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乳腺悪性葉状腫瘍(にゅうせんあくせいようじょうしゅよう)

更新日 : 2021年4月8日

公開日:2020年12月17日

乳腺悪性葉状腫瘍とは

一般的な「乳がん」は上皮性腫瘍に分類され、上皮細胞ががん化することで発症します。一方で「葉状腫瘍」とは、上皮細胞と、その下にある結合織が混合して腫瘍化したものです。葉状腫瘍は良性の線維腺腫に類似したものから高異型度の肉腫に近いものまで幅広く、組織学的には良性、境界病変、悪性の3つに分類され、悪性に分類されたものを悪性葉状腫瘍といいます。

葉状腫瘍の頻度は、乳房にできる腫瘍全体の0.3-0.9%とされ、さらに悪性葉状腫瘍は葉状腫瘍の16-30%、女性100万人に2.1人といわれています。好発する年齢は35-55歳で、40歳代に最も多くみられます。ただし、良性葉状腫瘍の一部において局所再発することがあり、再発時には悪性転化することがあるため注意が必要です。遠隔転移をきたすのは悪性葉状腫瘍ですが、その場合、上皮成分を欠いた、肉腫のような組織像を呈することが多いです。

症状

乳房に複数の無痛性のしこりがあり、境界が明瞭で、このしこりが急に大きくなる場合は悪性葉状腫瘍を疑います。ときに皮膚が薄くなり、腫瘤が露出し、潰瘍が形成されることがあります。見た目や触った感じは動きのある円形、卵円形のしこりで、大きさ(腫瘍径)は5cmを超えることも珍しくありません。

検査と診断

マンモグラフィ検査では高濃度の円形腫瘤としてみられ、超音波検査では低エコー、境界明瞭な腫瘤で散在性に嚢胞成分がみられます。その他MRI検査なども葉状腫瘍の診断には有用ですが、これら画像検査だけでは良性、悪性の判断はつけることができません。そこでより詳しく調べるために、針生検など組織学的検査を行います。ただし、線維腺腫という良性腫瘍との鑑別が困難なことも多く、急に大きくなるしこりでは葉状腫瘍の可能性を考え、摘出手術後に診断が確定することもあります。

20201217_乳腺悪性葉状腫瘍_造影MRI検査画像

造影MRI検査

治療

葉状腫瘍の治療の基本は外科的切除です。乳房部分切除か乳房切除が推奨されています。腋窩リンパ節郭清については、葉状腫瘍はリンパ節転移の頻度が低いことから、推奨されていません。一般的な乳がんにおいては手術後の補助療法として放射線治療や化学療法(抗がん剤治療など)が行われることもありますが、葉状腫瘍は患者数が少ないことから補助療法の有用性を検証した臨床試験はほとんど行われておらず、有用性については明らかになっていません。

局所再発した場合は再度外科的切除を行いますが、全身に転移を認めた場合は、緩和ケアとともに抗がん剤治療を検討します。一般的な乳がんとは異なり、軟部肉腫に準じた抗がん剤治療を行います。具体的にはドキソルビシン、イホスファミドなどの抗がん剤が候補になります。 

一般的な乳がんでは治療法の1つとしてホルモン療法が行われますが、葉状腫瘍はホルモン療法に反応しないため、ホルモン受容体の有無によらず、その使用は推奨されていません。

予後

良性、境界型の葉状腫瘍の多くは手術のみで治癒やしますが、悪性葉状腫瘍は再発する可能性があり、局所再発率は10-40%です。診断後5年、10年、15年の生存率はそれぞれ91%、89%、89%と報告されております。

 

執筆協力者

米盛 勧(よねもり かん)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 米盛 勧(よねもり かん)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科 先端医療科
下井 辰徳(しもい たつのり)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 下井 辰徳(しもい たつのり)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科
須藤 一起(すどう かずき)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 須藤 一起(すどう かずき)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科 先端医療科
小島 勇貴(こじま ゆうき)
  • 小島 勇貴(こじま ゆうき)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科 
新垣 誉子(あらがき もとこ)
  • 新垣 誉子(あらがき もとこ)
  • 国立がん研究センター中央病院 レジデント

 
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