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ピギーバックトランスポゾン法を用いた、 EPHB4抗原発現悪性固形腫瘍に関する治験開始のお知らせ

2025年5月12日
国立大学法人信州大学
国立研究開発法人国立がん研究センター
京都府公立大学法人京都府立医科大学

ポイント

  • ウイルスを使わない遺伝子改変技術である「ピギーバックトランスポゾン法」(注1)を用いて、多くのがんに高発現するEPHB4受容体(注2)を標的とする遺伝子改変T細胞療法(注3)(EPHB4-CAR-T細胞)の開発を進めてきましたが、その安全性と有効性を評価する医師主導治験を開始し、最初の患者さんへの投与が終了しました。
  • EPHB4-CAR-T細胞は、信州大学、京都府立医科大学の共同で開発され、治験製品の製造は、信州大学医学部附属病院先端細胞治療センター内の細胞加工施設で行い、医師主導治験は国立がん研究センター東病院で実施しています。

1. 概要

信州大学 学術研究・産学官連携推進機構遺伝子細胞治療開発センター、京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学の柳生茂希らの研究グループは、EPHB4抗原発現悪性固形腫瘍に対する遺伝子改変T細胞療法(開発名:AP8901)を開発し、国立研究開発法人国立がん研究センター東病院(以下、国立がん研究センター東病院)でその安全性、有効性を評価する第1相医師主導治験を実施しています。

遺伝子改変T細胞療法(CAR-T細胞)は、一部の血液腫瘍に対して治療効果が示され、国内でも承認され保険診療で用いられるようになりました。一方で、固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の治療効果は乏しく、全世界で固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の治療開発が進められています。

研究グループは、多くの固形腫瘍に発現しているEPHB4受容体に着目し、EPHB4を発現する固形腫瘍を特異的に殺傷するCAR-T細胞を開発しました。さらに、ピギーバックトランスポゾン法を用いてEPHB4-CAR-T細胞を作製することで、固形腫瘍に対して非臨床研究において有意に持続的で高い抗腫瘍効果を示すことを明らかにしてきました。

さらに、EPHB4受容体発現のユーイング肉腫又は固形がんを対象とした悪性固形腫瘍に対する医師主導治験の実施に向けて、治験製品の製造方法を開発し、非臨床安全性試験を実施してきました。

このたび、国立がん研究センター東病院で治験を開始し、最初の患者さんへの投与が終了しました。

2. 治験計画の概要

1)治験の名称

EPHB4受容体発現のユーイング肉腫又は固形がんを対象とした非ウイルス遺伝子改変CAR-T細胞療法の第I相臨床試験(CARTiEr試験)

2)治験の目的

転移・再発に対して標準治療がない又は不応若しくは不耐のEPHB4受容体を発現するユーイング肉腫又は固形がんを有する患者に対してEPHB4-CAR-T細胞(AP8901)を投与した際の安全性と有効性を探索的に検討する。

3)治験に使用する細胞

患者より採取された末梢血単核球を原料とした、EPHB4抗原を発現する細胞を特異的に認識、殺傷するCAR-T細胞(AP8901)。
患者由来の末梢血単核球は、国立がん研究センター東病院で採取され、信州大学附属病院先端細胞治療センター内の細胞加工施設に輸送された後に、これを原材料としてAP8901が製造される。

4)対象疾患

転移・再発に対して標準治療がない又は不応若しくは不耐のEPHB4受容体を発現するユーイング肉腫又は固形がんを有する患者

5)細胞移植について

AP8901を以下の3つの用量レベルで静脈内投与する。用量レベル1群では、低用量のCAR陽性T細胞を単回投与し、用量依存性の毒性が見られないことが確認されれば、用量レベル2群に移行して高用量のCAR陽性T細胞を投与する。
用量レベル1群で用量依存性の毒性が出現した場合には、用量レベル-1群に移行し、さらに低用量のCAR陽性T細胞を投与する。
CAR-T細胞投与を行う際には、投与前にリンパ球除去療法として、フルダラビン、シクロフォスファミドによる前処置を実施する。

6)実施予定人数

合計6~18例

7)治験実施病院

国立がん研究センター東病院

3. 研究開発体制

国立大学法人信州大学

 学術研究・産学官連携推進機構
  遺伝子細胞治療開発センター     柳生 茂希

 医学部 小児医学             中沢 洋三
                    田中 美幸
                    長谷川 藍子

 -治験製品開発
 -治験製品製造法開発
 -品質規格試験法の開発・実施
 -特性解析試験法開発・実施
 -非臨床安全性試験の実施

国立研究開発法人国立がん研究センター

治験調整医師(治験実施医療機関)
 国立がん研究センター東病院
  先端医療科/総合内科/腫瘍内科   内藤 陽一(代表)
  先端医療科                                 土井 俊彦
  血液腫瘍科                                 湯田 淳一朗
  先端医療科/腫瘍内科                    船坂 知華子
  臨床研究支援部門                        佐藤 暁洋

 国立がん研究センター先端医療開発センター
  免疫療法開発分野                        中面 哲也

 -医師主導治験計画作成
 -医師主導治験実施
 -付随研究実施

京都府公立大学法人京都府立医科大学

 大学院医学研究科 小児科学      家原 知子

 -治験製品開発

信州大学医学部附属病院

 先端細胞治療センター         柳沢 龍

 -治験製品製造

株式会社A-SEEDS

 治験製品製造法開発
 -治験製品製造支援
 -品質規格の設定、バリデーション
 -品質規格試験実施
 -特性解析試験実施

4. 本治験への支援

本研究は、下記機関より支援を受けて実施されています。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
革新的がん医療実用化研究事業
「EPHB4 受容体陽性悪性軟部腫瘍を標的とした非ウイルス遺伝子改変キメラ抗原受容体T 細胞療法の非臨床試験」(課題管理番号:18ck0106413h0001、21ck0106659h0001)(研究代表者名:柳生 茂希)
「EPHB4受容体高発現悪性固形腫瘍を対象とした非ウイルス遺伝子改変CAR-T細胞療法の第一相医師主導治験」(課題管理番号:24ck0106921h0001)(研究代表者名:柳生 茂希)

5. 用語説明

注1:ピギーバックトランスポゾン法

ピギーバック転移酵素というたんぱくを用いた遺伝子改変法。ピギーバック転移酵素は、目的の遺伝子をヒトゲノムにランダムに組み込むことが可能であり、この方法を応用して、CAR遺伝子をT細胞ゲノムに組み込むことで、CAR-T細胞が作製される。

注2:EPHB4受容体

EPHファミリーたんぱくの一種であり、ヒトでは発生段階の血管を中心に発現しているが、成熟組織での発現は抑制されていることが知られている。肝がん、胆のうがん、膵がん、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、悪性骨軟部腫瘍など、多くの固形がんで高発現し、悪性化にかかわっている。

注3:遺伝子改変T細胞療法

患者自身の血液から採取した免疫細胞「T細胞」に、がんを認識する「CAR」を遺伝子導入技術を用いて組み込み、培養したうえで、それを薬として身体に投与する免疫療法のひとつ。

6. 問い合わせ先

研究に関すること

信州大学 学術研究・産学官連携推進機構
京都府立医科大学大学院医学研究科 小児科学
柳生茂希
TEL:0263-31-5882
E-mail:shigeky●shinshu-u.ac.jp

治験に関すること(患者さん向け)

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 先端医療科
内藤陽一
TEL:04-7133-1111(代表)
E-mail:ynaito●east.ncc.go.jp

治験に関すること(医療関係者向け)

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院
臨床研究支援部門 臨床研究推進部 治験調整事務局
TEL: 04-7133-1111(代表)
E-mail:cartier_core●east.ncc.go.jp

報道に関すること

国立大学法人信州大学 総務部総務課広報室
TEL:0263-37-3056
E-mail:shinhp●shinshu-u.ac.jp

京都府立医科大学 企画課企画広報係
TEL:075-251-5804
E-mail:kouhou●koto.kpu-m.ac.jp

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
TEL: 04-7133-1111(代表)  
E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp

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