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国立がん研究センター

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受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍

2016年8月31日
国立研究開発法人国立がん研究センター

肺がんリスク評価「ほぼ確実」から「確実」へ

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区)がん対策情報センター(センター長:若尾文彦)は、日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について、複数の論文を統合、解析するメタアナリシス研究の結果が公表されたことをご報告します。本研究では、受動喫煙のある人はない人に比べて肺がんになるリスクが約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様であることが示されました。

本研究は、厚生労働科学研究費補助金「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」の支援を受けて行ったもので、研究成果は学術誌「Japanese Journal of Clinical Oncology」に掲載されました。

「日本人のためのがん予防法」で受動喫煙防止を明確な目標として提示

本研究結果を踏まえ、当センター社会と健康研究センター(センター長:津金昌一郎)を中心とする研究班は、受動喫煙における日本人を対象とした科学的根拠に基づく肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」にアップグレードしました。これに伴い、日本人の実情に合わせ喫煙、飲酒、食事、身体活動、体形、感染の6項目でがん予防法を提示しているガイドライン「日本人のためのがん予防法」においても、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から"できるだけ"を削除し「避ける」へ文言の修正を行い、受動喫煙の防止を努力目標から明確な目標として提示しました。

日本人における受動喫煙の肺がんリスクは、これまでの個々の研究では統計学的に有意な関連が示されていませんでしたが、本研究で複数の結果を統合したことで、リスクを上げることが「確実」であることが科学的根拠を持って示されました。日本人のがん予防策を考える上で、受動喫煙防止も禁煙同様に個人および公衆衛生上の目標として取り組むべきであると言えます。さらに、受動喫煙は肺がんだけでなく循環器疾患、呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群などにも影響することが科学的に確立しています。受動喫煙による健康被害を公平かつ効果的に防ぐために、世界49カ国(2014年現在)で実施されている公共の場での屋内全面禁煙の法制化など、たばこ規制枠組条約で推奨されている受動喫煙防止策を、わが国においても実施することが必要です。

研究背景

能動喫煙と肺がんの関連については、多くの調査、研究によりリスク要因として確実であることが明らかで、日本では肺がんの死亡のうち、男性で70%、女性で20%は喫煙が原因と考えられています。また、肺がん以外のがんとの関連も明らかで、がんの死亡のうち、男性で40%、女性で5%は喫煙が原因と考えられています。

受動喫煙と肺がんの関連については、1981年に平山雄 国立がんセンター研究所疫学部長(当時)が世界で初めて報告し、その後研究が蓄積され2004年に国際がん研究機関(IARC)が、環境のたばこ煙の発がん性を認めるに至っています。日本人を対象とした研究もこれまでに多数発表されており、当センターによる多目的コホート研究からも報告されています(International Journal of Cancer 2008; 122:653-657)。しかしながら、肺がん全体に関して個々の研究では統計学的に有意な結果が得られず、日本人を対象とした科学的根拠に基づくリスク評価が「ほぼ確実」にとどまっていました。非喫煙者の肺がんは頻度が低く、受動喫煙によるリスク増加も1.3倍程度と能動喫煙に比べれば小さいため、個々の研究では検出力が低く統計学的に有意な結果が得られなかったと考えられます。

研究方法

本研究では、日本人の非喫煙者を対象に受動喫煙と肺がんの関連を報告した426本の研究のうち、適用基準を満たした9本の論文結果に基づきメタアナリシスを行いました。

論文検索方法

  1. 日本人の非喫煙者を対象に受動喫煙と肺がんの関連を報告した研究を網羅的に検索
    検索データベース:MEDLINE(PubMed)、医学中央雑誌
  2. メタアナリシスに適用する論文の選択
    適用基準:日本人を対象とした研究、コホート研究または症例対照研究、肺がん罹患・死亡に対する受動喫煙の相対リスクの記載の有無
    スクリーニング:各文献について2名が独立して適用/除外を判断
  3. メタアナリシスに利用する項目を論文から抽出
    データの抽出:各文献について2名が独立して抽出
    抽出項目:対象者数、対象者特性(性別、年齢)、曝露情報(場所と発生源、測定法、カテゴリー)、リスク推定値(相対リスク、オッズ比、信頼区間)、調整した交絡要因

選択論文(9本)

著者名,出版年対象曝露因子など
Hirayama T. 1984 女性 91,540人 夫の喫煙(あり、1本から14本/日、20本以上/日)
Nishino et al. 2001 女性 9,675人 家族の喫煙(夫が喫煙者)
Ozasa. 2007 女性 420,201人年
男性 67,997人年
家庭での受動喫煙(ほぼ毎日、1日から4日/週、3時間以上/日)
Kurahashi et al. 2008 女性 28,414人 夫の喫煙
Akiba et al. 1986 女性 364人
男性 129人
配偶者の喫煙
Inoue et al. 1988 女性 249人 夫の喫煙(20本未満/日、20本以上/日)
Shimizu et al. 1988 女性 253人 家族の喫煙(夫が喫煙者)
Soubue. 1990 女性 875人 家族の喫煙(夫が喫煙者)
Seki et al. 2013 女性 2,102人
男性 670人
配偶者の喫煙

研究結果概要

  • 日本人を対象とした疫学研究のメタアナリシスにおいて、受動喫煙と肺がんとの間に統計学的に有意な関連が認められた。
  • 受動喫煙による相対リスクは約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様であった。
  • 研究デザイン、出版年、交絡因子の調整有無によって層別してもほぼ同じ結果であった。
  • 出版バイアスは統計学的に有意ではなく、出版バイアスを補完しても結果は変わらなかった。

個々の研究とメタアナリシスによる相対リスク

「日本人のためのがん予防法」について

発がんに関わるリスク要因の評価は、世界保健機関(WHO)や国際がん研究機構(IARC)等によって組織された委員会で、世界各国からがん研究に携わる専門家が召集され、これまでに発表された科学論文に基づき討議されます。その評価は、科学的に「確実」「可能性大」「可能性あり」「データ不十分」等、いくつかの段階にランク分けされ提示されます。

しかし、欧米人とは遺伝的背景、生活習慣の大きく異なる日本人のがん予防を考えた場合は、量的な面も含め日本人が日常的に遭遇する可能性の低いものには特段の注意を払う必要はないなど、日本人の生活習慣や研究結果に基づいた指針で対策を行う必要があります。

「日本人のためのがん予防法」は、国立がん研究センター研究開発費「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班が、日本人を対象とした研究を収集、科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果を評価し、日本人のがん予防の指針として提示しています。より新しい科学的根拠が集積された場合には、評価の見直し、変更を行うことを前提としています。

日本人のためのがん予防法 表

「日本人のためのがん予防法」?現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法?

掲載ウェブサイト

  • 一般向け:「がん情報サービス(がん情報サービスへリンクします)」予防・検診>がん予防>日本人のためのがん予防法
    日本人のためのがん予防法(がん情報サービスへリンクします)
  • 研究者向け:国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ

発表論文

研究費

  • 平成27年度厚生労働科学研究費補助金
    循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業
    「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」
  • 国立がん研究センター研究開発費
    「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」

プレスリリース

  • 受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍 肺がんリスク評価「ほぼ確実」から「確実」へ

関連ファイルをご覧ください。

資料

  • 受動喫煙と肺がんとの関連についてのシステマティック・レビューおよびメタアナリシス
  • 科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価および「日本人のためのがん予防法」における変更点について

関連ファイルをご覧ください。

報道関係からのお問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
郵便番号:104-0045 東京都中央区築地5-1-1
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