改善ヒントと解説
C. 休暇取得とがん検診の奨励
◆この領域でとりあげる視点
 傷病(療養)休暇制度をはじめとした社内の制度を整備し、治療のスケジュールや体調に応じて柔軟に仕事ができる体制を整えることは、がんと診断された社員が治療と仕事を両立できるようにするための重要な取り組みの一つです。また、がんをできるだけ早く発見し、適切な治療に結びつける予防的な取り組みも、大変有用です。会社として、安心して治療に取り組める制度やがんを早期発見するためのがん検診を受け易くする環境を整えることで、たとえ社員ががんと診断されても余裕を持った対応が可能になります。
1. 半日単位や時間単位での有給休暇の取得が可能である(制度または相談にて対応可)

< なぜ重要か >

 がんの治療や精密検査、治療後のフォローアップのために定期的に通院することが一定期間続きます。通院に必要な時間は治療内容にもよりますが、丸一日費やすことは多くなく、2~3時間で終わるものがほとんどです。そのため、数時間職場を離れれば十分に通院をすませることができる場合が多く、半日あるいは時間単位での休暇制度があれば、日数に限りのある年次有給休暇を有効に活用することができます。また最近は、入院をしない(あるいは1日から2日の短期間の入院)で抗がん剤などの化学療法を実施している医療機関もあり、仕事を継続しながらがんの治療を続けている人もいます。このような場合も1日単位ではなく時間単位で年次有給休暇を利用できると、治療と仕事の両立に役立ちます。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・半日単位での年次有給休暇がとれるようにする
・時間単位での年次有給休暇がとれるようにする
・出勤後に体調不良で早退した場合も、早退した時間以降を年次有給休暇として時間単位でカウントすることができるようにする

2. 傷病(療養)休暇が取得できる (制度または相談にて対応可)

< なぜ重要か >

 がんだけではなく、多くの病気で入院期間は短くなっています。しかし、退院したらすぐに職場復帰できるとは限りません。また、がんは手術や化学療法など体力を消耗する治療を要することが少なくありません。職場復帰後も治療や定期検査等で病院への通院や、急な体調不良による休みが必要となるなど、一定期間は不定期に仕事を休まざるを得ない状況が発生します。そのため、月単位で休みが必要になった場合に備え、年次有給休暇とは別に傷病(療養)休暇が取得できるよう、社内の規定を整備したり、社員から相談や申し出があった場合にはすぐに対応できるように備えることが重要です。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・月単位での傷病休暇制度を整備する
・傷病休暇制度がない場合も、未消化分の年次有給休暇を過去1年に遡って復活させて月単位での年次有給休暇を確保できるようにする

3. がん検診を受けやすいように会社で費用補助をしている

< なぜ重要か >

 がんになってしまった場合もごく早期に発見された場合は、治療に必要な時間や身体的な負担が少なくて済む可能性があります。早期発見のためには定期的にがん検診を受診することが重要です。しかし、労働安全衛生法で規定している定期健康診断の受診率が100%近いのに比べ、その精密検査やがん検診の受診率は高くありません。健康診断の精密検査やがん検診の受診率が低い背景には、「面倒くさい」「なんとなく怖い」など様々な理由があるようです。必要に応じて精密検査や受けることを含めて、会社として可能な限りがん検診を受けやすいサポート体制を整えることが大切です。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・健康診断の精密検査やがん検診を受ける必要性を社員に周知する
・社員全員を対象に、がん検診の費用を補助する
・受診する医療機関を選ぶことのできるカフェテリアプランなど受診しやすい仕組みを考え、一部の費用を福利厚生費で補助する
・がん検診の受診費用補助制度を社員に周知する
・社員が住んでいる自治体が提供するがん検診を受けることを奨励する

4. 勤務時間内に受診できるよう、特別休暇制度などを設けてがん検診の受診を奨励している

< なぜ重要か >

 がん検診の受診率が低い理由として「忙しくて受診する時間がない」というものもあります。たしかに、多くの医療機関の診療時間は平日の日中のみで、仕事をしている人ががん検診を受けることは時間的にも難しい可能性があります。そのため会社として、がん検診を受けやすい「時間的なサポート」を考えてみましょう。たとえば、がん検診特別休暇や定期健診と同じタイミングで受診することなど、時間の面からも受けやすい環境を整えることは、がん検診の受診率向上につながるでしょう。また、経営者や上司・安全衛生担当者などがきめ細やかに声かけをして、受診を促すことも大切です。

< 改善ヒント(こんな取組みが役立ちます) >

・がん検診を勤務時間内で受診できるようにする
・がん検診を定期健康診断と同じタイミングで受けることができるようにする
・がん検診後の要精密検査については自己負担で受けてもらうが、受診しやすいように勤務を調整したり、特別休暇制度を設けるなど受けやすい環境を作る
・健康診断の精密検査やがん検診の結果を、健康管理担当者に報告してもらう(受診していない場合は、健康管理担当者から受けるようにメールや対面で声かけする)

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