改善ヒントと解説
D.勤務時間・内容の工夫
◆この領域でとりあげる視点
 がんと診断され治療が始まると、想定外の出来事の連続になります。がん治療は体力を消耗し、体のだるさや吐き気など副作用を伴うことがあります。治療と仕事の両立を希望していても、体力低下や治療に伴う副作用によってフルタイムでの勤務が困難になる場合もあります。一方、そのような場合でも体調が安定している時は普段と変わらないパフォーマンスで仕事ができる場合も少なくありません。体調に応じた柔軟な勤務時間や仕事内容の調整は、がんによる症状や治療による副作用で体調が不安定な一定期間に有効な対応方法です。このように不安定な状態は化学療法などが行われる一定期間ですので、本人や主治医の意見を聞きながら、会社として柔軟な対応が取れるよう準備をしておくことが大切です。
1. 体調に合わせて短時間勤務などの相談・調整ができる

< なぜ重要か >

 がんによる症状や治療による副作用には個人差があり、日によっても症状の強さが異なることも少なくありません。体調が安定しているかどうかは、その時、その場になってみないとわからないことが多く、本人の体調についてよく聞きながら一人ひとりに合わせて柔軟な対応をする必要があります。勤務時間も、通勤や休憩時間などを考慮しながら相談して決めると良いでしょう。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・職場復帰後の一定期間は、本人の体調を勘案し通勤ラッシュを避けて通勤できるよう調整する
・職場復帰直後は体を慣らす意味もあり、短時間勤務を提案する
・週1回の通院が必要な場合、週5日勤務から週4日勤務に変更して職場復帰できるようにする(勤務時間が減った分は減給とすることを予め合意しておく)
・体調が不安定な間は、本人の希望を聞きながら、柔軟に出勤時間や勤務時間を調整する

2. 本人が希望すれば復職にあたって配置転換や役職免除などに柔軟に対応できる

< なぜ重要か >

 がんの治療が一段落していよいよ職場復帰をする際には、元の職場で働くべきか、別の職場に配置転換すべきか、どのような形で働いてもらうのが良いのか、働いてもらう際に気を付けるべきことは何かなど、考えるべきことがたくさんあります。基本的には本人の希望をよく聞き、会社としてできることとできないことを十分に話し合うことが重要です。配置転換や役職免除を行った場合も、治療が終わり一定期間がたてば元の職場・職位に戻って十分なパフォーマンスを発揮することは可能です。また、がんになったからと言って必ずしも降格や配置転換が必要なわけではありません。元の職位や元の職場で十分にパフォーマンスを発揮して働いているがんと診断された者はたくさんいます。過剰な配慮や一方的な決定は職場と本人との軋轢を生むこともありますので、注意が必要です。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・職場復帰にあたり比較的自分のペースで仕事ができる部署(例:営業部から企画部)に配置転換する
・本人からの申し出があり必要と思われる際には、部下を持たない職位へと降格してから職場復帰する
・出張や時間外勤務が予想される部署の場合、その心配のない部署に職場復帰する
・職場復帰前に、現在の職場で働くことで体調管理に問題はないか本人とよく話し合う

3. 軽作業や定型作業など体調管理がしやすいように仕事の内容を調整できる

< なぜ重要か >

 職場復帰にあたり、具体的にどのような仕事を担当するかは非常に重要です。がん治療が一段落していたとしても、急な体調不良や体力低下から風邪をひいてしまうなど、体調が不安定で仕事を休みがちな時期が来ることも予測されます。特に一定期間仕事を休んでいた場合、想像以上に体力が落ちていることもあります。職場復帰直後は頑張ってしまいがちです。無理をしないよう徐々にペースをつかむことができるよう、簡単な作業や急な予定変更がないような定型作業から始めるのが良いでしょう。顧客相手の仕事や外出・出張を伴うような業務は体力や治療が安定してから行うようにすると、急な体調変化にも対応しやすく安心です。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・急な予定変更があるような仕事ではなくマイペースでできる軽い勤務から始めてもらうようにする
・長時間継続した対応が必要な仕事ではなく、短いスパンで進められる業務をお願いする
・急に休みが必要となった時でも対応できるよう、誰かがフォローアップできる体制で仕事をすすめる
・週の何日間かは在宅勤務制度をとれるようにする

4. 体調回復に応じて、仕事量や内容を増やす相談もできる

< なぜ重要か >

 がん治療と仕事の両立のために、一時的に勤務時間を短縮(あるいは変更)したり、仕事の内容を軽作業に変えたり、職位を変更するなど様々な就業上の配慮を行った場合でも、その業務軽減を永続的にしてしまうと、せっかくの人材活用が進みません。本人の労働意欲低下や職場との無用な軋轢を生む危険性もあります。これらの就業配慮をいつまで続けるべきかは、本人と職場、人事労務担当者、(場合によっては産業保健スタッフ)、必要に応じて主治医の意見なども参考によく話し合って決めます。体調の回復に合わせて、業務の量や内容を変更することが重要です。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・1年に1回のフォローアップのための定期受診になったタイミングで、元の職場に戻るようにする
・積極的な治療が終了し体調も安定して勤務が継続できるようになってから、本人と相談して元の職位に戻ることができるようにする
・定期的に仕事の進捗確認がてら体調に関する確認も行い、体調に応じて仕事の内容を変更できるようにする
・体調に関することは、本人の承諾のもと直属上司と人事労務担当者で情報共有し、今後の見通しをたてる

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