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遺伝性腫瘍と遺伝カウンセリング

遺伝性腫瘍

遺伝性腫瘍症候群(以下、遺伝性腫瘍)とは生まれながらにがんを発症しやすい体質を持っていることを意味します。

検査の結果で「遺伝性腫瘍です」もしくは「遺伝性腫瘍の疑いがあります」と言われたときに、「あぁうちの家系はがんの人多いからな」と思う人もいるかもしれませんし、「自分以外誰もがんになってないのに・・・」と思う方もいるかもしれません。

ご家族の中に「がんの人がたくさんいる」=「遺伝性腫瘍」というわけではありません。

遺伝性腫瘍は生まれながらにがんを発症しやすい体質を持っていると最初に言いましたが、もう少し詳しく説明すると、私たちの体の設計図である遺伝子に関係しています。遺伝子は父親から1つ、母親から1つという形で同じ遺伝情報を2つずつ持っています。私たちの体には2万種類以上の遺伝子がありますがその中のいくつかの遺伝子は、がんの発生や抑制と密接な関わりがあります。がんの発症を抑制してくれる遺伝子の2つあるうちの1つが生まれながらに機能していない状態にあると、2つとも機能している人よりもがんを発症しやすいことがわかっています。しかし、全てのがんになりやすいわけではありません。遺伝子の種類によって気を付けたほうがいいがん種、つまりがんを発症しやすい臓器は異なります。

がん遺伝子パネル検査で「遺伝性腫瘍です」もしくは「遺伝性腫瘍の可能性があります」というときには、がんの発症に関わる遺伝子の生まれながらの変化が認められたということです。

遺伝性腫瘍というのは遺伝子の変化なので、家族に同じようながんの人がいたりその遺伝子に関連するがんを発症している人が多いというのも事実です。ですので「うちの家系にはがんの人がたくさんいるなぁ」と思われている人のうちの一部は、実際に遺伝性腫瘍であることがあります。

遺伝子は家族の中である程度同じものを持っていることを皆さんはご存知でしょうか。

父・母からそれぞれ私たちの体に必要な遺伝子(遺伝情報)を受け継いでいるのです。ですから、遺伝性腫瘍とわかったら、ご家族も同じようにがんを発症しやすい体質を持っている可能性があります。その情報を元に「早くから検診をしよう」とか「がんになる前に手術しよう」とか「検診の頻度や方法を考えよう」と思う人もいらっしゃいます。「がんになりやすいってわかったら不安だな」とか「子供達のことが心配だな」と思う人もいらっしゃいます。皆さん受け取り方は様々です。

受け取り方は様々ですが、結果を聞いたうえでどうしていくのか一緒に考えていく場(遺伝カウンセリング)があります。

遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングは「疾患の遺伝学的関与について、遺伝性疾患の当事者や家族・関係者が、その医学的影響、心理学的影響および家族への影響を理解し、それに適応していくことを助けるプロセスであり、リスクや状況に対するインフォームド・チョイス(十分な情報を得た上での自律的選択)と適応を促進するためのカウンセリング、などが含まれる」とされています。

遺伝性腫瘍の項目で書いたような「うちの家系にはがんの人たくさんいるなぁ」や「なんでこんなに若いのにがんになったんだろう」ということがきっかけで遺伝カウンセリングにいらっしゃった時には、遺伝子検査で遺伝性腫瘍かどうかを調べたいのか、もしくは調べたくないのか、本当に遺伝性腫瘍のリスクがあるのか、ということを一緒に考え、調べてわかったらどうするか、調べないで検診をしたいと思う場合は?などをお話しします。

ところが、がん遺伝子パネル検査を実施した場合は「どう思うかな」「知った上でどうしようかな」「家族には知らせたほうがいいかな、どうかな」ということを遺伝カウンセリングでお話することはあまりなく、「遺伝子の変化がありましたね(もしくは疑われますね)」という結果を元に遺伝カウンセリングを始めていきます。なので、皆さんびっくりされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その結果をご家族に知らせたいか、ご家族のリスクはどうなのかなど遺伝カウンセリングでお話しさせていただきます。

そのあとにご家族(血縁者)がご自身の「遺伝子の情報はどうなのかな」と思われた場合も、がん遺伝子パネル検査を受けた人の同席なしで話がしたいなという場合も遺伝カウンセリングを受けていただくことができます。

遺伝カウンセリングでは何かを強要することはありません。あなたとそのご家族が「十分な情報を得た上で自律的選択ができるようにそして、医学的影響、心理学的影響および家族への影響を理解し適応を促進するためのものです。お気軽に担当医もしくは各施設の遺伝医療部門にお声がけください。

このウエブサイトの「患者さん・ご家族向けリンク集」 (D)遺伝性腫瘍・家族性腫瘍・ゲノム医療・遺伝カウンセリング にあるリンクもご参照ください