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国立がん研究センター

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多発性骨髄腫の治療について

最終更新日:2023年10月17日

前回の動画▷多発性骨髄腫の検査・診断について

多発性骨髄腫の治療について

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多発性骨髄腫に対する治療が必要になるのは、骨髄腫細胞による臓器障害(高カルシウム血症、腎不全、貧血、骨折など)や腰痛などの症状があらわれた場合です。症状や臓器障害がない意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、くすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫は、すぐに治療を必要としませんが、症候性の多発性骨髄腫に移行することもあるため、定期的に検査を行いながら、経過を観察します。

主な治療法は、骨髄腫細胞をできる限り減らすために、抗がん剤による化学療法が中心となります。年齢や合併症などの条件から、自家造血幹細胞移植(じかぞうけつかんさいぼういしょく)*ができる(移植適応)場合は、化学療法に続き、大量化学療法と自家造血幹細胞移植を行い、できない(移植非適応)の場合は、通常の化学療法を行います。
また、多発性骨髄腫では、病態が進行するにつれて、重大な合併症(骨折による骨髄圧迫や腎不全など)が起こる場合があるため、骨髄腫に対する治療より、合併症の治療を先行させることもあります。

自家造血幹細胞移植:患者自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・保存しておき、大量化学療法による移植前処置後に投与する。
(がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/index.html

移植ができる患者さん(65歳未満)の場合

65歳未満で、重い感染症や肝・腎の障害がなく、心機能にも問題がないなどの条件を満たす場合は、自家造血幹細胞移植が行われます。まず、複数の抗がん剤やステロイド剤、分子標的薬などを組み合わせた化学療法(導入療法)を3~4コース(1コースは約3週間)行います。導入療法によってMタンパクが一定程度以上減少すると「奏功(そうこう)した」と判定され、大量の抗がん剤を投与して(大量化学療法)、骨髄腫細胞をできる限り死滅させてから、患者さんの血液中にある造血幹細胞を摂取し(末梢血幹細胞採取)*、それを再び投与(自家末梢血幹細胞胞移植)*して、造血機能を回復させます。奏功に至らない場合は、他の薬剤を用いた導入療法に変更します。

自家末梢血管細胞移植:事前に血液中にある造血幹細胞を採取し、凍結しておいて、それを移植する方法。通常、造血幹細胞は血液中にはいないため、白血球をふやす薬であるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与したあと、骨髄から血液中に流れ出した造血幹細胞を「血球成分分離装置」を使って採取する。骨髄腫の治療では、安全性の面から、自家末梢血幹細胞移植を行うことが多い。 
(がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/index.html

移植ができない患者さん(65歳以上)の場合

65歳以上の患者さんや合併症などのために自家造血細胞移植ができない移植非適応の患者さんには、複数の薬剤を併用した化学療法を続けることになります。高齢者や合併症がある患者さんには、薬剤の量を減らすなど、副作用を考慮しながら慎重に病状をコントロールしていきます。

多発性骨髄腫の標準治療では、様々な対応の薬剤を併用する化学療法を行います。近年、新規薬剤と呼ばれるボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイドが使用できるようになり、難治性の多発性骨髄腫にはポマリドミドが承認されました。さらに、分子標的薬のカルフィルゾミブ、イキサゾミブ、エロツヅマブなども加わり、治療の選択肢が広がっています。

自家造血幹細胞移植を行う患者さんの導入療法では、主にBD療法(ボルテゾミブとデキサメタゾン)、もしくは、Ld療法(レナリドミドと低用量のデキサメタゾン)を行います。場合によっては3剤を組み合わせる場合もあります。移植前の大量化学療法では、主にメルファランが用いられます。

一方、移植を行わない患者さんでは、長らくMP療法(メルファラン、プレドニン)、またはCP療法(シクロフォスファミド、プレドニン)が標準療法でしたが、新規薬剤の登場により、近年では、D-MPB療法(ダラツムマブ、メルファラン、プレドニン、ボルテゾミブ)やD-LD療法(ダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン)が主流になっています。

薬物療法

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多発性骨髄腫の標準治療では、様々な対応の薬剤を併用する薬物療法を行います。近年、新規薬剤と呼ばれるボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイドが使用できるようになり、難治性の多発性骨髄腫にはポマリドミドが承認されました。さらに、分子標的薬のカルフィルゾミブ、イキサゾミブ、エロツヅマブなども加わり、治療の選択肢が広がっています。

移植を行わない患者さんでは、長らくMP療法(メルファラン+プレドニン)、またはCP療法(シクロフォスファミド、プレドニン)が標準療法でしたが、近年の新規薬剤の登場により、近年では、D-MPB療法(ダラツムマブ+メルファラン+プレドニン+ボルテゾミブ)やD-Ld療法(ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン)が主流になっています。ダラツムマブが使用できない場合には、患者さんの状態に応じて、ダラツムマブを除いたMPB療法(メルファラン+プレドニン+ボルテゾミブ)やLd療法(レナリドミド+デキサメタゾン)が行われます。

放射線治療

骨髄腫細胞は放射線に感受性が高く、腫瘍の縮小や痛みの緩和のために、放射線治療が行われることもあります。骨病変の範囲が限られているときは、少量の放射線照射でも効果が得られますが、病変が脊髄圧迫までおよんでいるいる場合は、ステロイド剤による治療なども並行して速やかに行う必要があります。

支持療法

多発性骨髄腫による合併症には、腎障害、過粘稠度症候群、感染症、骨病変、高い軽しうう血症などがあり、病状が進行するにつれて、さまざまな症状が現れます。症状が強い場合は、多発性骨髄腫の治療よりも、症状を抑えるための治療(支持療法)を優先させることがあります。

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