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胸部のSMARCA4 欠損腫瘍(SMARCA4-deficient thoracic tumor)

更新日 : 2021年4月9日

公開日:2020年5月18日

胸部のSMARCA4 欠損腫瘍について

胸部のSMARCA4 欠損腫瘍(SMARCA4-deficient thoracic tumor)は、2015年に報告されたばかりの新しい疾患概念です。

胸部のSMARCA4 欠損腫瘍について

近年のゲノム解析の進歩により、がんに関わる多くの遺伝子異常が分かりつつあります。SMARCA4遺伝子もがんに関わる遺伝子の一つです。このSMARCA4遺伝子は、BRG1というタンパクを調節しており、さまざまな遺伝子の発現・複製・分離・修復などに関わっています。SMARCA4遺伝子が変異・欠損すると、細胞が適切な機能を維持することが出来なくなり発がんに至ると考えられています。 SMARCA4遺伝子の異常については、様々な臓器から発生するがんにおいて報告されており、がん組織を顕微鏡で観察すると未分化がんや肉腫に似た形をしていることが多いとされます。特に胸部に発生するSMARCA4 欠損腫瘍については、(1)一般的な肺がんの組織の形をなしているがSMARCA4に異常を有するものと、(2)肉腫様の組織の形をなしているものが存在し、同じ胸部のSMARCA4遺伝子欠損腫瘍でも様々な種類の病理組織を含んでいます。(1)の肺がんは、SMARCA4遺伝子異常がない他の非小細胞肺がんと比較しても治療成績が悪いことが分かっていますが、今回は(2)の疾患を特にご説明いたします。

診断について

胸部のSMARCA4欠損腫瘍は、平均年齢40-50歳と比較的若年の男性、喫煙歴のある方に多く、肺門や縦隔に高頻度に出現する腫瘍と言われています。肺門や縦隔に発生する腫瘍には、胚細胞腫瘍や胸腺腫や胸腺がん、悪性リンパ腫などがあります。これらの腫瘍とSMARCA4欠損腫瘍を区別するには血液検査や画像検査だけでは判断することが困難であるため、直接組織を採取する生検検査が正確な診断には必要となります。採取した組織の病理組織検査(免疫染色・遺伝子解析を含む)を行うことで診断します。

治療について

胸部のSMARCA4欠損腫瘍は、肺がんや胸部に発生した肉腫に準じて治療されてきました。
外科手術で完全切除が可能な病状であれば、手術で取りきることを優先します。
一方で、診断時にほかの臓器に転移をしていることが多い腫瘍でもあります。こういった、全身へ病気の広がり(転移)を認める場合は、多くの場合、抗がん剤治療を行ったり、緩和ケアを行いながら療養します。特に胸部のSMARCA4欠損腫瘍については、非小細胞肺がんに準じて治療された報告が多く存在しますが、従来の細胞障害性抗がん剤による治療効果は乏しいと報告されています。一方で、肺がんに用いられているような免疫チェックポイント阻害薬が、胸部発生のSMARCA4欠損腫瘍に対しても有効であったという報告があり、最近はその治療効果が注目されています。

執筆協力者

米盛 勧(よねもり かん)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 米盛 勧(よねもり かん)

  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科 先端医療科

 

下井 辰徳(しもい たつのり)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 下井 辰徳(しもい たつのり)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科

 

須藤 一起(すどう かずき)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 須藤 一起(すどう かずき)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科 先端医療科

 

小島 勇貴(こじま ゆうき)
  • 小島 勇貴(こじま ゆうき)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 腫瘍内科  

 

新垣 誉子(あらがき もとこ)
  • 新垣 誉子(あらがき もとこ)
  • 国立がん研究センター中央病院 レジデント

 

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