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国立がん研究センター

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胃がん内視鏡検診における受診対象の最適条件を推定対象年齢と受診間隔をシミュレーションによる費用対効果分析で検討

2020年9月14日
国立研究開発法人国立がん研究センター
東京大学大学院医学系研究科

研究のポイント

  • 胃がんの内視鏡検診について、シミュレーションにより費用対効果を検証した。
  • 胃がん内視鏡検診の開始年齢、終了年齢、および受診間隔の最適条件を検討し、開始年齢50歳、終了年齢75歳または80歳、3年毎のシナリオが費用対効果に優れると推定された。

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、所在地:東京都中央区)がん対策情報センター(センター長:若尾 文彦)は、東京大学大学院医学系研究科と共同で、胃がん内視鏡検診における受診対象の最適条件の推定を行い、その結果を公表しました。本研究結果は英国学術雑誌BMC Medicineに9月14日付で公表されました。

本研究の背景および目的

国立がん研究センターは、胃がん検診の科学的根拠を示すガイドラインとして「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版を発行しています。このガイドラインでは、利益と不利益のバランスから、胃内視鏡検査を用いた胃がん検診は、50歳以上を対象に2年毎または3年毎に受診することが推奨されています。一方米国など諸外国では、がん検診の上限を含む対象年齢および受診間隔について、費用対効果分析を含むシミュレーションモデルを用いて検討し、最適条件とされるシナリオを作成し、各国の関係機関が作成するがん検診ガイドラインの資料として活用されています。わが国においても、限られた医療資源を有効に活用するために、同様の取り組みが必要となることが考えられます。本研究は、シミュレーションモデルにより胃がん内視鏡検診における受診対象の最適条件を検討することを目的としました。

本研究の方法

本研究では、日本人集団の胃がんリスクおよび死亡率を反映したシミュレーションモデルを構築し、胃がん内視鏡検診の開始年齢(40歳、45歳、50歳)、終了年齢(75歳、80歳)、および受診間隔(2年毎、3年毎)の組み合わせについて費用対効果により評価しました。シミュレーションは、危険因子として喫煙率およびヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)感染率をモデルに組み込み、検診は内視鏡検診のみ想定、発見された異形成および前がん病変は粘膜下切除され、年1回の内視鏡サーベイランスを5年間続けることを想定しました。

結果

費用対効果分析では、増分費用対効果(注1)に基づいて、開始年齢50歳、終了年齢75歳または80歳、3年毎のシナリオが最適と推定されました(図1、50-75-3および50-80-3のシナリオ)。

(注1)増分費用対効果:質調整生存年(注2)を1年延伸するために必要な追加的費用。増分費用対効果が許容される範囲内であり、かつ質調整生存年の延伸が大きいシナリオが費用対効果に優れるとされる。

(注2)質調整生存年:生存年数を生活の質で重みづけした指標。完全に健康な1年を1質調整生存年とし、疾病の重さにより0と1の間の数値で表される。

 

図1. 胃がん内視鏡検診の受診年齢および受診間隔シナリオ別の費用対効果分析の結果

(点線の傾きより左上に位置する50歳開始・75歳終了・3年間隔、または50歳開始・80歳終了・3年間間隔のシナリオが、現行のガイドラインである50歳開始・終了年齢なし・3年間隔より費用対効果に優れる)

 QALY

考察

本研究で用いたモデルは、日本人における代表性の高いデータを用いており、胃がん罹患率、臨床進行度割合、胃がん死亡率についての外的妥当性(別に公表されている外部データとの結果の一致)が確認されています。一方、シミュレーションは様々な仮定の下に行った推定であり、解釈には注意が必要です。がん検診の対象年齢や受診間隔は、本研究で行った費用対効果分析だけでなく、利益・不利益のバランス、医療資源の利用可能性、検診実施主体の実施可能性、他の保健・医療政策との整合性、対象者への受診勧奨や情報提供のあり方など、総合的な観点から検討を進める必要があると考えられます。

発表論文

雑誌名

BMC Medicine

タイトル

Effect and cost-effectiveness of national gastric cancer screening in Japan: a microsimulation modeling study.

著者

Huang HL, Leung CY, Saito E, Katanoda K, Hur C, Kong CY, Nomura S, Shibuya K,

Doi

10.1186/s12916-020-01729-0

URL

https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-020-01729-0

研究費

  • 2017~2019年度厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)「科学的根拠に基づくがん種別・年代別検診手法の受診者にわかりやすい勧奨方法の開発に関する研究」(研究代表者:中山 富雄)
  • 2017~2020年度科学研究費助成事業基盤研究(B)「集団における疾病の罹患・死亡状況の要因分析と介入効果の予測研究」(研究代表者: 片野田 耕太)

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