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国立がん研究センター

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FGFR2融合遺伝子陽性胆道がんを含む胆道がんの病態解明のためのアジア多施設共同前向き研究(CHOICE study)を開始アジア・太平洋地域での希少がん研究開発を進めるプロジェクトMASTER KEY Asiaでの初の大規模研究

2022年12月8日
国立研究開発法人国立がん研究センター
In English

発表のポイント

  • FGFR2融合遺伝子(注1)陽性胆道がんの病態解明を目指し、アジア各国で国際共同研究を開始します。
  • 胆道がんは希少がんに分類されていますがアジア・太平洋地域では罹患率の高いがんです。胆道がん患者さんのデータを、日本国内だけではなくアジアの広い範囲から収集し、病態解明を目指します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:島田和明)は、FGFR2融合遺伝子陽性胆道がんの病態解明を目指し、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、台湾を含めたアジア各国で国際共同研究を開始します。

本研究では、患者さんの組織検体を用いた遺伝子プロファイリング検査で網羅的に遺伝子異常を調べます。また、FISH法(注2)によりFGFR2融合遺伝子の発現も調べます。さらに、それらの遺伝子情報と治療に関する情報や予後などの臨床情報とを合わせて解析し、病態解明が進むことで治療法の創出に寄与します。特に、アジアでのFGFR阻害薬の普及に貢献することが期待されます。

背景

胆道がんは比較的アジアに多く、さらに治療が困難なため予後が不良ながん種に分類されています。しかし、近年いくつかの新しい標的分子が発見され、本疾患治療の改善の糸口が見えてきました。その中の一つであるFGFR2融合遺伝子を標的とした治療薬の開発が現在欧米や日本を中心に進んでいます。しかし、元来アジア太平洋に多いがん種であるにもかかわらず、この地域でのデータが不十分であり、未だどのような遺伝的背景をもった胆道がん患者さんが多いか不明な点が多いため、さらなる研究が必要です。

MASTER KEY Asiaのロゴ

本研究は、アジア地域で実施している希少がん研究開発およびゲノム医療を推進する中央病院のプロジェクト「Marker Assisted Selective ThErapy in Rare cancers: Knowledge database Establishing registry, Asia; MASTER KEY Asia」(注3)において、転移性および/または再発の病変を有する胆道がん患者さんを対象にFGFR2融合遺伝子をはじめとする遺伝子異常を網羅的に調べるアジア多施設共同前向き研究「Molecular detection and clinicopathological characteristics of advanced/recurrent CHOlangiocarcinoma harboring FGFR2 rearrangements In Asian CountriEs: CHOICE(チョイス)study」として実施されます。

MASTER KEY Asiaは2017年より日本国内で実施している希少がんの研究開発およびゲノム医療を推進する産学共同プロジェクト「MASTER KEY Project」(注4)をアジア地域へ拡大した国際共同研究です。希少がん患者さんの遺伝子情報や診療・予後情報などを網羅的に収集し、研究の基礎データとなる大規模なデータベースを構築すること、およびがん種を限定せず特定のバイオマーカー(遺伝子異常・蛋白発現等)を有する患者さんを対象に企業治験や医師主導治験を実施することの二つの大きな取り組みにより構成されています。

CHOICE studyは希少がんに分類される胆道がん患者さんのデータを、日本国内だけではなくアジアの広い範囲から収集し、病態の解明に寄与いたします。本研究が日本を含むアジア地域で同疾患に悩まされる患者さんに、治療改善の希望を与える研究になると考えています。

研究方法

本研究は、アジアに多いと言われている胆道がんのうち肝内胆管がんおよび肝門部領域胆管がん患者さん150名を対象に、腫瘍組織のDNAおよびRNAを網羅的に解析します。参加協力施設はMASTER KEY Asiaの関連施設で、遺伝子解析には700以上のがん関連遺伝子異常が検出可能な、がん遺伝子パネル検査(TOP2パネル)(注5)を用います。また、腫瘍組織を用いたFISH法により、FGFR2融合遺伝子という特定の遺伝子を検出する検査も並行して実施し、がん遺伝子パネル検査による解析結果との一致度も評価します。さらに、アジアにおける胆道がんの発生が肝吸虫(注6)による感染症に関連するといわれていることから、寄生虫の罹患歴に関する調査も予定しています。

遺伝子解析の結果と患者さんの臨床情報を統合解析し、FGFR2融合遺伝子の頻度の特定や分子標的薬を用いた薬剤治療開発の促進を目指します。

研究方法の図

図 研究方法

本研究で得られた結果は、各施設の医師へ返却されます。FGFR2融合遺伝子を認められた患者さんへのFGFR阻害薬投与に関する試験は予定しておりませんが、各国の承認状況に応じた投薬を推奨し、患者さんの治療へ役立てられることが考えられます。

本研究の影響

本研究では、FGFR2融合遺伝子の特定のみではなく、TOP2パネルを用いた遺伝子検査が行われるため、胆道がん(肝内胆管がんおよび肝門部領域胆管がん)における様々な遺伝子異常のプロファイルを検討することが可能となります。この研究結果が、新規薬剤開発のデータや既存の分子標的薬における市場の拡大につながる可能性があります。そして将来的に、同疾患で悩む日本やアジアの患者さんの治療の選択肢が増えることを期待しています。

研究プロジェクトメンバー

国立がん研究センター中央病院

肝胆膵内科 奥坂 拓志(研究代表者)、丸木 雄太
腫瘍内科 大熊 ひとみ
病理診断科 谷田部 恭
国際開発部門 中村 健一、溝口 千春
臨床研究支援部門 研究企画推進部 国際研究支援室 佐々木 哲哉

研究費

本研究は、研究費として、「日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験推進研究事業「アジアがん臨床試験ネットワーク構築に関する事業」補助事業代表者:中央病院 病院長 島田和明」(注7)の一部を研究運営に使用しています。また、エーザイ株式会社からの研究資金の提供を受けています。

用語解説

((注1)FGFR2融合遺伝子

FGFRは、線維芽細胞増殖因子受容体と呼ばれ、細胞膜に存在するタンパクです。FGFR遺伝子異常には、融合、変異、増幅等があり、遺伝子異常により機能が活性化されると、がん細胞の増殖、生存、遊走、腫瘍血管新生、薬剤耐性などに結び付くと考えられています。FGFR遺伝子異常は、肺がん、乳がん、子宮体がん、胃がん、膀胱がん、胆管がん、脳腫瘍等の様々な腫瘍で報告されています。

(注2)FISH法(Fluorescence in situ hybridization法)

蛍光物質をつけたプローブ(標的遺伝子と相補的な塩基配列を有する合成遺伝子)を標的遺伝子と結合させ、蛍光顕微鏡下で可視化する手法です。

(注3) MASTER KEY Asia

MASTER KEY Asiaのロゴ2

患者数が少なく、治療開発が困難とされる、希少がんを対象に、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムのアジア5か国10施設と連携した国際共同前向きレジストリ研究です。

MASTER KEY Asia

以下のプレスリリースもご参考ください。

2021年10月20日 国がんプレスリリース
希少がんの治療開発をアジア・太平洋地域5か国と連携し推進「MASTER KEY Asia」開始

(注4) MASTER KEY Project

MASTER KEY Projectのロゴ

希少がんは一つ一つの患者数が少なくまとまった診療データが存在しないことから、研究開発や臨床試験の実施を困難にしています。MASTER KEY Projectは、この希少がんにおける課題を解決するために、国立がん研究センターと製薬企業が共同で取り組み、希少がんにおけるゲノム医療の推進を目指す、世界でも初めての試みです。

MASTER KEY Project

以下のプレスリリースもご参考ください。

2017年7月31日 国がんプレスリリース
希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進「MASTER KEYプロジェクト」開始

(注5)TOP2パネル

700以上の遺伝子異常を検出できる新しいがん遺伝子パネル検査の名称です。

(注6)肝吸虫

アジアを中心に生息する淡水魚に寄生する寄生虫。加熱不十分な淡水魚などを摂取することでヒトにも感染します。以前よりタイ肝吸虫は胆管がん発症との関連が疫学的に証明されています。

(注7) アジアがん臨床試験ネットワーク事業(ATLAS project)

ATLAS projectのロゴ

2020年9月から政府およびAMEDの支援を受け開始されたプロジェクトで、正式名称を「アジアがん臨床試験ネットワーク構築に関する事業(Asia Clinical Trials Network for Cancers Project: ATLAS project) 」といいます。本プロジェクトはソフト面での教育研修等の支援、ハード面での治験実施基盤の整備、そして複数の国際共同研究の実施を並行して行うことをミッションとし、さらに各拠点施設のリエゾンオフィサーとのface-to-faceのコミュニケーションを実現させるために、国立がん研究センターアジア連携推進タイ事務所(Asian Partnerships Office)を設置しました。本事業で整備するアジアがん臨床試験ネットワークの枠組みを活用して、アジア地域で常時 5試験以上の国際共同試験を恒常的に実施する体制構築を目指し、製薬企業、 CRO、患者団体といったstakeholdersの参画を世界的に呼びかけています。

ATLASプロジェクトホームページ(外部サイトにリンクします)

問い合わせ

研究に関する問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院
臨床研究支援部門 研究企画推進部 国際研究支援室 佐々木 哲哉
肝胆膵内科 丸木雄太 (ymaruki@ncc.go.jp)
電話番号:03-3542-2511(代表)
メールアドレス:ncch2007_office●ml.res.ncc.go.jp(●を@に置き換えください)

広報窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
メールアドレス:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えください)

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