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国立がん研究センター

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平成29年度トピックス

医療の提供に関する事項

  1. 医療政策の一環として、センターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供
    がんへの中核的医療機関として、国内外の研究施設、医療機関等の知見を集約しつつ、研究部門と密接な連携を図り、その研究成果を活用し、先進医療を含む高度・専門的な医療を提供。また、医療の質の評価を実施し、情報発信する。
  2. 患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供
    質が高く安全な医療を提供するため、医療従事者が専門性を発揮しつつ、業務分担と相互連携により、多職種連携・診療科横断によるチーム医療を推進。医療事故防止、感染管理等、医療安全管理体制を強化。患者との信頼関係を構築し、患者・家族の選択・決定を支援するとともに、がん診断時から緩和ケアを提供。

注:重要度「高」…がんへの中核的医療機関として、研究開発成果の活用を前提として、高度化・複雑化に対応した医療の実施が、我が国医療レベル向上につながる。

医療政策の⼀環として、センターで実施すべき⾼度かつ専⾨的な医療、標準化に資する医療の提供

概況

豊富ながん診療と臨床研究基盤に基づき、全国の診療水準向上に資するエビデンスを創出していく。このため、両病院が臨床研究中核病院として主導的に治験・先進医療を実施し、ゲノム医療等最先端研究を臨床へ導入する医療実装を主導。また、希少・難治性がんを中心に、エビデンス創出、全国的な診療体制構築に努めている。

  1. 東病院が、新要件下で初の特定機能病院として承認
    医療安全の厳格化など承認要件が改正された「特定機能病院」を、東病院が全国で初めて平成29年3月に取得した。旧要件下で取得している中央病院(平成5年度)とあわせ、全国で唯一、同一法人内複数病院の取得となった。
    中央病院、東病院とも、すでに取得している「臨床研究中核病院」とあわせ、国内トップレベルの診療、研究等の機能を実現していく。
  2. 中央病院・東病院が、がんゲノム医療中核拠点病院に指定。NCCオンコパネルの先進医療Bを開始
    厚生労働省が新たに進める「がんゲノム医療中核拠点病院」(全国11医療機関)として、中央・東病院が30年3月に指定された。がんゲノム医療連携病院(中央病院9、東病院6)と協力しながら、がんゲノム医療の適切な提供に努めていく。
    30年4月からは、NCCオンコパネルを活用した先進医療を実施し、保険適用を目指す。
  3. 中央病院がJCHO(独立行政法人地域医療機能推進機構)と包括協定。がんの高度急性期専門機能へ特化を目指す
    全国から集まった患者が、中央病院での治療を終了した後、高度急性期から慢性期まで幅広い疾患に対応できるよう、平成30年2月、JCHOと医療・教育研究等の連携・交流に関する包括協定を締結。在宅医療やリハビリなど必要な治療を提供し、地元で安心して療養できる体制の構築を目指す。

低侵襲治療の開発・提供

より効果的で安全ながん医療に向けて、患者さんの負担が少ない低侵襲治療の開発・提供をリードしている。

内視鏡治療、IVR治療、放射線治療等の状況

図1

  1. 我が国のIVR(画像下治療)をリード

    中央病院に、平成26年度、IVR(画像診断装置で身体の中を透かして見ながら、身体を大きく切開せずに身体内に挿入した器具で行う治療)センターを開設。最先端の画像診断機器・治療機器を備え、画像下低侵襲治療に精通する医師と診療放射線技師、看護師が各診療科と連携し、患者一人一人に最適な方法を検討し、身体への負担が少ない安全な治療を行っている。
    米MSKCC、MD-AndersonCC、仏IGRなどとならび、がん専門病院としては世界最高レベルの質・量として、29年度、IVRを5,854件(前年度5,719件)実施した。
    また、IVRの臨床研究グループであるJIVROSG(日本腫瘍IVR研究グループ)を統括して多施設共同臨床試験を行っており、平成29年度までに24試験が終了、2件が保険承認されている。

  2. 高性能・低侵襲の内視鏡手術・診断を開発

    • 8K内視鏡手術
      NHKエンジニアリングシステム、オリンパス、NTTデータ経営研究所と共同し、AMEDの支援により開発した8Kスーパーハイビジョン技術を用いた腹腔鏡手術システムを用いて、大腸がん患者を対象とする臨床試験を開始した。安全性及び有用性を確認した後、先進医療での実施を目指す。
      本プロジェクトは、8K技術を用いた新腹腔鏡手術システムの開発と実用化・普及を目指し、平成28年度より開始。29年度は、試作品が完成し、動物実験や医療機器安全性検査等を通して性能を検証。その結果、腹腔鏡と8Kカメラ全体として解像度や色再現性、実物感など8K映像の性能を十分発揮できること、医療機器としての安全性を一定レベルで確保できることを確認。
      8K技術の医療応用におけるヒトを対象とした臨床試験は世界初。29年度は2例、30年度は20数例に増やし検証を進める。

      試作した8K硬性内視鏡手術システム

      図2

      臨床研究の進捗状況、今後の予定

      図3

    • AI大腸内視鏡診断(P5再掲)

      大腸がん及び前がん病変(大腸腫瘍性ポリープ)の内視鏡画像約5000例を教師データとして深層学習技術を用いた解析を行い、大腸内視鏡検査時にリアルタイムに病変を発見するシステムの開発に成功した。

    • 世界初の酸素飽和度可視化可能な機能性内視鏡の開発承認(P6再掲)

      従来なかった内視鏡でのがんの機能診断の臨床応用に取り組み、消化管粘膜表面の酸素飽和度を侵襲なく測定する画像技術(酸素飽和イメージング)を開発し、内視鏡の診断補助機能として初の薬事承認を平成29年7月に取得した。

  3. 東病院で次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT)稼働
    図4

    左:手術支援ロボット 右:内視鏡画像におけるAIによる手術器具の画像認識

    平成29年5月、次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT)で診療を開始した。
    多くの患者に最適な治療機会と質の高い治療を提供するため、手術・内視鏡室を大幅に拡充し、医療機器開発センターや遺伝子検査室などの研究部門を設置。また、世界有数の外科・内視鏡技術と最先端の科学技術のマッチングを通じ、日本発の革新的医療機器の創出を目指す。
    医療機器開発企業8社及び2大学が入居し、医療現場のスタッフとともに常駐し、現場のニーズに応える新たな外科手術、内視鏡機器の共同開発を開始。新たなロボット手術機器を開発し、ベンチャーキャピタルからの資金を得て承認申請準備に入るとともに、人工知能を用いた新たな手術支援ロボット開発に着手した。(P13再掲)

希少がん・難治がんの診療、治療開発

  1. 希少がん中央機関へ
    中央病院の希少がんセンターは、「年間発生数が人口10万人あたり6例未満」の希少ながんについて、最新・最良の希少がん診療を実践すること、最先端の希少がん研究を推進すること、わが国希少がん医療の課題を明らかにし解決していくことを目的として、平成26年6月に発足。
    厚生労働省「第3期がん対策推進基本計画」(平成30年3月)に基づき、「希少がん対策ワーキンググループ」の議論を踏まえ、全国での中核的な役割を担う機関として希少がん中央機関に決定された。
  2. 希少がんに関する相談が大きく増加
    希少がんホットラインの新規相談者数は7,461名と大きく増加(平成26年度 1,200名、27年度 3,006名、28年度 5,416名)(前年度比 +37.8%)
    相談者の内訳は、患者本人 50%、家族 29%、医療者 21%。患者の病名は、肉腫が最も多く30%を占め、次いで悪性黒色腫(メラノーマ)、原発不明がん、悪性リンパ腫、GIST(消化管間質腫瘍)、神経内分泌腫瘍、脳腫瘍、眼腫瘍、悪性中皮腫、胸腺腫・胸腺がん、胚細胞腫瘍と続き、計190種類に上った。
    相談者のうち当センターを受診した割合は66%(初診66%、セカンドオピニオン 40%)であった。

    図5

    図6

    専門家による希少がんセミナー
    (平成29年度:15回開催(30年1月から2回/月))
    【場所】希少がんセンター待合
    【対象】患者さん・ご家族・その他
    【募集人数】30名から40名
    【形式】講義およびディスカッション
    注:参加できない全国の患者さんにセミナーの模様をWeb動画配信

  3. 希少がんの研究開発・ゲノム医療を推進する産学共同「MASTER KEYプロジェクト」を開始
    「MASTER KEYプロジェクト(Marker Assisted Selective ThErapy in Rare cancers: Knowledge database Establishing registrY Project) 」は、希少がんにおけるゲノム医療推進を目指し、製薬企業と共同で取り組む世界初の試み。希少がんの患者に、より早くより多くの新薬を届けることを目指す。
    大きく二つの取組から構成。一つは、患者の遺伝子情報や診療情報、予後データなど大規模データベースを構築するレジストリ研究。データを参加企業にも共有し、バイオマーカー探索や薬剤開発に役立てる。平成29年5月開始。
    もう一つは、バスケット型デザインと呼ばれる新しい手法の臨床試験。がん種を限定せず特定のバイオマーカー(遺伝子異常・蛋白発現等)を有する患者集団に対し、そのバイオマーカーに適した薬剤を用いるもので、医師主導治験または企業治験として実施。11社の製薬企業から治験薬と共同研究費を提供。

    図7
  4. 小児がん医師主導治験 国内の小児がんに対する薬剤開発を牽引<評価書P55>
    小児がんは、個々のがんが極めて希少な疾患であり、患者数が少ないなどの理由から、製薬企業による新薬の臨床試験(治験)がほとんど進まないことが課題とされている。
    平成29年度は、新たに2件の小児がんを対象に医師主導治験を開始。実施中の治験は、医師主導治験4件、企業治験2件の計6件。
  5. 軟部肉腫専門施設のリストを公表<評価書P74>
    厚生労働省委託事業による希少がん対策ワーキンググループの検討結果に基づき、希少がんの一種である四肢軟部肉腫の専門的な治療が可能な53施設の診療体制などの情報を「がん情報サービス」に公表(29年12月)。さらに眼腫瘍について、掲載する情報や基準を策定し、収集。

患者の視点に⽴った良質かつ安⼼な医療の提供

総合的な患者支援

  1. サポーティブケアセンター(東病院)、患者サポート研究開発センター(中央病院)を中心とする総合的支援
    東病院では、多職種チームにより、身体・心・くらしの多面的な問題に対し、柏市医師会等地域・社会と協働して総合的に支援を実施している。平成29年度は、新たに千葉県と共同でハローワーク支援員による就労支援の強化、看護師によるオリエンテーションプログラムの開発・導入等を行った。臨床で解決困難な問題への研究・開発・普及活動にも積極的に取り組んでいる。
    中央病院では、「従来型医療では満たされない、患者のニーズにお応えするために」をコンセプトとし、平成28年9月、従来の病院とは異なる空間を用意し、医師だけではなく看護師、臨床心理士、薬剤師、管理栄養士など多職種による多彩な支援プログラムや患者教室を、一人ひとりの状況に即して提供することを開始。平成29年度は周術期外来を大幅に拡大。
  2. アピアランスケアの支援
    がん患者の外見に関する研究と教育、臨床を通じ、「がん患者が社会に生きる」ことを支援するため、平成25年7月、中央病院に「アピアランス支援センター」を設置。アピアランスケアを確立し、全国のがん診療連携拠点病院医療者を対象に研修会を開催し、医療者向け手引き作成など先駆的役割を果たしてきた。
    平成30年3月「第3期がん対策推進基本計画」では、がん患者の更なるQOL向上を目指し、医療従事者を対象としたアピアランス支援研修の開催や、生殖機能の温存等について的確な時期に治療の選択ができるよう、関係学会等と連携した相談支援及び情報提供のあり方を検討すると記載された。

    • 図8

      募集開始から10分で満席になるほど人気の医療者研修会!患者支援の全国ネットワークを作る。

  3. 患者・地域に開かれた病院を目指して
    図9

     

    両病院において、左記の他、市民公開講座、オープンキャンパス、患者教室、料理教室など、患者・地域に開かれた病院を目指してセミナーやイベントを開催。

    平成29年度

    • センター全体 
      患者・家族との意見交換会
    • 中央病院 
      患者のサポートと生活の工夫展
      膵がん・胆道がん教室
      乳がん術後ボディイメージ教室 等
    • 東病院  
      口腔ケア教室
      なんでも相談 等
  4. 全国での支持療法開発ネットワーク(J-SUPPORT )
    図10

    J-SUPPORT(日本がん支持療法研究グループ、平成27年度設置)の事務局機能を担っている。平成29年度は、臨床試験7件、観察研究2件、計9件の臨床研究を進めた。化学療法による吐き気対策など、未解決、未確立の支持療法の課題に挑戦している。

    注:J-SUPPORTは、がん支持療法、緩和ケア、心のケアに関する多施設共同研究をオールジャパン体制で支援する臨床研究グループ

  5. がん治療と就労の両立支援<評価書P61>
    働く世代が生き生きと働き安心して暮らせる社会づくりに向けて、治療と就労の両立支援として、企業、患者・家族、医療者向けガイドラインの作成や啓発等を行っている。平成29年度、第3期がん対策推進基本計画に就労支援方策が多く記載され、30年度診療報酬改定で「療養・就労両立支援指導料」が実現。
    また、29年度、中央病院が伊藤忠商事等と連携し、働く世代の検診・早期発見に協力。

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