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がん診療連携拠点病院等 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム初公開 2007・08年10年生存率(初)、2012・2012-13年5年生存率、2014・2015年3年生存率集計公表

2021年4月27日
国立研究開発法人国立がん研究センター

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)は、専門的ながん医療を行う全国のがん診療連携拠点病院等から収集した院内がん登録情報を用いて、2007年と2008年診断例の10年生存率、2012年診断例(単年)と2012から2013年診断例(2カ年)の5年生存率、2014年と2015年診断例の3年生存率集計結果を公表しました。さらに5年、3年生存率については簡易に結果を閲覧できるよう「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」を開発し、公開しました。

国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス がん登録・統計」統計ページ
報告がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計(報告書)
院内がん登録生存率集計結果閲覧システム

本リリースのポイント

  • 院内がん登録生存率集計結果閲覧システムの初公開
    本システムは、全国のがん診療連携拠点病院等をはじめとするがん診療病院の予後情報付院内がん情報を用いて集計した生存率を閲覧することができるシステムです。がんの種類・性別・病期・年齢・手術の有無といった条件別に、生存率を検索し比較することができます。
  • 今回の集計より従来の「部位別」から「がん(がん種)別」に変更しました。
    小細胞肺癌や非小細胞肺癌など個別に生存率をみることができます。

2007年及び2008年院内がん登録10年生存率集計(初集計)

2007年10年生存率は181施設約18万例、2008年10年生存率は240施設約24万例のデータを用いて、院内がん登録としては初めてとなる長期予後の集計を実施しました。公表されている既存の10年生存率に比べ、より多くの診療施設・診断例を集計し算出することができました。
院内がん登録開始初期のデータであり、登録精度には課題がありますが、5年以降も長期的なフォローアップが必要となるがんもあることが分かりました。

2012年及び2012-13年院内がん登録5年生存率集計(6、7回目)

 2012年(単年)5年生存率は365施設約41万例、2012-2013年(2カ年)5年生存率は413施設約83万例を用いてある程度の対象数を担保した上で集計を実施しました。

2014年及び2015年院内がん登録3年生存率集計(4、5回目)

2014年3年生存率集計は372施設約42万例、2015年3年生存率は399施設約46万例を用いて、より早い段階での生存率情報を提供するために集計を実施しています。

5年・3年生存率ともに、調査にご協力いただいた施設が増加し、より安定した推定値の算出に繋がったと考えられます。データが蓄積されてきたことを踏まえ、がん・性別・病期・年齢・手術の有無といった条件別に、生存率を見ていただくことができるようにシステムを開発いたしました。

解説

院内がん登録とは

院内がん登録は、全国のがん診療連携拠点病院等をはじめとするがん診療病院で診断されたり、治療されたりしたすべての患者さんのがんについて診療科を問わず病院全体で集め、その病院のがん診療がどのように行われているかを登録する仕組みです。病院において、がん医療の状況を適確に把握するため、当該病院におけるがん患者さんについて、全国がん登録情報よりも詳細な治療の状況を含む情報を収集し、院内がん登録データベースに記録し、及び保存しています。
国立がん研究センターでは、こうした院内がん登録情報を全国規模で収集し、当該情報を基にしたがん統計等の算出等を行うことにより、専門的ながん医療の提供する医療機関の実態把握に資すること、そして、院内がん情報等を適切に公表することにより、がん患者さん及びその家族等の医療機関の選択等に資することが期待されています。

生存率とは

  • 実測生存率
    実際に診療した患者さんの生存割合で、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。
    がん診療連携拠点病院等で初回治療を受けた患者さんを対象としており、疾患の経過についての一つの見通しとなります。
  • 相対生存率
    がん以外の死因による死亡などの影響を取り除くために、患者集団の実測生存率を、患者集団と同じ性・年齢構成の一般集団における期待生存率で割ることによって算出する生存率です。がん対策の評価において、主に全国がん登録を用いて、がんによる影響を見たいときに用いられます。

院内がん登録生存率集計における公表基準

  • 都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会 がん登録部会にて決定されます。
  • 全がんの生存状況把握割合が90%以上の施設で、集計対象が原則30例以上。
  • 都道府県内で該当施設が1施設の場合は、都道府県値として公表しておりません。

院内がん登録生存率集計結果閲覧システムの初公開

本システムは、全国のがん診療連携拠点病院等をはじめとするがん診療病院から収集した予後情報付院内がん登録情報を用いて集計した生存率を閲覧することができるシステムです。胃癌、大腸癌(結腸癌、直腸癌)、肝癌(肝細胞癌、肝内胆管癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、乳癌、食道癌、膵臓癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、膀胱癌、甲状腺乳頭・濾胞癌、甲状腺未分化癌、甲状腺髄様癌、胆嚢癌、喉頭癌、腎癌、腎盂尿管癌、卵巣癌について、がんの種類、性別、病期、年齢、手術の有無といった条件別に、生存率を検索することができます。(注:10年生存率は未対応)

国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス がん登録・統計」
院内がん登録生存率集計結果閲覧システム

検索画面

図1.非小細胞肺癌病期別・年齢別5年生存率検索 

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同じがんの種類・同じ病期を診断された患者さんであっても、個々の患者さんの生存率は併存疾患の有無やその程度、年齢、手術の有無などさまざまな要因によって異なります。この閲覧システムでは、要因の一つである年齢階級別に生存率をご覧いただくことができます。
残念ながら治療が難しいがんもあります。しかし、日々医療技術は進歩していますのであくまでも過去にがんと診断された方々の経験からの参考値としてご覧ください。

検索結果

図2.非小細胞肺癌病期別5年相対生存率検索結果

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病期別に生存率を比較することができます。

図3.非小細胞肺癌病期別・年齢別5年実測生存率検索結果

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図4.非小細胞肺癌病期別・年齢別5年相対生存率検索結果

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例えば、非小細胞肺癌I期の5年生存率を検索すると、実測生存率と相対生存率の双方を比較することができます。60代以下では実測・相対に大きな乖離はありませんが、例えば80歳以上では実測生存率が47.6%、相対生存率が70.9%と差が大きくなり、高齢者ではがん以外による死亡も高くなっています。

2007年、2008年院内がん登録10年生存率集計(初集計)

概要

今回、がん診療連携拠点病院等をはじめとする院内がん登録としては、初めてとなる長期予後の集計として10年生存率報告書をまとめました。院内がん登録実務者への研修会実施状況を鑑み、2007年診断例では、胃癌、大腸癌、肝細胞癌、非小細胞肺癌、女性乳癌の生存率を、また2008年診断例では、食道癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、膀胱癌を新たに追加集計しています。

集計対象

2007年 183,463例181施設

2019年6月時点のがん診療連携拠点病院等442施設、都道府県推薦病院300施設で初回治療を開始したがん診断例を調査対象とし、そのうちデータが提供された256施設の中で、2007年診断例の全がんにおける生存状況把握割合が90%以上であった181施設を集計対象としました。

2008年237,892例240施設

2020年7月時点のがん診療連携拠点病院等447施設、都道府県推薦病院311施設、小児がん拠点病院6施設で初回治療を開始したがん診断例を調査対象とし、そのうちデータが提供された330施設の中で、2008年診断例の全がんにおける生存状況把握割合が90%以上であった240施設を集計対象としました。

集計結果

  • 全がんの10年生存率
    2007年 実測生存率は46.6%、相対生存率は60.1%でした。
    2008年 実測生存率は45.7%、相対生存率は59.4%でした。
    2008年10年生存率は、集計対象が59施設約5万4千件増加し、より安定した生存率となりました。
  • 既存の公開されている10年生存率集計としては、最も大規模な調査結果です。
  • これまで治癒の目安として、5年生存率が用いられることが多くなっていましたが、肝細胞癌などがんによっては5年以降も長期的にフォローアップしていくことが必要なことがわかりました。
  • 院内がん登録開始初期のデータであるため、登録精度には課題がありますが、今後、さらにデータが蓄積されることでより詳細な集計ができるようになると期待されます。

図5.2008年診断例がん別・病期別10年生存率

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2012年(単年)、2012から2013年(2カ年)院内がん登録5年生存率集計(6、7回目)

概要

5年生存率は、2007年診断例より集計を開始し、がんの発生した部位別に、全体、都道府県別、施設別集計を公表してきました。本報告書では、全がんと合わせて、国際病期分類(UICC TNM分類)の登録対象である主に上皮細胞由来の悪性腫瘍に限定し、がん(がん種)別に集計を行いました。

集計対象数

2012年406,210例365施設

2019年6月時点のがん診療連携拠点病院等442施設、都道府県推薦病院300施設で初回治療を開始したがん診断例を調査対象とし、そのうちデータが提供された460施設の中で、2012年診断例の全がんにおける生存状況把握割合が90%以上であった365施設(がん診療連携拠点病院等318施設、都道府県推薦病院47施設)を集計対象としました。

2012から2013年(2カ年)826,380例413施設

2020年7月時点のがん診療連携拠点病院等447施設、都道府県推薦病院311施設、小児がん拠点病院6施設で初回治療を開始したがん診断例を調査対象とし、そのうちデータが提供された476施設の中で、2013年診断例の全がんにおける生存状況把握割合が90%以上であった383施設(がん診療連携拠点病院等331施設、都道府県推薦病院52施設)を集計対象としました。さらに、2012年診断例で同様に把握割合が90%以上であった施設を合わせて、合計413施設における登録例を集計対象としました。

集計結果

  • 全がんの5年生存率
    2012年 実測生存率は59.5%、相対生存率は67.3%でした。
    2012-13年(2カ年) 実測生存率は59.5%、相対生存率は67.3%でした。
    年々調査へ参加していただける施設・集計対象施設が増加しています。
    がんの種類、病期、年齢別等の個別の集計値については、院内がん登録生存率集計結果閲覧システムを通して閲覧していただくことができます。
  • 2012年(単年)5年生存率集計では、各都道府県からのコメントとともに、都道府県別生存率(卵巣癌除く)を集計しました。都道府県により集計参加状況は異なりますので、必ずコメントをご覧ください。

図6. 2012-13年診断例がん別・病期別5年生存率

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2014年、2015年院内がん登録3年生存率集計(4、5回目)

概要

3年生存率は、5年生存率もより早く科学的根拠に基づく情報を国民へ提供するため、2011年診断例より公表してきました。これまでがんの発生した部位別に生存率を公表してきましたが、本報告書では、5年生存率と同様、全がんと合わせて、国際病期分類(UICC TNM分類)の登録対象である主に上皮細胞由来の悪性腫瘍に限定しがん(がん種)別に集計を行いました。

集計対象数

2014年421,150例372施設 (前回:373,522例330施設)

2019年4月時点のがん診療連携拠点病院等442施設、都道府県推薦病院300施設で初回治療を開始した例を調査対象とし、そのうちデータが提供された482施設の中で、2014年診断例の全がんにおける生存状況把握割合が90%以上であった372施設(がん診療連携拠点病院等315施設、都道府県推薦病院55施設、小児がん拠点病院2施設)の421,150例を集計対象としました。

2015年460,092例399施設

2020年7月時点のがん診療連携拠点病院等447施設、都道府県推薦病院311施設、小児がん拠点病院6施設で初回治療を開始した例を調査対象とし、そのうちデータが提供された495施設の中で、2015年診断例の全がんにおける生存状況把握割合が90%以上であった399施設(がん診療連携拠点病院等336施設、都道府県推薦病院61施設、小児がん拠点病院2施設)の460,092例を集計対象としました。

集計結果

  • 全がんの3年生存率
    2014年 実測生存率は67.6%、相対生存率は72.6%でした。
    2015年 実測生存率は68.5%、相対生存率は73.6%でした。
    年々調査へ参加していただける施設・集計対象施設が増加しています。
    がんの種類、病期、年齢別等の個別の集計値については、院内がん登録生存率集計結果閲覧システムを通して閲覧していただくことができます。

図7.2015年診断例がん別・病期別3年生存率

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既存生存率集計との比較

都道府県が行う地域がん登録と全国がんセンター協議会(全がん協)による生存率集計が、既存集計として公開されています。しかし、いずれも施設や地域が限定的であること、また対象数が少ないなどの課題があります。

地域がん登録((注)現在の全国がん登録の前身)

地域の実態把握のため都道府県が実施するもので、最新の全がんの5年相対生存率は64.1%で、登録精度の高い22府県の3年分(2009年から2011年)約59万例のデータを元に算出されています。2016年以降の診断例は、全国がん登録として全数登録されているため、今後はより正確な生存率が算出できることが期待されています(2016年診断例の5年生存率の算出は2023年以降の予定)。

全国がんセンター協議会(全がん協)

 全国がんセンター協議会(全がん協)の5年、10年生存率は、本集計と同様に院内がん登録をベースとしたものです。最新の全がんの10年相対生存率は58.3%で、同協議会に加盟するがん専門診療施設21施設の2004から2007年診断例約9万4千例のデータを基に算出されています。同様に、最新の全がん5年相対生存率は68.6%で、32施設の2010年から2012年診断例約15万例のデータを元に算出されています。
良性腫瘍・上皮内癌および病期0期を除き、年齢では15歳未満と95歳以上を除外した上で、自施設で初回治療を開始した例のみを集計対象としています。

報道関係からのお問い合わせ先

院内がん登録生存率集計報告について

国立研究開発法人 国立がん研究センター
がん対策情報センター がん登録センター 院内がん登録分析室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
TEL: 03-3542-2511(代表) 内線1600

その他全般について

国立研究開発法人 国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
TEL:03-3542-2511(代表) E-mail:ncc-admin●ncc.go (●を@に置き換えてください)

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