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国立がん研究センター

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リンパ腫の治療について

最終更新日:2023年10月17日

前回の動画▷リンパ腫の検査・診断について

治療までの流れ

リンパ腫の治療は、抗がん剤による化学療法と放射線治療が中心となります。造血幹細胞移植*を行う場合もあります。基本的には手術は行いませんが、リンパ節以外の臓器にリンパ腫がある場合は、手術を行うこともあります。患者さんの全身状態、病型や病期、悪性度に基づいて、治療方針を決定します。

*造血幹細胞移植:血球のもとになる正常な造血幹細胞を移植する治療法で、大量化学療法などによる移植前処置後に投与する。
(参考)国立がん研究センターがん情報サービス「造血幹細胞移植

治療法

薬物療法

悪性リンパ腫の治療では、抗がん剤や分子標的薬を組み合わせて投与する多剤併用療法が治療の中心となります。薬剤の組み合わせにはさまざまなパターンがあります。非ホジキンリンパ腫の患者さんに対する初回治療には、3種類の抗がん剤(シクロフォスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン)とステロイド(プレドニゾロン)の併用療法(CHOP療法)、CHOP療法に抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブを併用するR-CHOP療法、抗CD79b抗体薬物複合体であるポラツズマブ ベドチンを併用するPola-R-CHP療法、ベンダムスチンとリツキシマブを併用するBR療法などの治療法があり、病型や患者さんの状態によって治療法を選択します。

一方、ホジキンリンパ腫に対する初回治療には、4種類の抗がん剤(ドキソルビシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジン)を組み合わせるABVD療法や、ブレオマイシンの代わりに抗体薬物複合体のブレンツキシマブ ベドチンを併用するA-AVD療法などがあります。

これらのリンパ腫に対する初回治療の多くは一般的に外来通院で行います。再発をした患者さんでは初回治療として用いた治療とは違う抗がん剤を組み合わせた治療を用いることが多いです。

放射線治療

ゆっくり進行するタイプの悪性リンパ腫で病変が狭い限られた範囲にある場合は、放射線単独で治療できる場合もあります。リンパ腫を治す目的以外にも、一時的に症状を緩和して苦痛を和らげる目的や、造血幹細胞移植前に放射線治療を行うことがあります。 

造血幹細胞移植

骨髄などから造血細胞のもとになる造血幹細胞を取り出し、患者さんに移植する方法です。

造血幹細胞移植には、患者さん本人の造血幹細胞をあらかじめ採取、冷凍保存しておき、大量化学療法という強力な抗がん剤治療に引き続いてそれを体に戻す「自家移植」と、提供者(ドナー)から造血幹細胞移植を提供してもらう「同種移植」があります。リンパ腫の治療では、自家造血幹細胞移植*が主となっています。

*自家末梢血幹細胞移植:事前に血液中にある造血幹細胞を採取し、凍結しておいて、それを移植する方法。通常、造血幹細胞は血液中にはいないため、白血球をふやす薬であるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与したあと、骨髄から血液中に流れ出した造血幹細胞を「血球成分分離装置」を使って採取する。リンパ腫の治療では自家末梢血幹細胞移植を行うことが多い。
(参考)国立がん研究センターがん情報サービス「自家造血幹細胞移植

病型や病期によって、選択される治療法はさまざまです。以下は、代表的な病型に対する標準的な治療法です。
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ホジキンリンパ腫の治療

I期、II期(限局期)の治療では、ABVD療法(ドキソルビシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジン)もしくは、ABVD療法と放射線療法の併用療法が行われます。

III期、IV期(進行期)では、A-AVD療法(ブレンツキシマブ ベドチン・ドキソルビシン・ビンブラスチン・ダカルバジン)もしくはABVD療法が行われます。

非ホジキンリンパ腫の治療

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

非ホジキンリンパ腫のなかでもっとも多い病型です。限局期の治療は、CHOP療法(シクロフォスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン・プレドニゾロン併用療法)、抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブを併用するR-CHOP療法が標準的治療法と位置づけられています。放射線治療を併用することもあります。進行期ではPola-R-CHP療法(ポラツズマブ ベドチン・リツキシマブ・シクロホスファミド・ドキソルビシン・プレドニゾロン)もしくはR-CHOP療法が行われます。

濾胞性リンパ腫

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に次いで頻度が高く、年単位でゆっくり進行する緩徐進行性のB細胞リンパ腫に位置付けられています。進行期(ステージIII、IV)で低腫瘍量*1の場合は、無治療で経過観察もしくは抗CD20モノクローナル抗体のリツキシマブ単剤療法が行われます。高腫瘍量*2の場合は、抗CD20抗体(リツキシマブまたはオビヌツマブ)併用化学療法が行われます。具体的には抗CD20抗体とベンダムスチンを組み合わせた治療や、同じくCHOP(シクロホスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン・プレドニゾロン)またはCVP(シクロホスファミド・ビンクリスチン・プレドニゾロン)を併用した治療などが用いられます。

*1 低腫瘍量:リンパ腫の病変がそれほど大きくなく、リンパ腫による症状がなく、リンパ腫病変のために臓器の働きが悪くなるおそれがない状態のことです。
*2 高腫瘍量:リンパ腫の病変が一定以上の大きさであったり、リンパ腫による症状があったり、リンパ腫病変のために臓器の働きが悪くなったり、そのおそれがある状態のことです。

マントル細胞リンパ腫

急速進行性のB細胞リンパ腫で、年齢や全身状態から実施可能と判断されれば、強化型多剤併用療法を行い、さらに、自家移植を行います。高齢者や合併症などのために強化型化学療法や自家移植が行えない場合には、リツキシマブ・ベンダムスチン併用療法などが行われます。

バーキットリンパ腫

進行の早い超急速進行型のリンパ腫で、入院して行う抗CD20抗体併用の強力な化学療法がすすめられます。

妊孕性について

リンパ腫は高齢者に多いがんですが、若い患者さんでは、造血幹細胞移植や抗がん剤の影響で、卵巣や精巣がダメージを受け、将来子どもを持つことが困難になる場合もあります。治療前に卵子や精子を凍結保存しておくことも可能ですので、将来、子どもを持ちたいと考えている方は、主治医にご相談ください。がん相談支援センターでも相談を受け付けています。

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