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国立がん研究センター

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白血病を引き起こすタンパク質間相互作用の発見

2021年8月30日
公益財団法人 庄内地域産業振興センター
国立研究開発法人国立がん研究センター
国立大学法人 京都大学

研究成果のポイント

  • 白血病を引き起こすMLL変異タンパク質がHBO1タンパク質複合体と相互作用するメカニズムを解明した。
  • HBO1タンパク質複合体が、白血病を引き起こすHOXA9やMYC遺伝子の発現を促進する事を見出した。
  • HBO1タンパク質複合体はAEP複合体による転写活性化を促進する事を示した。
  • HBO1タンパク質複合体とMLLのタンパク質間相互作用を妨げる新規白血病治療薬の開発の可能性を示した。

概要

公益財団法人庄内地域産業振興センター(理事長:皆川治、鶴岡市末広町)/国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室の横山明彦チームリーダーの研究グループは、白血病を引き起こすMLL変異タンパク質が、がん化のキープレイヤーであるHOXA9やMYC遺伝子の発現を活性化するメカニズムを解析し、MLL変異タンパク質がTHD2ドメインという構造を介してHBO1タンパク質複合体と結合することで遺伝子発現を促進し、白血病を引き起こしていることを見出した。

本研究は、京都大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科(高折晃史教授)所属の高橋慧博士課程学生が、京都大学血液・腫瘍内科と国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点にて行った。また本研究は、国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点と、京都大学、広島大学、熊本大学、東京大学、国立がん研究センター研究所との共同研究であり、2021年8月25日(日本時間8月25日)に英国の科学雑誌「eLife」に掲載された。

背景

細胞の中の遺伝子を格納する構造体である染色体が、自然放射線など様々な要因で切断され、その切断点が誤って修復されると、正常とは異なる変異体タンパク質をコードする遺伝子が作られる。そのような変異体タンパク質の中には、正常タンパク質と異なる性質を獲得し、がんを引き起こすものがある。急性白血病では、MLLというタンパク質が、遺伝子変異の結果、過度に強く働くようになる事で白血病を引き起こす。MLL変異体タンパク質はHOXA9やMYCと呼ばれる「白血病を引き起こす遺伝子」を異常に強く活性化することで、血液細胞の無制限な増殖を誘発し、白血病の発症を導く。従って、MLL変異体タンパク質が遺伝子発現を活性化する仕組みを理解し、その仕組みを妨げるような物質を開発することが新たな白血病治療法の確立につながる。

研究手法と成果

我々はマウスの造血前駆細胞を使った白血病発症モデルを用いて、MLL変異体タンパク質が白血病を引き起こすために必要とするタンパク質構造を同定した。MLL変異体タンパクはこれまでに80種以上が報告されているが、そのうちの多くがTHD2という構造を介して白血病化能を発揮していることがわかった。そこで、そのTHD2という構造に結合する共作用タンパク質をアフィニティ精製法及び質量分析法を用いて探索したところ、HBO1タンパク質複合体がこの構造に特異的に結合する事を見出した。クロマチン免疫沈降法を用いた解析により、MLL変異体はHBO1複合体と結合する事で別の遺伝子発現調節因子であるAEP複合体を呼び込み、遺伝子発現を活性化する事が示された(図1)。実際にMLLタンパク質とHBO1複合体及びAEP複合体は様々な細胞株でMYCやHOXA9遺伝子の発現を調節する領域に集積している事が観察された。また、MLL変異体タンパク質とHBO1複合体の結合を仲介するTHD2構造を欠損させたり、HBO1複合体構成因子の遺伝子を欠失させると、細胞の無限増殖能が失われる事から、このTHD2とHBO1複合体のタンパク質間相互作用を阻害する化合物が新たな治療法の開発に繋がることが示された。

0830.png図1 MLL変異体がHBO1複合体と相互作用して白血病を引き起こすメカニズム
MLL-ELL変異体がまずHBO1複合体を遺伝子発現調節領域に呼び込み、次にAEP複合体を呼び込む。AEP複合体はSL1複合体と結合し、RNA Polymerase IIによる転写を活性化する。

今後の展望

本結果はMLL変異体タンパク質が白血病を引き起こす上でHBO1タンパク質複合体との相互作用を必要とすることを示しており、このMLL-HBO1相互作用を阻害する化合物はMLL関連白血病の新たな治療薬となると思われる。今後はそのような薬剤の開発研究を進めていきたい。

発表論文

雑誌名

eLife

タイトル

HBO1-MLL interaction promotes AF4/ENL/P-TEFb-mediated leukemogenesis.

著者

高橋慧、金井昭教、奥田博史、宮本亮、小俣洋介、川村猛、松井啓隆、稲葉俊哉、高折晃史、横山明彦

Takahashi S, Kanai A, Okuda H, Miyamoto R, Komata Y, Kawamura T, Matsui H, Inaba T, Takaori-Kondo A, Yokoyama A, HBO1-MLL interaction promotes AF4/ENL/P-TEFb-mediated leukemogenesis. eLife 10:e65872 (2021) DOI: https://doi.org/10.7554/eLife.65872

研究費

がんメタボローム研究推進支援事業費補助金(山形県、鶴岡市)
科学研究費補助金 科学研究費助成事業 基盤B 「MLL白血病発症メカニズムの統一的理解」
日本白血病研究基金
大日本住友製薬:共同研究費

報道関係からのお問い合せ先

国立研究開発法人国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点
がんメタボロミクス研究室 チームリーダー 横山明彦
〒997-0052  山形県鶴岡市覚岸寺字水上246番地2
鶴岡市先端研究産業支援センター内 がんメタボロミクス研究室
TEL: 0235-64-0980(事務室)、0235-64-1337(研究室)
FAX: 0235-64-0981  E-mail:ayokoyam●ncc-tmc.jp

国立研究開発法人国立がん研究センター 
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