コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター

トップページ > 広報活動 > プレスリリース > HOXA9がMYCと協調して白血病を引き起こすメカニズムを解明

HOXA9がMYCと協調して白血病を引き起こすメカニズムを解明

2021年8月23日
公益財団法人 庄内地域産業振興センター
国立研究開発法人国立がん研究センター

研究成果のポイント

  • HOXA9タンパク質が、がん代謝を駆動するMYCタンパク質と協調して働き、白血病化を促進する仕組みを解明した。
  • HOXA9は複数の「血球細胞の生存を助ける遺伝子」の発現を活性化することで、活発に増殖するがん細胞の生存を促進する事を見出した。
  • HOXA9はすでに発現している遺伝子の活性化状態を維持する働きを持つ事を示した。
  • HOXA9の働きを妨げる新しい白血病治療薬の開発への道筋を示した。

公益財団法人庄内地域産業振興センター(理事長:皆川治、鶴岡市末広町)/国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室の横山明彦チームリーダーの研究グループは、悪性度が高い白血病で強く発現しているMYCとHOXA9の働きを解析し、HOXA9が「細胞の生存能力を高める遺伝子」の発現を高い状態で維持することで、白血病化を促進している事を明らかにした。がん細胞はMYCタンパク質を大量に産生する事で、細胞の代謝を増殖に適した状態に変化させる。一方でMYCによって引き起こされる過剰な増殖は細胞を死にやすくするため、MYCが働くだけでは白血病には至らない。そこで、MYCと協調的に働き白血病化を促進する「がん化の協調因子」を探索した結果、HOXA9が複数の生存促進遺伝子を活性化する事で、細胞の増殖能力と生存能力を高めている事を見出した。

本研究は、国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点と、広島大学、熊本大学、国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)研究所の共同研究であり、2021年7月26日(日本時間7月26日)に英国の科学雑誌「eLife」に掲載された。

急性白血病は、MLLなどの遺伝子発現を調節するタンパク質が、遺伝子変異の結果、異常に強く働く事で、血液細胞の無制限な増殖を誘発し発症する。MLL遺伝子に変異を持つ白血病は骨髄性とリンパ性両方の急性白血病の5~10%で見られる。MLL変異を持つタイプの白血病の生存率は約40%と極めて低く、新しい治療法の開発が強く望まれている。MLL変異体はこれまでにHOXA9遺伝子やMYC遺伝子を活性化する事で白血病を引き起こしていると考えられてきたが、これらの「MLLによって制御される遺伝子」がどのようなメカニズムで白血病を引き起こしているのかは不明だった。マウスを用いた動物実験では、HOXA9、MYC単独では白血病を引き起こさないが、HOXA9とMYC両方を発現させると白血病を引き起こすことが分かった。この結果は、HOXA9とMYCが何らかの協調作用を介してがん化を促進している事を示唆した。そこでこれらのタンパク質の機能を調べたところ、MYCは、細胞が増殖する上で必要な代謝プログラムを駆動している一方で、過剰な増殖が細胞を疲弊させ、死にやすい状態にしていることが分かった。一方でHOXA9は本来であれば分化の進行に伴って発現低下するようにプログラムされている「細胞の生存を助け、死ににくくする遺伝子」の活性化状態を維持する事によって、MYCによる細胞増殖の促進をアシストしていることが分かった。本来血球細胞は必要に応じて素早く増殖する能力を持っているが、その一つの理由は、HOXA9によって「血球細胞の生存を助ける遺伝子」が活性化されているためであるようだ。本研究によって、HOXA9は本来血球細胞に特徴的に発現している「細胞の生存を助ける遺伝子」の発現を異常に長く維持する事で白血病細胞の増殖を促進することが分かった。

0823.png
図1 MLL変異体によって活性化されるMYCとHOXA9が協調的に白血病を引き起こすメカニズム

今後の展望

本結果はHOXA9による遺伝子発現維持が白血病発症に重要な役割を果たしている事を示しており、この事は即ちHOXA9の働きを阻害する物質を作ることができれば、それが新たな白血病治療薬となる事を示唆している。今後さらにHOXA9の分子機能を明らかにすることでHOXA9に対する創薬開発を行い、新たな治療法の開発に取り組みたい。

発表論文

雑誌名

eLife

タイトル

HOXA9 promotes MYC-mediated leukemogenesis by maintaining gene expression for multiple anti-apoptotic pathways.

著者

横山明彦、宮本亮、金井昭教、奥田博史、小俣洋介、高橋慧、松井啓隆、稲葉俊哉

Miyamoto R, Kanai A, Okuda H, Komata Y, Takahashi S, Matsui H, Inaba T, *Yokoyama A. HOXA9 promotes MYC-mediated leukemogenesis by maintaining gene expression for multiple anti-apoptotic pathways. eLife 10:e64148 (2021) DOI: https://doi.org/10.7554/eLife.64148

研究費

がんメタボローム研究推進支援事業費補助金(山形県、鶴岡市)
科学研究費補助金 科学研究費助成事業 基盤B 「MLL白血病発症メカニズムの統一的理解」
日本白血病研究基金
大日本住友製薬:共同研究費

国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室について

国立がん研究センターのがんのメタボローム研究分野の研究拠点として、 山形県鶴岡市に2017年4月に設置。鶴岡連携研究拠点では、慶応義塾大学、慶應義塾大学先端生命科学研究所と連携して、メタボローム解析を活用した、がんの診断薬などの開発等に向けた研究を実施している。また企業との共同研究をより積極的に推進することにより、がん代謝の分子基盤に基づいた新しい診断・治療法開発を進めている。

報道関係からのお問い合せ先

国立研究開発法人国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点
がんメタボロミクス研究室 チームリーダー 横山明彦
〒997-0052  山形県鶴岡市覚岸寺字水上246番地2
鶴岡市先端研究産業支援センター内 がんメタボロミクス研究室
TEL: 0235-64-0980(事務室)、0235-64-1337(研究室)
FAX: 0235-64-0981  E-mail:ayokoyam●ncc-tmc.jp

国立研究開発法人国立がん研究センター 
企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
電話番号:04-7133-1111(代表)  FAX:04-7130-0195 
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

関連ファイル

Get Adobe Reader

PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。