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国立がん研究センター

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アジア圏のデータシェアリング環境を主導し、世界の研究開発のリードを目指す国際臨床試験データシェアリング事業「ARCADアジア」始動

2021年9月30日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 国立がん研究センター東病院は製薬企業やアカデミア臨床研究グループの協力のもと、アジアを中心として過去に行われた治験・臨床試験の中で収集された正確かつ高品質な臨床・検体情報を統合・利活用するデータシェアリング事業「ARCADアジア」を立ち上げました。
  • 本事業により、単一の研究における解析では得られないエビデンスの創出が可能となり、医薬品の研究開発活動のコスト削減・効率化およびより良い医療の提供につながることが期待されます。
  •  今後、アジアに多いがんの種類を中心にデータシェアリング環境を整え、将来的には欧米のデータベースとの統合も視野に入れ、世界的なプロジェクトへの発展を目指します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市、以下東病院)は、アジアを中心として過去に行われた治験・臨床試験のデータを収集・統合し、医薬品の研究開発等への利活用を行うことを目的としたデータシェアリング事業「ARCADアジア(Aide et Recherche en Cancérologie Digestive Asia:アルカドアジア)」(事業代表者:東病院長 大津 敦)を開始しました。

近年、欧米では治験・臨床試験データの利活用の重要性が指摘され、がん領域を中心にデータシェアリング体制の構築が行われていますが、日本では未だ着手がなされていない状況です。ARCADアジアでは、アジアを中心に行われた臨床試験を患者個別データ(Individual Patient Data:以下、「IPD」)レベルで統合することで、アジアの臨床試験データを自律的に所管し、自由度の高いデータシェアリング環境の構築を目指します。

製薬企業やアカデミア臨床研究グループの協力のもと、それぞれが保有する過去の治験・臨床試験データを東病院内に設置するデータセンター(ARCADアジアデータセンター)に収集します。この正確かつ高品質なデータを用いて解析、利活用を行うことで、研究データ取得にかかる時間を削減するとともに、単一の研究では実施困難な解析が可能となり、新たなエビデンスの創出、およびレギュラトリーサイエンス*1を含む幅広い研究の推進が期待されます。さらに、医薬品の研究開発活動の効率化や病態のさらなる理解を実現し、より良い医療をより早く、患者さんに届けることを可能とします。

本事業では大腸がんから開始し、次いでアジアに多いがんの種類を中心に拡大を進めます。東病院内にアカデミア主導のデータシェアリング環境を構築することで、日本がアジア諸国とも協調のもと、治験・臨床試験のデータを利活用し、世界の治療開発をリードしていくことを目指して進めてまいります。

背景

治験・臨床試験で得られたデータをシェアリングする取り組みは、欧米では既に開始されています。特に消化器がん領域においては、2000年代後半より、仏国ARCAD財団および米国Mayo Clinicの共同運営による進行再発大腸がんの臨床試験データの統合データベース構築(ARCADデータベースプロジェクト*2)が開始され、現在では第3相企業治験を含む49研究41,607例からなる世界的データベースに発展しています。ARCADデータベースのような大規模なデータベースを用いた解析は、代替エンドポイント*3の開発や新たな病期分類の構築(本質的な予後因子の再構築)、高齢者や若年患者など希少な対象に対する検討等を可能とし、産(製薬企業)、官(アメリカ食品医薬品局(FDA)・欧州医薬品庁(EMA))、学(アカデミア)からの高い評価を得ています。

一方日本では、多様なステークホルダーの連携・協力を促していくための枠組みが不在であることなどから、現在までデータシェアリング環境が整備されていませんでしたが、2007年~2014年にかけて実施された国際共同ランダム化研究IDEA*4(大腸がん目標症例数 計12,000例)に吉野 孝之(東病院 消化管内科長)が参加し、最終的に全症例数の10%以上を日本から登録しました。また、2018年に厚生労働省「臨床効果データベース整備事業(代表者:前原喜彦 九州中央病院院長)」に採択され、4本の大腸がん術後補助化学療法の無作為化比較試験*5(1986~2009年に実施した切除可能結腸癌(Stage2-3,計6,080例))を米国Mayo ClinicのACCENTデータベースと統合したことで、アジア圏の臨床試験データの豊富な量と質の高さが世界において認識されるようになりました。

今回その実績を踏まえたARCADからの要請もあり、アジア圏の臨床試験データのシェアリング環境となるARCADアジアを東病院に構築するに至りました。

事業概要

東病院内に「ARCADアジアデータセンター」を設置し、国立がん研究センターと各製薬企業等との間でデータ提供に関する共同研究契約を結び、コンソーシアム内におけるデータシェアリング体制を構築します。対象とする治験・臨床試験データは、製薬企業やアカデミア研究グループから契約下で提供をうけ、データセンターにて統合データベースを構築します。コンソーシアム参加者やアカデミアより統合データベースの利活用の希望がある際は、医学的な重要性・妥当性等を踏まえ、アカデミアグループにて十分検討の上、ARCADアジアデータセンターにて解析を行い、その解析結果を別途契約締結のうえ提供します。

本プロジェクトでは、まず切除不能進行再発(ステージ4)大腸がんの治験・臨床試験データを対象にシェアリングを開始します。ステージ4は製薬企業が医薬品の研究開発を優先的に行う領域のため、新薬開発についても利活用が期待できます。特に近年、ステージ4におけるアジア圏内の臨床開発が多数行われていることから、日本が先駆けて基盤構築に取り組むことで、アジアのデータシェアリング環境を主導することを目指します。

ARCAD-Asia.png

今後の展望

アジア圏のデータシェアリング環境を構築し、大腸がんを中心とした既存の治験・臨床試験および今後実施される臨床試験を統合したデータベースを用いた各種解析により、レギュラトリーサイエンス上の課題を体系的に評価していきます。また、その結果に基づいて、臨床試験および薬事承認プロセスにおけるエンドポイントに関する提言を行うことで、医薬品の研究開発のコスト削減・効率化、ひいては患者さんのベネフィットの最大化につなげていきます。さらに、本プロジェクトの基盤を生かし、将来的には欧米のデータベースとも統合し、世界的ながん臨床試験データベースの構築と豊富なデータを用いた各種解析による世界規模でのエビデンス創出と治療開発を促進します。

研究費

本プロジェクトは、国立がん研究センター研究開発費及び4社の製薬企業(2021年9月現在)との共同研究費により実施します。

国立がん研究センター研究開発費 

「オープンサイエンス化に向けたデータシェアリング体制の構築とデータサイエンス人材の育成に関する基盤的研究」(TR・早期開発分野)
研究期間:2021年4月~2023年3月(3年間)
研究代表者:坂東 英明(東病院 データサイエンス部/消化管内科)

参加企業(2021年9月現在、50音順)

小野薬品工業株式会社、大鵬薬品工業株式会社、武田薬品工業株式会社、中外製薬株式会社

用語解説

*1 レギュラトリーサイエンス

科学技術の成果を人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整するための科学。

*2 ARCAD(Aide et Recherche en Cancérologie Digestive)データベースプロジェクト

2006年に非営利目的で設立された仏国の公益財団ARCAD(The ARCAD foundation)が実施するデータベースプロジェクト。Aimery de Gramont教授(仏国ARCAD財団)、Qian Shi教授(米国Mayo Clinic)による共同運営として2000年代後半より開始され、現在では、4万例を超える大腸がん臨床試験データの統合データベースを構築している。
公益財団ARCAD ホームページ https://www.fondationarcad.org/en

*3 代替エンドポイント

エンドポイントとは、臨床試験における医薬品等の有効性や安全性をはかる評価指標であり、代替エンドポイントとは、客観的な評価や臨床試験の期間内で評価するのが難しい場合、その代わりとして用いられるエンドポイントのこと。代替エンドポイントを設定することで、有効性や安全性を短期間に、また簡便に評価できるようになることが期待される。

*4 国際共同ランダム化研究IDEA :International Duration Evaluation of Adjuvant chemotherapy

結腸がんに対する術後補助化学療法としてのFOLFOX療法またはCAPOX療法の投与期間について、3ヵ月間と6ヵ月間を比較した6つの前向き第3相試験[SCOT試験(英国、デンマーク、スペイン、オーストラリア、スウェーデン、ニュージーランド)、TOSCA試験(イタリア)、CALGB/SWOG C80702試験(米国、カナダ)、IDEA France試験(フランス)、ACHIEVE試験(日本)、HORG試験(ギリシャ)]の統合解析研究。

*5 術後補助化学療法の無作為化比較試験

再発を減らすために、手術後に抗がん剤を使用する治療を術後補助化学療法といい、無作為化比較試験は、研究の対象者を2つ以上のグループにランダムに分け(ランダム化)、治療法などの効果を検証すること。

問い合わせ先

患者さん・医療関係者・企業からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 ARCADアジア事務局
電話番号:04-7133-1111(代表) Eメール:arcadasia_office●east.ncc.go.jp

取材・報道関係からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
電話番号:04-7133-1111(代表) FAX:04-7130-0195 Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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