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消化管内視鏡科

1.消化管内視鏡科について
2.診療について
3.研究について

1.消化管内視鏡科について

 消化管内視鏡科長 (先端医療開発センター 内視鏡機器開発分野長 併任)
金子 和弘 (かねこ かずひろ)   金子 和弘 (かねこ かずひろ) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
患者さんに最善の医療を提供しつつ、新たな診断・治療を発展させるために、常に機器開発に着手しています。
 医長
矢野 友規 (やの とものり)   矢野 友規 (やの とものり) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
咽頭、食道、胃の内視鏡治療が専門です。内視鏡を使って、あなたのためにできることを考えて治療します。
 医長
池松 弘朗 (いけまつ ひろあき)   池松 弘朗 (いけまつ ひろあき) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
大腸内視鏡検査・治療を中心に診療しております。病状や検査・治療についてわからないこと不安なことがございましたら、遠慮されず何なりとお尋ねください。
 医員
大野 康寛 (おおの やすひろ)   大野 康寛 (おおの やすひろ) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
苦痛が少なく、精度の高い、胃・大腸内視鏡検査および内視鏡治療を行っています。内視鏡検査・治療で困っていることがあれば、ご相談ください。
 医員
堀 圭介 (ほり けいすけ)   堀 圭介 (ほり けいすけ) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本食道学会 食道科認定医
消化管領域を中心として精度の高い内視鏡的診断、及び治療を行っております。
内視鏡検査、治療などに関してご不明な点などいつでも遠慮無くご相談ください。

食道、頭頸部(主に咽頭・喉頭)、胃、大腸がんは、がんの進行の程度によって臨床病期で分類されます。臓器によって多少異なりますが、4段階に分かれており、ほとんどの患者さんの治療方針は臨床病期によって決まります。ごく早期のがんであれば内視鏡治療を行い、進行がんであっても他臓器に転移がなければ手術や化学放射線療法を行い、もし肝臓や肺、骨、腹膜といった他臓器に転移のみられるがんであれば、化学療法を行います。がんが発生してくるとき少しでも早い段階で見つけられないか、がんの発生はなぜおこるのか、少しでも体への負担の少ない治療はないか、といった目的をもって各医師が診療に望んでおります。できるだけ協力し合うことにより、無駄のない、患者さんに負担のかからない検査の組み立てや、治療の実施を目指しています。

当科が専門とする分野
・頭頸部がんの早期診断、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
・食道がんの早期診断、EMR、ESD、がん細胞に親和性の高い光感受性薬剤を使ったレーザー治療(photodynamic therapy; PDT)、食道拡張術
・胃がんの早期診断、EMR、ESD、胃瘻造設術
・大腸腺腫、大腸がんに対する拡大内視鏡を使用した診断およびEMR、ESD
・十二指腸、小腸、肛門管がんに対する内視鏡診断および治療

我々のグループでは、頭頸部、食道、胃、大腸といった消化管にがんをもつ患者さんの立場を重視した医療および患者さん中心の総合的なチーム診療をもとに、科学的根拠に基づく診療を目標としています。つまり、十分な説明(インフォームド・コンセント)によって、患者さんご自身がご自分の病気をよく理解されたうえで治療を開始することを念頭にしています。

2.診療について

1)診察内容

当科はスタッフ医師5名を中心に、年間で約11,000件の内視鏡検査を行っています。内訳は7,000件の上部内視鏡検査、2,400件の通常下部内視鏡検査、さらに内視鏡治療を50件の咽頭・喉頭がん、200件の表在食道がん、200件の早期胃がん、1,000件の大腸腺腫・早期大腸がんに対して行っています。特に咽頭・喉頭、食道、胃、大腸の早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の件数は増加しています。従来外科手術を受けて臓器を摘出されていた患者さんに対してもESDの適応が拡大されつつあるため、内科的治療だけで完全にがんを切除できるようになったのです。また、内視鏡治療には食道拡張術、胃瘻造設術、がん細胞に親和性の高い光感受性薬剤を使ったレーザー治療(photodynamic therapy; PDT)も多数行われています。

さらに治療のみではなく、診断の面においても診断精度を上げるために、スタッフ一同日々努力をしております。内視鏡デジタルファイリングシステムも完備し、院内のコンピューターシステムに接続されたことにより、内視鏡画像が院内のどこでも見ることができます。個々の患者さんの治療方針を決めるために、内科、外科、放射線科の多数の医師が毎週定期的に集まり、症例検討会が開かれます。この際に、内視鏡デジタルファイリングシステムは有効に利用され、診療の効率を上げています。最近では、内視鏡のシステム自体に大きな発展があり、短波長や蛍光といった目に見えない光を内視鏡の先端から発することによって、今まで見えなかったがんの別の側面をとらえることができるようになりました。がんの内視鏡診断において大きな一歩を踏み出したといえます。当院で、2006年にNarrow band imaging (NBI) システム、2012年にBlue Laser Imaging (BLI) システムが企業と共同で開発され、現在では、世界に広がっています。もちろん当院でも毎日の診療に使用しており、主に早期がんの発見や治療前に正確ながんの範囲を決めるときに活用されています。。

診療における国立がん研究センター東病院の特徴は、個々の患者さんの治療方針を決める過程にあります。外来でも入院でも担当医師個人が患者さんの治療方針を決めるのではなく、消化管内視鏡科、消化管内科頭頸部内科、外科グループ、放射線治療科に所属する多数の医師が集まって話し合い、総合的な判断によって個々の患者さんに合った治療を決めて行く方針をとっています(下図参照)。この方法によって、個人の偏った診断や部署ごとの方針の違いがなくなり、現在最もよいと考える治療が患者さんに提供できるのです。この点は、当院が最も誇りとするところです。また、診療においては医師だけではなく、看護師、薬剤師を含むチーム医療を行っており、個々の患者さんにとって最適の治療を提供するために治療方針を総合的に検討し、入院の目的を明確にした治療計画を提示することに心掛けています。

外来初診

各種検査

検討会による治療方針の決定

治療(内視鏡治療、外科治療、化学療法、放射線治療)

治療結果および効果に関する解析

患者さんへのフィードバック

(1)内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

わが国において、早期消化管がんに対する内視鏡切除は根治治療として広く普及してきています。この治療法は、体への負担が少なく、胃を切除しないため胃の機能は保たれ、優れた治療法です。ところが、従来の内視鏡切除法(EMR)では、技術的な理由によってがんを分割して切除するために、がん細胞を胃内に取り残してしまうことがあり、再発率が約20%といわれています。一方、技術の進歩と新たに開発された内視鏡機器により、ESDが行われるようになりました。この方法は大きな早期がんでも分割せずに一括で切除することができるようになり、現在では、約半数の早期がんは、外科手術をせずに内視鏡治療で完全に治ることができます。

(2)がん細胞に親和性の高い光感受性薬剤を使ったレーザー治療(photodynamic therapy; PDT)

PDTは、がんに選択的に集まる特殊な薬を注射した後に、がんの部分にレーザー光線を当てることによっておこる光化学反応を利用したレーザー治療です。消化器分野では胃がん、食道がんでの保険適応が認められている治療法で、内視鏡切除(EMRやESD)が難しいような早期がんに対して行われています。当科では、特に、食道がんに対して放射線併用化学療法で治療した後の局所再発に対するPDTを臨床試験として行っています。

(3)食道拡張術

食道がんの治療は、内視鏡治療、PDT、外科手術、化学放射線療法と多岐にわたっています。さまざまな治療によってがんが完全に治っても、一部の患者さんには食道に狭窄が残ってしまいます。すると、食事がスムーズに通らなくなったり、つかえ感が出現します。このような患者さんに対して、内視鏡下にバルーンと呼ばれている風船のような器具を使って、拡張を行います。定期的に繰り返すことにより、比較的スムーズに食事がとれるようになります。当院では、食道がん患者さんがとても多いため、拡張術は年間600-800件におよびます。

(4)胃瘻造設術

頭頸部や食道がん患者さんで、化学放射線療法を行う前に胃瘻を造設します。化学放射線療法により、口の中、のど、食道に炎症が起きて食事がとれなくなるため、腹壁と胃に管を通しておくことで流動食がとれるので栄養面での不安が少なくなります。治療が終わり管を抜いてしまうと自然に瘻孔は閉じるので心配はありません。当院では化学放射線療法を受ける頭頸部や食道がん患者さんが多いので、年間200名くらいの方に胃瘻造設術を行っています。

(5)大腸腺腫・早期大腸がんに対する内視鏡治療

大腸がんの発育過程は、多くが前がん病変である腺腫(ポリープ)から発育するとされています(腺腫−がん化説;詳しくはJapan Polyp Studyのホームページ:www.jps21.jp外部サイトへのリンクを参照)。よって腺腫を内視鏡下に切除することで、大腸がんの予防ができるとされています。当院では全例に拡大内視鏡を使っており、大腸腺腫および早期大腸がんを的確に診断し、切除を行っています。大きな病変もしくは少し深く浸潤した病変以外は、診断と同時に切除するため、多くの患者さんは入院の必要がありません。

2)診療実績

咽頭、食道、胃、大腸に発生する消化管がんに対する内視鏡診断・治療を主体に診療と研究を行っており、検査件数は治療を含め年間1万件を超えています(表1、表2)。

表1 内視鏡検査件数(2011年〜2015年)
  2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
上部内視鏡検査 6,350 6,647 6,846 6,825 7,309
超音波内視鏡 70 54 43 47 43
内視鏡治療(食道) 181 168 220 196 196
内視鏡治療(胃) 205 215 203 218 185
内視鏡下バルーン拡張 644 711 824 654 657
胃瘻 215 171 196 236 191
光線力学治療(食道) 48 39 32 35 23
大腸内視鏡 1,550 2,302 2,368 2,417 2,308
大腸内視鏡治療(ポリペクトミー, EMR, ESD) 800 912 832 903 906
狭帯域光内視鏡(頭頸部) 95 106 80 41 48
内視鏡治療(頭頸部) 41 46 52 49 105
EMR:内視鏡的粘膜切除術、ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術

表2 内視鏡治療件数(2011年〜2015年)
    2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
食道 EMR 100 89 65 60 59
ESD 45 79 155 136 137
EMR 9 3 0 1 9
ESD 202 212 203 217 172
大腸 EMR 744 834 725 913 906
ESD 17 78 98 92 107
頭頸部 EMR 6 7 1 0 3
ESD 35 33 51 49 102
EMR:内視鏡的粘膜切除術
ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術
*:内視鏡的ポリープ切除を含む

3.研究について

・大腸内視鏡:Narrow band image(NBI)システムの導入により、大腸内視鏡検査では、NBI観察による腫瘍・非腫瘍の鑑別診断や通常観察とNBI観察による病変の発見率に関する研究が行われています。さらに、大腸内視鏡による腺腫や早期がんを切除した後に、どのくらいの間隔で次の検査を行えば、大腸がんの予防が可能かを検討するため、適切な検査間隔を決定する臨床試験、Japan Polyp Study(ホームページ:www.jps21.jp外部サイトへのリンク)が多施設共同の班研究として行われています。 現在では、コホート試験として前向きに臨床試験を継続しています。

・アルコール代謝酵素と頭頚部・食道の多重がん発生の関連性に関する研究:若いころ飲酒したとき顔が赤くなる方は、日本人の約40%を占めます。この方たちが毎日多量の飲酒をされると頭頸部や食道がんになる確率が高くなることがわかってきました。アルコール代謝酵素とその代謝産物(アセトアルデヒド)は頭頸部・食道の多重がん発生に関して強い関連があることが遺伝子解析の結果確かめられ、新しい概念を確立しつつあります。

・photodynamic therapy(PDT):食道がんに対して、内視鏡治療や放射線併用化学療法を行った患者さんで、局所再発がみられる方がいらっしゃいます。完全治癒を想定した追加の治療を選択する時の一つの方法として行われています。現在では、適応を拡大するため、レザフィリンやアミノレブリン酸等の光感受性薬剤を使用した新たな治療を臨床試験として行っています。

・胃がんに対するESD:従来の内視鏡治療の適応を拡大するために、つまり、より大きな早期がん・未分化型早期がんに対して外科手術をせずに胃の機能を温存する目的で、多施設共同の臨床試験を行っています。

・低酸素イメージング内視鏡:がんの多くは低酸素状態にあるという、がんのもつ機能的特性を応用した独自性の高い全く新しい内視鏡機器開発を企業と共同で開発しています。

・分子イメージング内視鏡:次世代内視鏡といわれている内視鏡です。工学系・理学系の大学と共同で開発に着手しています。通常の内視鏡では全く見えない病変がレーザー光の照射により光って見えるという画期的な内視鏡です。

・生分解ステント:食道がん治療後の良性狭窄に対して、欧州では使用されていますが、日本での使用が承認されていない処置具に対しても、適応を目指して臨床試験を行っています。

このように研究の分野では、海外で使用されている処置具・内視鏡機器を日本に導入するためのプロジェクト、10年以上先を見越した全く新しい次世代内視鏡機器開発を医工企業連携で行っています。