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国立がん研究センター

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電子タバコでの禁煙は有効性が低い

紙巻タバコの禁煙方法と有効性を調査
電子タバコでの禁煙は有効性が低い

2017年12月12日
国立研究開発法人 国立がん研究センター

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区)がん対策情報センター(センター長:若尾文彦)は、電子タバコの禁煙の有効性を確認するため、過去5年間に紙巻きタバコの使用をやめる禁煙行動に取り組んだ禁煙施行者約800名について、禁煙方法と禁煙成功者数、失敗者数を調査、分析を行いました。

研究のポイント

電子タバコ使用による禁煙の有効性は低く、電子タバコを使用した人は、使用しなかった人よりもタバコをやめられた人が38%少なく、電子タバコが禁煙の成功確率を約1/3低下させていることが示されました。一方、禁煙外来を受診して、薬物療法(ニコチンを含まない薬の処方)を受けた人では、禁煙の成功確率を約2倍に上昇させていることが示されました。

断面調査であり様々な調査上の限界や制約はあるものの、わが国では電子タバコによる禁煙の有効性を否定する結果が示されました。

本研究の背景および目的

世界保健機関(WHO)たばこ規制枠組み条約(FCTC)では、締約国は禁煙支援に対する措置として、科学的根拠や優良事例に基づいた効果的な対策を講ずるべきとされています。医師による禁煙アドバイスや、健康診断の場における禁煙の助言および禁煙支援は有効性が報告されており、わが国では医療保険を使ったニコチン依存症の治療や、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)該当者および予備群を対象とした特定健康診査・特定保健指導(積極的支援、動機付け支援)の実施がなされています。

その一方で電子タバコの禁煙効果については、世界的に意見がわかれており、電子タバコを使うことで喫煙をやめる、あるいは喫煙本数を減らすことについて、利点と欠点の両方が指摘されています。電子タバコの支持者は、電子タバコが紙巻きたばこの健康影響を減らす潜在的可能性を持っており、喫煙者は紙巻きタバコより安全な製品(すなわち、健康への害が少ない製品)へ切り替えることを可能にすると主張しています。一方で電子タバコに批判的な者は、電子タバコが喫煙者の禁煙意欲を失わせ、社会全体でみればかえってタバコの使用を増加させるリスクがあると主張しています。

わが国においても、電子タバコが禁煙目的で売られているものの、禁煙に効果があるかの根拠は示されていません。そこで本研究において、禁煙施行者の禁煙方法および禁煙の成功/失敗を調査し、電子タバコの禁煙効果を分析しました。

本調査の方法および結果

インターネット調査から、過去5年間に禁煙に取り組んだ20-69歳の禁煙施行者798名を分析し、禁煙方法と禁煙の成功者数/失敗者数【表1】をもとに分析した。

多変量ロジスティック回帰モデルの解析から、電子タバコの使用は、禁煙成功と負の関連があった(オッズ比(OR)= 0.632; 95%信頼区間(CI)= 0.414-0.964)【表2・モデル2】。逆に、禁煙外来による薬の処方は、禁煙成功と有意に関連していた(OR = 1.885; 95%CI = 1.018-3.492)。

表1 過去5年間に禁煙を施行した798人の属性と喫煙状況および実施した禁煙方法

 全体禁煙失敗者
(現在喫煙者)
禁煙成功者
(現在非喫煙者)
p
 人数%人数%人数%
798100.0545100.0253100.0
実施した禁煙方法(複数選択)              
 電子タバコ 159 19.9 120 22.0 39 15.4 0.030
 薬局・薬店で販売されている禁煙補助剤 217 27.2 151 27.7 66 26.1 0.632
 禁煙外来の受診 96 12.0 63 11.6 33 13.0 0.549
  ニコチンを含まない薬の処方 68 8.5 43 7.9 25 9.9 0.348
  その他(処方薬なし、またはニコチン置換療法) 56 7.0 39 7.2 17 6.7 0.822
 禁煙本などを用いた自力での禁煙 666 83.5 446 81.8 220 87.0 0.070
性別             0.451
 男性 532 66.7 368 67.5 164 64.8  
 女性 266 33.3 177 32.5 89 35.2  
年齢             0.008
 20–29歳 99 12.4 62 11.4 37 14.6  
 30–39歳 177 22.2 113 20.7 64 25.3  
 40–49歳 190 23.8 138 25.3 52 20.6  
 50–59歳 181 22.7 139 25.5 42 16.6  
 60–69歳 151 18.9 93 17.1 58 22.9  
喫煙開始年齢             0.237
 20 歳未満 224 28.1 146 26.8 78 30.8  
 20歳以上 574 71.9 399 73.2 175 69.2  
婚姻             0.003
 既婚 516 64.7 333 61.1 183 72.3  
 未婚 198 24.8 144 26.4 54 21.3  
 離別・死別 84 10.5 68 12.5 16 6.3  
既往歴 (複数選択)              
 がん、心血管疾患 53 6.6 39 7.2 14 5.5 0.392
 高血圧 158 19.8 113 20.7 45 17.8 0.331
 糖尿病 61 7.6 45 8.3 16 6.3 0.339

表2 5年以内の禁煙施行者(798名)の禁煙方法および社会属性による禁煙成功オッズ比

 モデル1モデル 2
オッズ比95%信頼区間オッズ比95%信頼区間
実施した禁煙方法        
 電子タバコ 0.629 0.415–0.954 0.632 0.414–0.964
 薬局・薬店で販売されている禁煙補助剤 0.968 0.666–1.405 0.952 0.653–1.387
 禁煙外来の受診 - - - -
  ニコチンを含まない薬の処方 1.747 0.958–3.188 1.855 1.018–3.492
  その他(処方薬なし、またはニコチン置換療法) 0.821 0.416–1.621 0.808 0.405–1.614
 禁煙本などを用いた自力での禁煙 1.349 0.846–2.152 1.359 0.846–2.183
性別        
 男性 (対照) 1.000   1.000  
 女性 1.100 0.795–1.523 1.160 0.828–1.627
年齢        
 20–29歳 1.687 0.996–2.855 1.821 1.046–3.172
 30–39歳 1.502 0.961–2.346 1.554 0.981–2.460
 40–49歳 (対照) 1.000   1.000  
 50–59歳 0.782 0.487–1.257 0.776 0.478–1.259
 60–69歳 1.737 1.091–2.763 1.793 1.085–2.963
喫煙開始年齢        
 20 歳未満 (対照)     1.000  
 20歳以上     0.826 0.585–1.125
婚姻        
 既婚 (対照)     1.000  
 未婚     0.604 0.404–0.901
 離別・死別     0.430 0.237–0.780
既往歴        
 がん、心血管疾患     0.749 0.380–1.476
 高血圧     0.899 0.582–1.388
 糖尿病     0.713 0.375–1.358

注)「実施した禁煙方法」については、それぞれの方法を実施しなかった集団を対照、「既往歴」では各疾患の病歴がない集団を対照としている

考察

電子タバコでは禁煙の成功確率が約1/3低下したというこの本調査の結果は、米国等海外で分析、評価されている既報報告のメタ解析結果と一致していました。電子タバコは単に禁煙を奨励するだけで公衆衛生にプラスの影響を与えるとの見方がある一方で、より効果的な禁煙方法から喫煙者を惑わし、逸らすと、結果的に社会へ悪影響を及ぼす可能性があります。本結果から、電子タバコが喫煙の全体的な減少に大きな貢献をする可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではないと考えられます。多くの電子タバコが、「タバコをやめたい人のための電子タバコ」「電子タバコで禁煙」などと宣伝されていますが、製品説明の中に禁煙成功の効果を発揮するための用法、用量が示されていないものも多く、医療関係者からの指導や支援とも関わりがありません。医療機関での禁煙外来の受診など、医学的に証明された禁煙方法と横並びに電子タバコを扱うことはできません。

禁煙治療の有効性ならびに経済効率性については、十分な科学的証拠があり、数ある保健医療サービスの中でも費用対効果に特に優れていることがわかっています。わが国では2006年度より禁煙治療に対する保険適用が行われており、中央社会保険医療協議会の検証結果では、禁煙治療終了9か月後の禁煙継続率が約3割(5回受診完了者では約5割)であり、国際的にみて高い成績であることが報告されています。2016年度には、未成年者や若年喫煙者へも適用が拡大されました。

なお、この研究にはいくつかの限界があります。例えば、禁煙方法の選択は、各参加者の禁煙意欲とタバコへの依存度合いにもよりますが、本研究では、電子タバコの使用が喫煙の失敗を引き起こしたのか、逆に禁煙が困難な人が電子タバコを使用する可能性が高いのかは評価できていません。電子タバコあるいは他の禁煙方法を禁煙歴中のどこで使用されたのかも解析が行えていません。また、電子タバコには様々な種類がありますが、種類別の分析や評価までは至っていません。海外ではニコチン入りの電子タバコが中心ですが、わが国ではニコチン入りの電子タバコが規制対象となっているためにニコチンを含まない電子タバコが主となっている市場環境の違いもあります。これらの課題ついては今後の研究が待たれています。

なお、電子タバコに対しては、健康上の懸念や未成年者をはじめとする若年層への影響、たばこ対策への影響など多くの懸念が指摘されています【参考:「たばこ白書」、米国公衆衛生総監報告書】。

国立がん研究センターでは、本研究結果などに基づき、電子タバコが国内の喫煙者の減少に大きな貢献をする可能性は低く、禁煙の手段として推奨または促進すべきではない、また禁煙目的をうたう販売に対して適切な規制がなされる必要があると考えます。

参考

「たばこ白書」で指摘されている電子タバコ等への懸念

電子タバコなど新規タバコ製品群には、表3のように様々なものがあり,喫煙者の選択範囲が拡がっていることの影響が懸念されています。わが国では、バッテリーに蓄えた電気で加熱して吸い込む形式のものについても、ニコチンを含まない電子タバコ、ニコチン入りの電子タバコ、たばこの葉を加熱する電気加熱式タバコがあり、法規制上の位置づけが異なっています。電気加熱式タバコはたばこ事業法上のたばこ製品として取り扱われ、未成年者喫煙禁止法により未成年者の使用や未成年者への販売が禁止されています。ニコチン入りの電子タバコについては、医薬品医療機器法(旧薬事法)により当局の許可なくニコチン入り溶液・カートリッジを販売することができなくなっています。一方、ニコチンを含まない製品は、特段の販売規制はありません。

厚生労働省が2016年9月に公表した喫煙の健康問題に関する検討会編「喫煙と健康(喫煙の健康問題に関する検討会報告書)」(通称:「たばこ白書」)において、電子タバコおよび電気加熱式タバコについては次のように述べられています。

これら新規製品の販売による喫煙者の選択の多様性拡大の影響が懸念されるところである。これらの公衆衛生上の課題として,1)製品の有害性および健康リスク,2)従来のたばこ製品との併用による二重使用(デュアル・ユース), 3)未成年者を中心とした非喫煙者を紙巻きたばこ使用に誘導するゲートウェイ,4)製品による禁煙効果やハームリダクション(使用者本人および社会への有害性の低減)の可能性,などがあり,今後集積されるエビデンスを踏まえて,規制のあり方を検討していく必要がある。

電子たばこの規制については,国によって規制の現状が異なっていることから,自国の法体系の中で,以下の目的に沿って規制を検討することとされている。すなわち,1未成年者をはじめ非喫煙者による使用の防止,2新しいたばこ製品の使用者のみならず,周囲の非喫煙者への健康被害を最小限にする,3まだエビデンスが確立していない新規たばこ製品の禁煙効果についての宣伝の規制,4新規たばこ製品の関連会社によるたばこ規制に対する妨害の抑止(たとえば,電子たばこ製品による受動喫煙防止対策への妨害など)である。

また,たばこ葉を加熱して吸引する電気加熱式たばこ製品については,疾病との因果関係については今後の研究が待たれる状況であるが,たばこ煙にさらされることについては安全なレベルはないため,健康へ悪影響を及ぼす可能性は高い。たばこ会社の強力なマーケティングもあり,公衆衛生上の懸念も大きい。

表3 新規たばこ関連製品群と従来たばこ製品-製品特性からみた分類

 

燃焼加熱非加熱

たばこの葉を含有

(たばこ事業法)

従来型のたばこ製品

電気加熱式タバコ

PloomTECH(JT)

 iQOS(PM)

 glo(BAT)

無煙たばこ(かぎたばこ)

 ゼロスタイル・スティックス

 セロスタイル・スヌース

ガムたばこ(かみたばこ)

ニコチンを含有

(医薬品医療機器法)

たばこ類似商品:薬用吸煙剤,第2類医薬品(ネオシーダー)

ニコチン入り電子タバコ

 

ニコチンを含有せず

 

ニコチンを含まない電子タバコ

 

(注)斜体は主な製品名
JT 日本たばこ産業
PM フィリップモリスジャパン
BATブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン

(出所)喫煙の健康問題に関する検討会編「喫煙と健康(喫煙の健康問題に関する検討会報告書)」(通称:「たばこ白書」)の表を一部改変

米国公衆衛生総監報告書で指摘されている電子タバコへの懸念

米国公衆衛生総監報告において、米国保健福祉省は、2016年12月8日、公衆衛生総監報告を発表し、電子タバコの使用が米国の若者の間で爆発的に増加しており、今や「重大な公衆衛生上の懸念」となっていると警鐘を鳴らしました。同報告書(添付資料参照)では、次のように述べられています。

米国では、中高生の電子タバコ使用が、2011年から2015年の間に、3倍以上に増加した。青年期のニコチン曝露は中毒を引き起こしやすく、発達中の脳に害を及ぼすことがある。また、妊娠中に電子タバコ使用は、胎児および出生後の発達に影響を及ぼすことが知られていて、乳幼児突然死症候群、脳障害、聴覚障害、肥満を含む複数の有害な結果をもたらしうる。

電子タバコのミストは、無害な「水蒸気」ではなく、カルボニル化合物など、健康に悪影響を及ぼすことが知られている揮発性有機化合物などが含まれる。電子タバコの詰替液およびエアロゾル成分の健康影響は、完全には理解されていない。

電子タバコ製品は、青少年が目にする幅広い範囲、広範なチャネルで広告宣伝が行われ、広告宣伝費は拡大している。電子タバコのマーケティングにおいては、性的内容を含むものなど、若者を引きつけ、若者を満足させる時のテーマや技術が用いられている。

若者の電子タバコ使用を効果的に防止するために、連邦規制の強化、販売の最低年齢引き上げとその厳格な実施、マスメディアによる電子タバコの害に関する国民啓発活動の実施などを強く求めている。

発表論文

  • 雑誌名
    International Journal of Environmental Research and Public Health
  • タイトル
    Electronic Cigarette Use and Smoking Abstinence in Japan: A Cross-Sectional Study of Quitting Methods.
  • 著者
    Tomoyasu Hirano, Takahiro Tabuchi, Rika Nakahara, Naoki Kunugita, Yumiko Mochizuki-Kobayashi
  • Doi
    10.3390/ijerph14020202
  • URL
    http://www.mdpi.com/1660-4601/14/2/202/htm

研究費

平成28年度厚生労働科学研究費補助金  循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業
「受動喫煙防止等のたばこ対策に関する研究」

参考資料

厚生労働省
喫煙の健康問題に関する検討会編「喫煙と健康(喫煙の健康問題に関する検討会報告書)」
URL:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135586.html

米国公衆衛生総監報告
U.S. DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
Public Health Service
Office of the Surgeon General
E-cigarette use among youth and young adults: a report of the Surgeon General.
URL:https://www.surgeongeneral.gov/library/2016ecigarettes/index.html

(注)この日本語概要は、国立がん研究センターが国内関係者の参考用にとりまとめたものであり、アメリカ合衆国保健福祉省の公式な報告ではありません。日本語要旨の文責は国立がん研究センターのみが負います。

aOR、95%CL

5年以内の禁煙施行者(798名)の禁煙方法および社会属性による禁煙成功オッズ比(モデル2)

図「5年以内の禁煙施行者(798名)の禁煙方法および社会属性による禁煙成功オッズ比(モデル2)」

回答者の性・年齢、喫煙開始年齢、婚姻の状況、および病歴を従属変数とした多変量ロジスティック回帰モデルの解析結果で、「実施した禁煙方法」については、それぞれの方法を実施しなかった集団を対照、「既往歴」では各疾患の病歴がない集団を対照としています。青丸は禁煙成功のオッズ比、線は95%信頼区間を示しています。

報道関係からのお問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター
郵便番号:104-0045 東京都中央区築地5-1-1
企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
ファクス番号:03-3542-2545
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置きかえてください)

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