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国立がん研究センター

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平成29年度トピックス

医療政策の推進等に関する事項

研究開発分野を中心に、国民の視点に立ち、科学的知見を踏まえ国への専門的提言を行う。

全国がん登録データベースの運用と院内がん登録情報の収集を、確実に実施。国のがん対策の企画立案・実施に必要なデータを整理し、均てん化等を促進。がんの知見を収集・評価し、科学的根拠に基づく予防・診断・治療法等について、国民・医療機関向け情報提供を充実。がん診療連携拠点病院等の診療を支援。

国への政策提言に関する事項

国への政策提言 <評価書P79>

センター職員が、国の審議会や検討会等に委員やオブザーバーとして参加し、政策作りや運用に大きく貢献した。

  • 参加している審議会、検討会等の数 65件(前年度42件、+54.8パーセント)
  • 委員や構成員になった職員数(延べ数) 83人(前年度68人、 +22.1パーセント)
参加した主な審議会等
厚生労働省
  • がん対策推進協議会議
    「第3期がん対策推進基本計画」策定
  • がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会
    がんゲノム医療体制を構築
  • がん診療連携拠点病院の指定要件に関するWG
    がん診療連携拠点病院等の指定要件見直し など
内閣官房
  • 健康・医療戦略参与会合、ゲノム医療実現推進協議会 など
NCC開催
  • 希少がん対策WG など

医療の均てん化

1.都道府県のがん対策を支援
  • 都道府県担当者を対象にがん対策に関する研修を開催し、全国から延べ78名が参加した。各都道府県が自らがん対策のPDCAを実施できるよう、実際に即した内容としている。
  • がん検診の実施状況・精度管理の状況、プロセス指標などを都道府県別に調査し、「全国がん検診実施状況データブック」として公表した。これにより、各都道府県から市町村に対し、適切ながん検診実施管理を支援し、適切な精度管理の下での科学的根拠に基づくがん検診の推進を目指す。
2.がん診療連携拠点病院等への支援を強化
  • 全国の都道府県がん診療連携拠点病院から参加を得てフォーラムを開催し、都道府県レベルでがん診療の質を向上させるためのPDCAサイクルのモデルを提示するとともに、先進的な取組を共有した。その内容をホームページに公開している。
  • がん医療の質の向上を目指し、がん拠点病院の相互訪問による実地調査が全国において実施できるよう支援を行った。
    がん診療連携拠点病院の整備指針見直しに対し、都道府県がん診療連携拠点病院連 絡協議会の意見を集約し、診療機能の集約化・役割分担、専門医療従事者の育成・配置等に関する提案をまとめ、厚生労働省に提案を行った。
    平成29年度は全国5ブロックで地域相談支援フォーラムを実施し、ブロック単位のPDCAサイクル確保の場として定着させることができた。

(図)全国のがん診療連携拠点病院等437施設への 診療支援体制を構築

情報の収集・発信

1.全国がん登録のオンラインシステム運用開始。院内がん登録を進展
全国がん登録
  • 平成28年に開始した全国がん登録について、29年4月、全国の医療機関をつなぐオンラインシステムを開始。約4,800施設がオンライン接続され、うち約3,400施設から100万件以上の届出をオンライン処理しており、安全、正確、迅速なデータ収集を実現。
  • また、全国がん登録の利活用ルールの整備、マニュアル発行、専用ソフト改善、実務者教育資料作成等を行っている。
  • 初年度である平成28年度の統計データを30年度中に公表できるよう、準備作業中。
  • 平成29年のがん罹患101.4万例、死亡数37.8万例という予測を算出し、将来推計とともに公表。(地域がん登録に基づく推計)
院内がん登録
  • 全国427施設のがん診療連携拠点病院等から平成27年に診断された702,866件のデータを収集し分析。
  • 29年度、新たに高齢者のがん治療法について特別集計。75歳・85歳以上の高齢患者では、若い世代と比較し、部位や病期によって「治療なし」の割合が多いこと等がわかった。
  • 5年生存率について、主要5部位に食道、膵臓、前立腺、子宮頸部、子宮体部、膀胱を加えて集計。病院別の5年生存率を初めて公表

注:院内がん登録は、全国がん登録と異なり、病院ごとにがん診療がどのように行われているかを明らかにするものであり、がん診療の特徴や問題点が明らかになるという特徴あり。

(図)院内がん登録の発展

 2.がん情報サービスの充実 正確でわかりやすい情報を届ける
「がん情報サービス」へのアクセス向上

正確ながん情報の地道な発信という取組が評価され、グーグルの健康情報の検索アルゴリズムの更改により、多くのがん種で検索結果トップに表示されるようになり、アクセス件数もおよそ2倍。さらにヤフーと連携し、検索結果画面に「がん情報サービス」が提供している病気の概要や症状、原因などの情報をまとめて表示。

(図)「がん情報サービス」へのアクセス向上

わかりやすい情報の発信

「すい臓がん、前立腺がん」等10種のがんについて、解説情報を更新。免疫療法について、患者・家族が治療選択に悩むことが多いことから、科学的な有効性証明の有無などを含め、基本的な情報をわかりやすく解説した。作成過程においては、患者・市民パネルや専門家の意見を集約。

災害対策サーバーの設置

平成29年4月、首都直下型地震を想定してクラウド上に災害対策サーバーを設置し、がん情報サービスの主なコンテンツの稼働を確保した。また、首都圏被災時には、都道府県のがん診療連携拠点病院のネットワークを活用し医療機関の状況などを遠隔地から収集・掲載するための運用体制の調整を行った。

3.海外承認済み、国内未承認の抗がん剤リスト公表 <評価書P78>

 平成27年度から「国内で薬事法上未承認・適応外である医薬品リスト」をweb上に公開。米・欧州で承認されているが国内未承認・適応外の医薬品を提示。28年度に開始された患者申出療養制度の参考となること等が想定されている。四半期毎に更新。

4.信頼できる情報を身近な公立図書館へ <評価書P77>

公共図書館にがん情報資料セットを届ける「がん情報ギフト」プロジェクトを開始。全国から寄付を募り、指定都道府県への寄付額に応じた資料セットを1都14県の43館に寄贈。これにより、インターネット利用が難しい方も科学的根拠ある情報にアクセス出来るよう支援を目指す。

業務運営の効率化に関する事項

  1. 効率的な業務運営に関する事項
    • 業務の質向上及びガバナンス強化を目指し、効率的な業務運営体制とするため、定期的に事務及び事業の評価を行い、役割分担の明確化、職員の適正配置等を通じ、弾力的な組織再編及び構築を行う。
    • 給与水準の見直し、共同調達や後発医薬品使用の促進、適正な診療報酬請求業務等に取り組む。
  2. 電子化の推進
    • 業務効率化・質向上のため電子化を推進し、情報を経営分析等に活用。情報セキュリティ対策を推進

効率的な業務運営に関する事項

効率的な業務運営体制等

1.情報統括センターの設置

AIの普及や医療のICT化に対応しセンター全体の情報システム・ネットワークを適切に整備・運用し、情報セキュリティー対策を確保するため、「情報統括センター」を平成29年10月に設置した。

がん対策情報センターの「がん情報サービス」、がんゲノム情報管理センターのゲノム情報管理、両病院の電子カルテ更新等、各部門を俯瞰し全体として情報の効率的活用を目指す。

2.財務ガバナンスの強化

29年度、セグメント別予算に加え部門別予算を設定し、部門ごとの責任と予算上限を明確化し、より適切に予算の執行管理を行う仕組みとした。また、全体の効率的運営を確保する観点から、各部門の大規模支出提案について、個々の費用対効果や必要性を審議しNCC運営方針との整合を確認することとし、このため新たに投資委員会を設け本格運用を開始した。30年度予算に向けて、NCCの将来像を見据え、中長期キャッシュフロー見通しを踏まえ業務計画をまとめた。これらにより、中長期的に安定運営を確保しつつ、必要な投資を計画的に行う基盤づくりを目指す。

5.スタッフデベロップメント研修

事務職員を対象とするスタッフデベロップメント研修を年14回開催し、企画立案能力の開発等について、職員のレベルアップを図った。

効率化による収支改善

1.経常収支率の状況

平成29年度の経常収支率は102.0パーセント(経常収支 13.7億円)、平成27、28年度に続く黒字。3年間累計の経常収支率は102.5パーセントとなった。

(図)「がん情報サービス」へのアクセス向上

2.給与水準の適正化 <評価書P82>

業務実績や政府の状況等を踏まえ、基本給、業績手当支給月数等の引上げを行った。退職手当は、国家公務員に準じて引下げを行った。

3.医業未収金の改善 <評価書P83>

医業未収金比率は、弁護士による督促や外国人患者の対策強化により0.05パーセントとなった。

注:平成28年度0.05パーセント、27年度0.09パーセント。毎年4月から1月末診療に係る3月末時点の患者未収金比率

4.一般管理費の削減 <評価書P84>

一般管理費(人件費、租税公課を除く。)は、委託費や消耗品費の削減等により、平成26年度に比べ7.6パーセント減少した。

平成26年度 392,121千円から、平成29年度 362,378千円

財務内容の改善に関する事項

  1. 自己収入の増加に関する事項
    • がんに関する医療政策を牽引していく役割を果たすため、運営費交付金以外の外部資金導入に努める。
  2. 資産及び負債の管理に関する事項
    • センター機能の維持・向上を図りつつ、投資を計画的に行い、固定負債を償還確実性が確保できる範囲とし、中・長期的に適正なものとなるよう努める。

自己収入の増加に関する事項

 外部資金の獲得

競争的資金の募集情報を速やかに研究者に提供して応募を促すこと、共同研究の積極的提案を行うこと等により、競争的資金を拡大した。
合計 129.2億円(前年度比+14.6パーセント)

  • 共同研究費  28.1億円(+52.6パーセント) ・治験29.8億円(+2.5パーセント)
  • 公的競争的資金68.9億円(+9.6パーセント)

(図)外部資金獲得額

知的財産権の状況

細胞株の提供(MTA対価)、著作物使用許諾増等により、知財関連の収支バランスは引き続き黒字で推移。MTA(Material Transfer Agreement)収入が2千万円近くまで伸びている。

(図)知財収支の推移

寄付金の獲得に向けた取組

平成29年度から定期的な継続寄付を可能としたこと、信託と連携した遺産寄付の環境整備を行ったこと等により、寄付金は1.4億円(+23.3パーセント)、587件(+3.0パーセント)と増加した。

資産及び負債の管理に関する事項

長期借入金残高の推移

 独法移行時点での債務残高は170.7億円。必要な投資を行うため、これまでに168.4億円の借り入れを行い、平成29年度末の債務残高は166.8億円(前年度比 +0.5パーセント)。独法移行時点と比較すると3.9億円減少している。

(図)長期借入金残高の推移

その他業務運営に関する重要事項

  1. 法令遵守等内部統制の適切な構築
    • 研究不正など不適切事案に適切に対応するため、事前防止やコンプライアンス体制の強化等により、内部統制を充実・強化。 
  2. その他の事項(施設・設備整備、人事の最適化に関する事項を含む)
    • 施設・設備整備について、センター機能の維持・向上、費用対効果及び財務状況を勘案して計画的な整備に努める。
    • 人事の最適化について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構や諸外国を含めた他の施設との人事交流を推進する。NC 間及びNHOとの間における人事交流を進める。

法令遵守等内部統制の適切な構築

  • 監事及び外部監査人と連携しながら、ガバナンス及び法令遵守等の内部統制のため、業務効率化、経営管理等多角的な視点による内部監査を20件実施するとともに、監査後の改善状況をモニタリングしフォローアップすることにより、センター各部門の業務改善及び業務効率の向上を図った。
    特に29年度は、内部監査(現場実査)において新たな重点監査項目を設定し、ハイリスクとなる事項への集中的な監査を実施して、職員の意識改革やガバナンスの一層の強化を図った。
  • 取引業者に対し、当センターの債権及び債務残高調査を実施し、研究費の不正使用防止策を一層強化した。 
  • チェックリストによる自己評価を継続して行い、各担当に不適正事項を認識させて自主的な業務改善につなげるとともに、効率的な内部監査の資料として活用できることとした。
  • 6ナショナルセンターの監事連絡会議を開催し、情報共有及び監査水準の向上に努めた。
  • 「研究に携わる者の行動規範」「研究活動における不正行為の防止に関する規程」等にもとづき、被験者保護及び研究不正をテーマとした研究倫理セミナーや、研究費の不正をテーマとしたコンプライアンス研修を開催し、職員へ周知啓発を行った。
  • 理事長直属の「研究監査室」において、独立した立場で臨床研究の監査を行うことにより、研究に係る法令遵守状況等の評価を行った。

その他の事項(施設・設備整備、⼈事の最適化に関する事項を含む)

施設・整備に関する計画

  • 築地キャンパスの新研究棟が平成29年3月に完成し、6月から稼働。
  • 柏キャンパスの次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT棟)が平成29年3月に完成し、5月から稼働。(P13、15再掲)

(写真)築地キャンパス新研究棟、柏キャンパス次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT棟)

広報

がんに関する最新の知見や研究成果、科学的根拠に基づく診断・治療法について広く国民に情報提供を行うため、プレスリリース・記者会見を
行い、ホームページに掲載した。

(図)リリース配信数、メディア掲載数

特に反響の大きかったプレスリリースプレスリリース日
高齢者へのがん医療の効果にかかる研究報告-進行がんにおける抗がん剤治療と緩和治療との有効性及びその適正使用-今後、全国がん登録などを活用した大規模調査が望まれる 4月27日
免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブで国内初の小児がん対象治験を医師主導で開始 5月10日
AIを活用したリアルタイム内視鏡診断サポートシステム開発
大腸内視鏡検査での見逃し回避を目指す
7月10日
がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2015年全国集計、2008年5年生存率集計公表 2012年から2015年の高齢者のがんについて特別集計 2008年施設別生存率集計 8月9日
自覚的ストレスとがん罹患との関連について-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果- 1月20日
8K技術の医療応用で世界初の臨床試験実施 8K新腹腔鏡システムの大腸がん手術での実用化に向け前進 3月14日

平成29年度の財務状況

(図)財務状況表

注:端数整理で四捨五入しているので、合計とは一致しないものがある。

(図)収益・費用

注:総収支差11.0億円(28年度24.8億円(マイナス13.8億円))

貸借対照表:平成30年3月31日

単位:億円

資産の部 負債の部 
資産   負債  
 流動資産 228.0  流動負債 233.2
 固定資産 1,146.2  固定負債 194.3
    純資産の部 
    純資産 946.7
資産合計 1,374.2 負債純資産合計 1,374.2

損益計算書:平成29年度

単位:億円

科目 科目 
経常費用 702.2 経常収益 716.0
 業務費(一般管理費含む)   運営費交付金収益 62.7
 人件費 232.7  補助金等収益 12.2
 材料費 213.6  業務収益 628.4
 委託費 42.4  その他 12.7
 減価償却費 59.5    
 その他 150.7    
 財務費用 1.5    
 その他経常費用 1.8    
臨時損失 2.9 臨時利益 0.2
    当期純利益 11.0

キャッシュフロー:平成29年度

単位:億円

区分 
1 業務活動によるキャッシュフロー 106.4
 支出 -621.8
 収入 728.2
2 投資活動によるキャッシュフロー -108.3
 支出 -108.3
 収入 0
3 財務活動によるキャッシュフロー -8.6
 支出 -33.8
 収入 25.2
4 資金増加額 -10.5
5 資金期首残高 140.7
6 資金期末残高 130.2
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