立を目指す-

代表的な希少がんである肉腫の中でもさらに発症頻度の極めて少ない明細胞(めいさいぼう)肉腫と胞巣状軟部(ほうそうじょうなんぶ)肉腫を対象に、ニボルマブの医師主導治験を開始した。当センターを含む全国4施設で実施する。

本試験を、希少がんの中でも極めて少ない超希少ながん腫で成功させることにより、超希少がんの臨床試験計画や新薬開発手法のモデルになると期待されている。 

また、良好な結果が得られた場合、その結果をもって企業による明細胞肉腫と胞巣状軟部肉腫に対する世界初の承認申請を目指す。

希少がんの臨床試験推進のためのMASTER KEY プロジェクト

中央病院では、希少がんセンター・臨床研究支援部門と協力し、希少がん・原発不明がんについて、次世代シークエンサー等により解析された遺伝子プロファイル(TOP-GEARの成果)を網羅的に登録するとともに、これに基づき、医師主導治験・企業治験を積極的に進めるアンブレラ型レジストリ研究を立案した(MASTER KEY プロジェクト)。

MASTER KEY プロジェクト

共同研究として平成29年3月末までに製薬会社11社と契約を締結した。

今後、参加研究機関を増やすとともに、がんを限定せずに特定の遺伝子異常に着目し、希少がん治療法の開発を進める。

希少がんを知り、学び、集う「希少がんMeet the Expert」を開催

平成29年1月から、中央病院希少がんセンターで、患者や家族、希少がんについて学びたい方を対象に、新しい形で情報を提供するため、希少がんセミナー「希少がん Meet the Expert」を開始した。原則毎月第2金曜日の夜、希少がんセンターで開催され、専門知識を持ち合わせた医師が講師となり、各種希少がんの正しい情報を提供した。

来場できない方のため、ディスカッションの動画をホームページで公開している。

開催日テーマ講師所属
平成29年1月13日 悪性黒色腫(メラノーマ) 山崎 直也 皮膚腫瘍科、希少がんセンター
平成29年2月10日 GIST(消化管間質腫瘍) 西田 俊朗 中央病院 病院長
平成29年3月10日 肉腫(サルコーマ)~総論~ 川井 章 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科 希少がんセンター長
  • 参考 希少がんセンター
    希少がんセンターは、年間発生数が人口10万人あたり6例未満の希少ながんについて、最新、最良の希少がん診療を実践すること、最先端の希少がん研究を推進すること、さらに実際の診療・研究活動を通して、わが国における希少がん医療の課題を明らかにし、解決してゆくことを目的として、平成26年6月に発足した。

希少がんセンター

希少がんに関する相談が大きく増加

希少がんホットラインの新規相談者数は5,416名(平成26年度 1,200名、平成27年度 3,006名)であった。(前年度比+80.2%)

相談者の内訳は、患者本人 50%、家族 29%、医療者 21%。患者の病名は、肉腫が最も多く30%を占め、次いで悪性黒色腫(メラノーマ)、原発不明がん、悪性リンパ腫、GIST(消化管間質腫瘍)、神経内分泌腫瘍、脳腫瘍、眼腫瘍、悪性中皮腫、胸腺腫・胸腺がん、胚細胞腫瘍と続き、計190種類に上った。

相談者のうち当センターを受診した割合は68%(初診 45%、セカンドオピニオン 23%)であった。

希少がん対策ワーキンググループを運営

平成27年8月の厚生労働省「希少がん医療・支援のあり方に関する検討会報告書」に基づき、「希少がん対策ワーキンググループ(WG)」が設置された。WGは関連学会、研究者、患者団体等の希少がん対策関係者で構成され、当センターが事務局となり、平成28年度は四肢軟部肉腫分科会を3回、眼腫瘍分科会を2回開催し、情報公開、診療体制の在り方等を検討した。

患者の視点に⽴った良質かつ安⼼な医療の提供

適切な治療選択の支援及び患者参加型医療の推進

中央病院に「患者サポート研究開発センター」開設

がん患者さんのサポートと生活の工夫展

平成28年9月より、中央病院に患者サポート研究開発センターを開設し、運用を開始した。

患者サポート研究開発センターでは、患者の視点に立ってQOLを重視したチーム医療を実践するため、病院内にありながら従来の病院とは異なる空間を用意し、医師だけではなく看護師、臨床心理士、薬剤師、管理栄養士など多職種による多彩な支援プログラムや患者教室を、一人ひとりの状況に即して提供する。

また、国立がん研究センターの役割として、QOLを重要な指標とした新たながん診療体制を構築するため、各種の支援を開発し、その効果を科学的に評価し、標準的な支援の実用化を目指していく。

平成29年3月には、「がん患者さんのサポートと生活の工夫展」を開催し、中央病院の患者向けに提供している支援プログラムや患者教室を広く一般公開した。

常設プログラムと患者教室

エビデンスに基づいた医療者向け指針「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」を作成
がん患者に対するアピアランスケアの手引き

がん患者に対するアピアランスケアの医療者向け手引き書「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」を作成した。アピアランスケアに関する様々な情報をエビデンスに基づき整理しており、同書で示す指針や提言に基づいたアピアランスケアが医療者を通じ提供され一定の水準が担保されることが期待される。

がんの生存率が改善し、仕事を持ちながら通院している患者が32.5万人(厚生労働省特別集計)とも言われているなか、治療に伴う外見の変化に対する意識が強まり、医療現場でのサポートの重要性も認識されている。しかし、具体的なアピアランスケアの方法については、根拠のない情報等が流れており、それに戸惑う患者や医療関係者から多くの質問が当センターに寄せられている。

  • 参考 アピアランスケアとは
    アピアランス(Appearance)は、広く「外見」を示す言葉。がん患者のアピアランスケアは、患者の外見問題の解決を学際的・横断的に扱う新たな領域とし、そのための個々の支援方法を「アピアランス支援:外見に関する諸問題に対する医学的・技術的・心理社会的支援」としている。
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