食道外科 << 国立がん研究センター東病院

食道外科

1.食道外科について
2.食道外科の特色(1)術前〜退院後の社会復帰までを支援する多職種医療チーム体制
3.食道外科の特色(2)低侵襲性外科治療
4.食道とは?
5.胸部食道がん(胸腹部食道がん)
6.頸部食道がん
7.研究について

食道がん患者教室のご案内

1.食道外科について

 食道外科長
大幸 宏幸 (だいこう ひろゆき)   大幸 宏幸 (だいこう ひろゆき) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本食道学会 食道外科専門医、食道科認定医
日本消化器外科学会 消化器外科指導医、消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医 (食道がんに対する胸腔鏡手術で取得)
日本静脈経腸栄養学会 TNT Doctor
食道がんに対して、患者さんに応じた治療方法を一緒に考えています。
 医長
藤田 武郎 (ふじた たけお)   藤田 武郎 (ふじた たけお) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、指導医、消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医(食道がんに対する胸腔鏡手術で取得)
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本食道学会 食道科認定医
食道外科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本静脈経腸栄養学会 TNT Doctor
ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
日本外科感染症学会 外科周術期感染管理認定医 教育医
食道がんの外科的治療を専門としています。また術前から退院後サポートの構築まで運営しています。
手術に迷われている場合など、当院で毎月開催している「食道がん術後患者教室」にご参加いただく事も対応しています。
 医員
藤原 尚志 (ふじわら ひさし)   藤原 尚志 (ふじわら ひさし) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
患者さんが安全に手術を受けられるように努めたいと思います。
 がん専門修練医
岡田 尚也 (おかだ なおや)   岡田 尚也 (おかだ なおや)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、消化器がん外科治療認定医
日本静脈経腸栄養学会 TNT Doctor
ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
患者さん一人一人が安心して手術を受けられる様に、主に入院中の診療に携わらせていただいています。どのようなことでも遠慮無くご相談ください。
 がん専門修練医
佐藤 琢爾 (さとう たくじ)   佐藤 琢爾 (さとう たくじ)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本救急医学会 救急科専門医

皆さまの人生の1ページに役立つことができれば光栄です。
 レジデント
堀切 康正 (ほりきり やすまさ)   堀切 康正 (ほりきり やすまさ)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医

入院中の診療を担当しています。分からない事や不安な事があれば、気軽にお声掛けください。
 レジデント
栗田 大資 (くりた だいすけ)   栗田 大資 (くりた だいすけ)
  専門医・認定医資格など:
日本静脈経腸栄養学会 TNT Doctor

主に入院中の患者さんの診療を担当しております。安全で質の高い手術を行い、患者さんが安心して退院できるよう努めます。

はじめに

食道外科グループでは、消化管内科放射線治療科放射線診断科との密な医療連携のもと、食道から発生する悪性腫瘍に対して、進行度と患者さんの状態に応じた外科治療を行っています。また、頸部食道から発生する悪性腫瘍は、頭頸部外科と共同で治療を行っています。当院で手術を受ける患者さんは、多職種により構成された医療チームにより、術前から術後、さらには退院後も支援を受けながら社会復帰を目指します。さらに、治療成績の向上のため、術前補助療法と手術技術に重点を置いた研究と開発も行っています。

診療実績

化学放射線療法後のがんの遺残と再発に対する救済食道切除も積極的に行っており、現在までに150例以上の救済食道切除を経験しています。
手術症例数は、2010年に100例を超え、2013年より年150例以上の手術を行っています。低侵襲性手術として2008年より胸腔鏡による食道切除術を導入し、がんの進行度に応じて安全性を確認しながら段階的に適応を拡大、2015年度は153例に食道切除を行い、114例(75%)に胸腔鏡下食道切除を行いました。

図1:胸部食道がんに対する年度別手術症例数
図1:胸部食道がんに対する年度別手術症例数

2.食道外科の特色 (1)術前〜退院後の社会復帰までを支援する多職種医療チーム体制

手術を受ける患者さんは、外科医、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、言語聴覚士、精神腫瘍科、医療相談(ソーシャルワーカー)で構成される医療チームによって、それぞれの専門的な治療・ケアを受けながら、術前から手術のみならず、退院後の社会復帰を目指します。

図2:多職種による食道がん医療チーム体制
図2:多職種による食道がん医療チーム体制

1)手術前

手術を希望した患者さんは、看護外来で看護師から、実際の写真やDVDを見ながら、手術の必要事項の説明を詳しく受けます。また、歯科医からは口腔内を清潔に保つための歯磨きの指導を行います。がんによって食事をとるのが困難な患者さんに対しては、管理栄養士による指導を行っています。

【看護外来の説明内容】
(1) 術式と手術による体の変化
(2) クリニカルパスを用いた術後経過
(3) 臓器リハビリテーション(特に呼吸リハビリテーション)
(4) 禁酒と禁煙の必要性
(5) 心のケア

2)入院

透明性のある治療と患者さんの医療への積極的な参加を促すため、術前から術後の退院まで、クリニカルパスを用いた計画治療を行っています。さらに、術後は運動の達成度を階段状に評価するクリニカルパスを用いて、体力の回復を図っています。また、必要に応じて理学療法士より体力回復、言語聴覚士より機能回復の指導を行っています。退院直前には、医師より退院後の生活、管理栄養士より食事の指導を行っています。

3)退院後

退院後も多職種による医療チームの支援により社会復帰を目指します。退院後2〜3週間後に医師の初回外来に合わせ、看護師による食物摂取状況とリハビリテーションの進行具合による全身状態の評価と、管理栄養士による食事内容の指導を行っています。
また、毎月第3木曜日には、退院1ヵ月程度の患者さんを対象に、多職種による約90分の患者教室を定期開催しています。

【患者教室の主な講義内容】
(1) 外科医:術後の体の変化と運動の必要性
(2) 看護師:日常生活
(3) 管理栄養士:食事内容
(4) 理学療法士:運動リハビリテーション
(5) 言語聴覚士:嚥下機能を含めた食事の摂取方法
(6) 医療相談:地域の介護支援施設の紹介と指導 など

3.食道外科の特色 (2)低侵襲性外科治療

食道がんの外科治療においても、従来の手術方法と比べて身体的負担(侵襲:しんしゅう)の少ない治療が普及しつつあります。当科では、がんの進行度と患者さんの状態に応じて、低侵襲性外科治療を積極的に行っています。

食道がんにおける低侵襲性外科治療とは、術前補助療法でがんを縮小させ、内視鏡外科手術で小さな傷で切除(低侵襲性手術)することを指します。食道がんに対する低侵襲性手術では、胸腔鏡で食道がんを切除し、腹腔鏡で再建を行います。低侵襲性手術は、胸壁と腹壁の破壊が少ないので痛みが少なく、術後の回復が早いため、手術翌日からの歩行が可能となります。

図3:低侵襲性外科治療と低侵襲性手術
図3:低侵襲性外科治療と低侵襲性手術

1)胸腔鏡下食道切除術

当院では、腹臥位(ふくがい:うつぶせのこと)で、手術器具を入れるポート(手術器具を入れる筒)6個で手術を行っています。ポートの直径は、6個のうち1個が約1cm、残り5個は約0.5cmと小さいものです。このほかに開胸創を置くことはありません。

図4:胸腔鏡下食道切除術の様子
図4:胸腔鏡下食道切除術の様子

図5:
図5

2)腹腔鏡下胃管再建術

当院では、過去に開腹手術を受けたことのない患者さんに対しては、お腹を大きく開けずにポート5個だけで手術を行う、腹腔鏡下胃管再建術を行っています。使用するポートの直径は、5個のうち2個が約1cm、3個が約0.5cmと非常に細いものです。さらに、臍(へそ)の周囲を約4cm切開し、胃袋を食道の代わりとなるように胃管につくり変えます。

図6:
図6


4.食道とは?

食道とは、読んで字のごとく「食べ物の通る道」で、長さ25cm、太さ2〜3cmの筒状の臓器です。大きく「頸部食道」と「胸部食道(胸部食道+腹部食道)」に分けられます。食道には、口から入った食べ物を胃まで送る働きがあり、消化活動は行っていません。この食道の粘膜から発生する悪性腫瘍を食道がんといい、日本ではその90%を扁平上皮がんが占めています。

図7:食道の位置と構造
図7:食道の位置と構造
がん情報サービスがん情報サービスへのリンクより転載

5.胸部食道がん(胸腹部食道がん)

1)診断:がんの広がり(進行度)を調べる

がんの進行度を診断するため、上部消化管バリウム造影、上部消化管内視鏡、頸胸腹部CT、頸部・腹部超音波の各検査を行います。そして、毎週火曜日に行われる食道外科、消化管内科放射線治療科および放射線診断科が参加する食道カンファレンスにおいてこれらの検査結果を検討し、進行度を診断しています。このように、すべての症例に対し、複数の診療科の専門家が集まって診断を行うことで、より正確に、かつ最適な治療方針を立てられるようにしています。

●上部消化管バリウム造影
バリウムを飲み、エックス線で撮影をします。この検査では、病変の大きさと位置関係を見ることができます。
上部消化管バリウム造影

●上部消化管内視鏡
病変の位置、大きさ、数を調べるだけでなく、組織を採取して確定診断を行います。特殊な染色液(ルゴール液)を用いて、小さな病変まで見つけ出します。
上部消化管内視鏡

●頸胸腹部CT
病変の位置、広がりや深さ、周囲臓器との関係を見ることができます。リンパ節転移や遠隔臓器転移も調べます。
頸胸腹部CT

●頸部・腹部超音波
頸部超音波では頸部リンパ節への転移の有無を、腹部超音波では肝臓への転移の有無を調べます。

●PET
上記の検査で診断が確定されない場合のみ、放射性ブドウ糖液を用いて検査します。

2)進行度分類:病期

病期とは、がんの進行度を表す言葉です。病期は以下の3つの因子によって、4段階に分類されます(図8、表1、表2参照)。
  • T 因子:がんの深さ
  • N 因子:リンパ節転移
  • M 因子:遠隔リンパ節転移または臓器転移
図8:食道壁の構造とがんの深さ(T 因子)の分類
図8:食道壁の構造とがんの深さ(T因子)の分類
がん情報サービスがん情報サービスへのリンクより転載

表1:食道がんTNM分類(UICC第7版)
表1:食道がんTNM分類(UICC第7版)

表2:食道がん病期分類(UICC第7版)
表2:食道がん病期分類(UICC第7版)

3) 治療方針:集学的治療

手術は、内視鏡的切除(胃カメラによる切除)が不可能であり、かつ他臓器への浸潤と転移のない、完全切除が可能な症例が適応となります。したがって、臨床病期I (T1b以上の腫瘍) からIV (遠隔臓器転移を有する症例は適応外)までが適応となります。
臨床病期cT1bN0は手術単独となりますが、cT1bN0より進行した症例では、手術の効果を高めて長生きできるように、手術前に抗がん剤や放射線を組み合わせた補助治療を行っています 。

【病期別治療方針】
■臨床病期IA:T1aに対しては内視鏡的粘膜切除(胃カメラによる切除)
                     T1bに対しては手術(病理学的にリンパ節転移を認めれば、術後に抗がん剤を追加)
■臨床病期IB以上:術前補助療法 → 手術

4)術前補助療法

当院では、さらなる手術治療成績の向上を目指して術前補助療法の開発を行い、以下のように進行度に応じた補助療法を行っています。なお、現在、術前補助療法に関する臨床試験が進行中です。詳しくは「7.研究について」の項をご覧ください。

【病期別の術前補助療法】
■臨床病期IB〜IIB:シスプラチン+5-FU
■臨床病期III以上:シスプラチン+5-FU+ドセタキセル、または化学放射線療法

5)手術術式

食道がんに対する手術術式は、頸部・胸部・腹部の3領域に及ぶリンパ節郭清を行い、食道を切除する術式を標準手術としています。当院の特色として、食道がんに対する手術をがん切除と再建に分け、がんの進行度に応じた手術治療の個別化を行っています。また、耐開胸性(胸を開けた手術に耐えられるかどうか)がない症例や80歳以上の超高齢者に対しても、術式を工夫して手術を行っています。

●がん切除
食道がんに対する標準的ながん切除の方法は、右開胸(胸を大きく開ける手術)による手術です。当院では、がんの進行度に応じて、低侵襲性手術として完全胸腔鏡(穴を開けるだけの手術)で手術を行っています。

【がん切除のアプローチ法とその適応】
■ 右開胸アプローチ:胸部上部リンパ節に転移を認める症例 or 救済食道切除*
■ 完全胸腔鏡アプローチ:胸部上部リンパ節に転移を認めない症例
■ 非開胸アプローチ**:耐開胸性はないが開腹に耐えられる症例

●再建
再建術は基本的に腹腔鏡で行っています。

【再建のアプローチ法とその適応】
■ 開腹アプローチ:開腹手術歴がある場合
■ 腹腔鏡アプローチ:開腹手術歴のない症例

図9:食道がん手術のアプローチ法 食道がん切除のアプローチ法
*救済食道切除:根治的化学放射線療法後の遺残と再発症例に対しては、標準術式に工夫を加え救済手術を行っています。
**非開胸アプローチ:多くの臓器機能に障害を有する症例や耐開胸性はないが耐開腹性がある症例に対しては、非開胸アプローチで開腹食道切除に腹部から中下縦隔、頸部から上縦隔リンパ節を可能な限り郭清し、根治性を高めた手術を積極的に行っています。


●二期分割手術
通常は切除と再建を1回で行いますが(一期的手術)、80歳以上の超高齢者や臓器障害をもつ方では身体的な負担がきわめて大きく、一期的に手術を行っても、多くの場合、術後に質の高い日常生活が営めません。当院では、80歳以上の超高齢者や臓器機能に障害を有する場合、総合的に判断を行い、切除と再建を別の時期に行う「二期分割手術」を行っています。
二期分割手術では、1回目のがん切除の前に、胃カメラを用いて胃ろう(内視鏡的胃ろう:PEG)を造設し、がん切除術を行います。その後はいったん退院し、胃ろうによる栄養管理とリハビリテーションを行い、臓器機能が回復するのを待ちます。条件が整ったら再入院し、再建術を行います。

【一期的手術と二期分割手術の適応】
■一期的手術:切除と再建を1回で行うだけの体力と臓器機能がある80歳未満の患者
■二期分割手術:80歳以上の超高齢者、または耐開胸性はあるが、ほかの臓器機能障害のために一期的手術に耐えられないと考えられる患者

図10:
図10

6.頸部食道がん

1)診断

咽頭・上部消化管バリウム造影、上部消化管内視鏡、頭頸部NBI内視鏡、頸胸腹部CT 検査、頸部超音波検査を行い、食道と頭頸部外科の合同カンファレンスで進行度を診断分類しています。臨床病期は、がんの深さ(T 因子)、リンパ節転移(N 因子)、遠隔転移(M 因子)の3因子により4段階に分類されます。詳しくは「5.胸部食道がん 2)進行度分類:病期」の項をご覧ください。

2)治療

他臓器転移のない切除可能な症例は、外科医から手術、内科・放射線科医から化学放射線療法の方法とその効果について説明を行い、患者さんご自身で治療法を選択していただいています。

3)手術術式

手術は咽頭喉頭頸部食道切除、両側頸部リンパ節郭清、上縦隔リンパ節郭清、遊離小腸移植再建術を標準術式としていますが、可能な限り喉頭を温存するよう努めています。

4)補助療法

予後不良因子を有する症例に対しては、術後に化学放射線療法を行っています。

7.研究について

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)による大規模多施設共同研究に積極的に参加しています。現在は下記の臨床試験が進行中です。
  • 臨床病期IB/II/III食道癌(T4を除く)に対する術前シスプラチン+5-FU(CF)療法/術前ドセタキセル+シスプラチン+5-FU(DCF)療法/術前化学放射線(CF-RT)療法の第III相比較試験