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肝胆膵外科

1.肝胆膵外科について
2.診療内容と実績について
3.研究について

1.肝胆膵外科について

 肝胆膵外科長 (副院長[医療安全管理] 併任)
小西 大 (こにし まさる)   小西 大 (こにし まさる) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、指導医
日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能指導医
肝臓、胆道、膵臓のがんに対して、診断から治療までチーム一丸となって取り組んでいます。疑問があれば何なりとご質問ください。
 医長
高橋 進一郎 (たかはし しんいちろう)   高橋 進一郎 (たかはし しんいちろう) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、指導医
日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
患者さん一人ひとり最善の治療を目指しています。肝胆膵進行がんの外科治療から診断まで、何でもご相談ください。
 医長
後藤田 直人 (ごとうだ なおと)   後藤田 直人 (ごとうだ なおと) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、指導医
日本肝胆膵外科学会 肝胆膵外科高度技能指導医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
インフェクションコントロールドクター
日本外科感染症学会 外科周術期感染管理医
肝胆膵領域は難易度の高い手術が多いですが、傷の小さい手術、内視鏡手術も積極的に行っていますのでご相談ください。
 医員
杉本 元一 (すぎもと もとかず)   杉本 元一 (すぎもと もとかず) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
インフェクションコントロールドクター
日本肝胆膵外科学会留学制度の助成により2年半、アメリカ合衆国の3施設(セントルークス病院(アイダホ)、メイヨークリニック(ミネソタ)、UCLA(カリフォルニア))で研究留学をして参りました。アメリカ留学で得た知識・経験も活かし、患者さん一人ひとりに最善の治療を心がけます。

2.診療について

1. 診療内容と実績

主に担当する診療は肝臓がん(原発性、転移性)、胆道がん(胆嚢、胆管)、膵臓がん、十二指腸がんなどに対する手術です。その他、上腹部にできた特殊な腫瘍(GISTや後腹膜腫瘍)などの外科的切除も担当します。年別症例数の推移は表1のとおりで年間通じて非常に多くの手術を行っております。

治療方針については初めての外来受診が当科であっても必ずしも手術ということにはなりません。内視鏡検査や画像検査(CT、MRI、超音波検査など)を行ったうえで、放射線診断科による進行期を含めた正確な診断のもと、内科・外科の合同カンファレンスにて一人一人の患者さんの検査結果を検討しながら治療方針を決定しています。例えば、膵臓がんの診断で手術加療をすすめられて当科を受診されても当院での詳細な検査によって広範囲な腫瘍進展が確認されれば、根治切除不能と判断し肝胆膵内科医のもとで化学療法の方針となることがあります。

入院されてからの周術期(術前〜術後)管理はクリニカルパスを用いて行っています。現在私達が担当するほとんどの術式にこのクリニカルパスを導入し、肝切除術では術後1週間〜10日程度で、膵臓の手術では2週間程度で退院されています。

私達は4人の診療スタッフとがん専門修練医によって月曜から金曜日まで外来診療を行っています。食事や水分が通りにくい方、黄疸がでている方など、病状の進行によっては初めて受診される場合でも迅速に対応させていただきます。

表1 年別症例数の推移
図1 年別症例数の推移

2. 診療疾患

【肝細胞がん】
B型肝炎やC型肝炎を原因として発生することが多いのがこの肝細胞がんです。肝細胞がんは時として径が10cmを越えるような大きな腫瘍として発見されるときがあります。このような場合も全身状態、肝機能から判断して手術に耐えられると判断されれば、積極的に手術加療を行っています。大きな主腫瘍に加えて、他にも肝臓内に多数の小さい肝細胞がんが認められるような場合も大きな腫瘍に対しては手術以外の治療効果があまり期待できないため減量切除という手術でまず主腫瘍を切除し、その後肝動脈塞栓術などを組み合わせるような治療も行っています。

【転移性肝がん】
大腸癌肝転移を中心に胃がん、膵神経内分泌腫瘍の転移を含め年間50〜70例の転移性肝癌切除を行っています。肝転移は大腸癌で最も高頻度に認められる遠隔転移形式ですが、肝切除が可能な場合根治が期待可能であり術後5年以上ご健在の方が半数近くいらっしゃいます。根治切除不能な大腸癌肝転移であっても化学療法が効いて小さくなった場合切除が可能になる場合があります。当院ではこの様な手術を今までに100例以上行っています。また、再発減少目的に術後補助療法の臨床試験を行っており治療成績の向上を目指しています。

【胆道がん、十二指腸がん】
胆汁の流れる所、胆管に生じるがんを総称して胆道がんといいます。胆道がんは肝内胆管がん(胆管細胞がん)、肝外胆管がん、胆嚢がん、ファーター乳頭部がんに分けられます。このファーター乳頭部は十二指腸にあり、十二指腸がんに対しても診療を行っています。胆管がんは、がんの存在部位により難易度の高い膵頭十二指腸切除術や広範囲の肝切除術が行われます。当院ではこうした手術に対しても対応可能です。
一方で、詳細な画像診断のもと腫瘍の存在範囲が比較的限局していると思われるような場合は患者さんへの負担ができるだけ小さくなるような胆管と胆嚢だけを切除して再建する肝外胆管切除術や、十二指腸がんに対しても悪性度の低いがんであれば膵臓を温存する膵温存十二指腸切除術というような縮小手術も積極的に取り組んでいます。胆道がんの術後については現在再発予防目的に術後補助療法に関する臨床試験も肝胆膵内科と協力して行い、治療成績の向上に努めています。

【膵がん】
膵がんは難治がんの一つと考えられていますが、遠隔転移がなく周囲主要動脈に浸潤が無い場合手術により根治の可能性があります。膵頭部に腫瘍がある場合は膵頭十二指腸切除、膵体部に腫瘍がある場合は膵体尾部切除を行います。  
S-1(ティーエスワン)による術後補助療法が標準治療とされ当院でも行っていますが、さらなる治療成績向上を目指して、現在は術前化学療法の有効性を検証する多施設共同臨床試験を行っているところです。また、主要血管に近接、もしくは浸潤する切除境界領域膵がんに対する術前放射線化学療法の臨床試験も肝胆膵内科、放射線科と協力して行っています。膵がん以外の膵腫瘍についても、膵管内乳頭腫瘍に対する手術は150例以上、神経内分泌腫瘍に対する手術は50例以上行っており、また、粘液性嚢胞腫瘍、solid-pseudopapillary neoplasm (SPT)などの比較的まれな腫瘍の手術経験も数多くあります。日本神経内分泌腫瘍研究会によって行われているNET患者登録事業にも協力しています。

【GIST、肉腫や後腹膜腫瘍】
当科では他の診療科と協力して消化管GISTの手術(主に肝転移)も積極的に行っています。消化管のみに存在するGISTはそれぞれの当該診療科において適応を考慮し外科的切除を行うことになりますが、当科では主に肝転移などを有する進行GISTの患者さんに対しまして腫瘍内科医と連携を密にとり、耐性をもった病変のみ切除するサルベージ(救済)手術、減量手術も行っています。
また肉腫や後腹膜腫瘍についても関係診療科と協力しながら外科的切除を行っています。

3. 手術治療

肝臓、胆道(胆管や胆嚢)、膵臓、さらには十二指腸やファーター乳頭部といった部位に発生する、いわゆる肝胆膵のがんは多くが難治性です。また解剖学的にも隣接する臓器が多く、重要血管が近傍に位置することから腹部手術の中でも難易度の高い手術が多いことも特徴です。しかしながら当院ではこうした難易度の高い肝胆膵のがんに対する手術におきましても、豊富な手術経験を持つスタッフ(日本肝胆膵外科学会認定、肝胆膵外科高度技能指導医)による質の高い手術を行っています。

4. 腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術はお腹に小さな穴を5-6か所程度あけて行う手術で、傷が小さく体への負担が少ないと評価され拡がりつつあります。
当科では保険診療として認可されました肝胆膵外科領域の腹腔鏡下肝切除術や、腹腔鏡下膵切除も行っています。肝胆膵領域の手術は一般的には大きなお腹の傷となることが多いのですが、腹腔鏡下手術を行うことで従来の開腹手術よりも傷が小さいことから術後の痛みも少なく、術後5-7日程度で退院されています。
腹腔鏡手術は習熟したスタッフ(日本内視鏡外科学会技術認定医)によって質の高い手術を行っています。このような手術は全ての患者さんに行える訳ではなく、安全面を考慮しつつ疾患や腫瘍の大きさ、位置によって適応を決定しています。腹腔鏡下肝切除は表2にありますように、ここ3年は50例程度/年、これまで通算200例以上行っており、肝臓内視鏡外科研究会による「症例登録システムを用いた腹腔鏡下肝切除術の安全性に関する検討〜前向き多施設共同研究〜」にも参加しています。

年別主要手術件数としては肝胆道系のがんに対する肝切除術、腹部手術の中でも難易度の非常に高い胆膵がん系に行われます膵頭十二指腸切除術、そして前述しました腹腔鏡下肝切除術、膵体尾部切除術は表2のとおりです。

表2 年別主要手術件数
表2 年別主要手術件数

3.研究について

国立がん研究センターでは質の高いがん治療を国民に提供するとともに、先進的な治療法を積極的に開発・応用する責務もあります。将来の標準治療法を決めるためには臨床試験を行って、いくつかの治療法の優劣を調べる必要があります。当科はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の一員として多施設共同の臨床研究や単施設での臨床研究などを主導、あるいは参加協力して、得られたエビデンスを活かしたがん治療成績の向上に努めています。

またより安全で適正な手術を目指し、手術手技、手術術式、術後管理の改良する研究も精力的に行っています。

(実施中の臨床試験)
  1. 大腸がん肝転移切除後の手術単独に対して補助化学療法の有効性を検証する試験(JCOG 0603)
  2. 大腸癌肝転移に対する化学療法に伴う肝障害に関する研究
  3. Borderline resectable膵癌に対する術前S-1併用放射線療法の第II相試験(JASPAC05)
  4. 切除可能膵癌に対する術前治療としてのS-1併用放射線療法とゲムシタビン+ S-1併用療法のランダム化第 II 相試験(JASPAC04)
  5. 根治切除後胆道癌に対する術後補助療法としてのS-1療法の第III相試験(JCOG1202)
  6. 肝がんの再発リスクの分類に関した診断技術の開発を目指した研究
  7. 膵・消化管および肺・気管支・胸腺神経内分泌腫瘍の患者悉皆登録研究(NET Registry)
  8. 肝臓外科手術における腹腔ドレーン留置の安全性に関する無作為化比較臨床試験(ND-trial)
  9. 症例登録システムを用いた腹腔鏡下肝切除術の安全性に関する検討〜前向き多施設共同研究〜
これらの研究に関しては患者さんへの十分な説明のもとに、ご理解・ご協力をお願いしながら進めております。