A. 経営者の方針と経営理念
高齢化が進む社会において、がんに限らず治療を受けながら働くことが今まで以上に多くなります。貴重な人材を大切にする観点からも、会社として治療と就業が両立できるように支援していくことが重要です。それにはまず、経営者が社員やその家族を大切な財産と思うこと、そして、そのメッセージを経営方針・経営理念として社内に発信し社員に浸透していくことが大切です。
1. 社是や経営理念に、社員の「健康」や「幸せ」が含まれている
< なぜ重要か >
昨今、医療の進歩から「がん=死」ではありません。治るがんもあれば、慢性疾患のように長く付き合う場合も多く、職場における病気の理解や柔軟な配慮を受けられれば、がんの治療をしながら仕事を続けることが可能となっています。がんと診断された社員は、がんになったことに衝撃を受け気分が落ち込んだり、怒りがこみ上げたり心身ともに不安定な状態となります。そのような状態の社員を支え治療と就労をサポートするためには、普段から経営者が社員の「健康」や「幸せ」を意識し、それを守る姿勢を社内に発信することが大切です。社員の健康や幸せを大切に考える社内風土(雰囲気)が根付いていれば、いざ社員ががんになったとしても、互いに声を掛け助け合うことができ、働きやすい環境づくりが可能になります。
< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >
・社是や経営理念に、「社員やその家族が健康で幸せであること」を明記する
・経営方針として、「社内の安全衛生と社員の健康増進を図る」ことを取り入れる
・「社員は会社の一番の財産(宝)」であることを、経営者が度々話題に出す
2. 経営者は社員の健康(元気)が良好な経営につながることを折に触れて発信している
< なぜ重要か >
経営者自ら、社員が健康(元気)であることで生産性が向上し良好な経営につながることに気づき、普段から社員に発信することで、経営者と社員の両立支援に関する認識の共有が進むだけでなく、仕事においても情報共有が進み、質の高い仕事が効率よくできるようになるでしょう。
< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >
・経営者が、「人を大切にする経営」や「健康経営」などに関するセミナー等に参加し、社員にも発信する
・経営者が朝礼や行事のたびに、社員が健康で元気であると良い仕事につながることを話す
・経営者自ら、社員に健康に関する講話をする
3. 経営者が発信した健康重視のメッセージが、社員に浸透している
< なぜ重要か >
社員が健康であれば経営もよくなるといった情報を折に触れて経営者から発信し、社員がしっかり理解しているかを話し合いの場で確認するとよいでしょう。実際、ある日突然に社員ががんと診断された場合、そのショックは本人と家族だけでなく社内で共有されるものです。あらゆる工夫をしながら個別の事例に対応して、治療しながら就労を続けられる社員が増えることで、会社としても両立支援に自信がつき、職場でもより多くの協力者が現れるなど支援がしやすくなります。
< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >
・経営者が経営会議や朝礼等で「社員の健康が大切である」、「健診やがん検診受診率を上げる」など、社員の健康を重視する意思を発信する
・講話等で話すだけでなく、ウェブサイトや文書などで、社員がいつでも確認できる媒体を通じて発信する
・経営者のメッセージがきちんと社員に届いているか、社員に声かけして本音を引出し確認する
4. 経営者が社員に声をかけ会話する機会が日常的にある
< なぜ重要か >
がんになると、治療や体調不良のため急な、またはまとまった休みをもらうこともあります。がんと診断された社員は会社に多大な迷惑をかけてしまったと後悔したり焦ったりします。そこで普段から経営者自ら社員に声をかけ話しやすい職場風土ができていると、がんに限らず多くの病気や困りごとについて社員は気軽に相談することができ、早期解決につながりやすくなるでしょう。
< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >
・出社時や退社時の挨拶・声かけを、経営者が率先して行う
・時には昼食を共にするなど、経営者の方から社員とのコミュニケーションを図る
・なんでも相談できる社内相談窓口を設置する
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