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国立がん研究センター

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多発性骨髄腫の病気について

最終更新日:2023年7月28日

多発性骨髄腫とは?

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多発性骨髄腫(Multiple Myeloma: MM)は、血液細胞の一つである「形質細胞」ががん化することで起こるがんです。形質細胞は、白血球の中のリンパ球のうち、B細胞から分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)した細胞で、体内に侵入してきた病原菌やウイルスなどの異物と戦うためのタンパク質である「抗体」をつくり、感染や病気から体を守ります。しかし、形質細胞ががん化して異常細胞(骨髄腫細胞)になると、異物を攻撃する能力がない、役立たずの抗体(Mタンパク)をつくり続けます。骨髄腫細胞が骨髄の中で増殖し、つくられたMタンパクが血液や臓器の中へ蓄積されていくことで、全身にさまざまな症状を引き起こします。

形質細胞ががん化する「形質細胞腫瘍」*にはいくつかの種類がありますが、もっともよく知られているのが多発性骨髄腫です。日本では人口10万人あたり6.0人が発症するといわれており(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)より)、すべてのがんの約1%、血液がんの約10%を占めています。若い人の発症は稀ですが、年齢が上がるとともに発症数は増え、高齢化とともに今後さらに増加が予想されています。
*形質細胞腫瘍:血液細胞の一つである形質細胞ががん化する疾患で、多発性骨髄腫のほか、形質細胞腫、マクログロブリン血症などがある。

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原因

多発性骨髄腫では、何らかの理由によって、骨髄腫細胞にさまざまな遺伝子異常や染色体異常が生じていることが知られていますが、はっきりした原因はよくわかっていません。

症状

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多発性骨髄腫の症状には、大きく分けて、1造血機能の抑制によって起こる症状、2Mタンパクの増加によって起こる症状、3骨の破壊によって起こる症状があり、全身にさまざまな症状や臓器障害があらわれます。

しかし、病気の初期にはほとんど自覚症状がなく、健康診断や人間ドックの血液検査や尿検査で異常を指摘されて病気が判明する場合や、風邪などの感染症が長引くことでたまたま見つかるケースも増えています。かなり進行すると、貧血や骨折、骨や関節の痛みなどがあらわれることもありますが、症状については個人差が大きく、まったくない人もいるため注意が必要です。

造血機能の抑制によって起こる症状

骨髄腫細胞が増殖することにより、正常な血液細胞をつくる働き(造血機能)が低下します。赤血球が減少すると、貧血の症状(息切れや動悸など)があらわれます。また、白血球が減少すると、ウイルスなどに感染しやすくなり、血小板が少なくなると、鼻血や歯茎から出血しやすく、出血がとまりにくくなることもあります。

Mタンパクの増加によって起こる症状

骨髄腫細胞が増加して、正常な血液細胞の居場所まで占領してしまうため、免疫機能が低下し、ウイルスや細菌などにかかりやすくなります。また、骨髄腫細胞が大量のMタンパクをつくり出すことで、血液がドロドロの状態となり(過粘稠度症候群)*、血液の循環が悪くなって、視覚障害などが起こります。Mタンパクの一部が大量に尿中に排泄されるため、腎臓に大きな負荷がかかり、腎障害の原因にもなります。さらに、Mタンパクは、アミロイド*という有害なタンパク質となって、さまざまな臓器に沈着して、機能を低下させてしまうこともあります(アミロイドーシス)。

*過粘稠度症候群:血液中のMタンパクが大量に増加することにより、血液がドロドロの状態となり、血液の流れが悪くなる状態。
*アミロイド:水に溶けない性質を持つ異常なタンパク質。分解されにくく、さまざまな臓器に付着して機能低下を引き起こす。

骨の破壊によって起こる症状

骨の代謝(修復と破壊)のバランスが崩れ、破骨細胞(骨を溶かす細胞)が活性化するため、骨がもろくなり、骨折しやすくなります。また、骨が溶けることで、血液中のカルシウム濃度が高くなり(高カルシウム血症)、口の渇き(口渇)、意識障害、便秘、吐き気などの症状があらわれることがあります。

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多発性骨髄腫の解説

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