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国立がん研究センター

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産学連携全国がんゲノムスクリーニング「SCRUM-Japan」 第四期プロジェクトを開始アジアで肺がんの遺伝子スクリーニングを推進し、検査時間が短い最新の解析技術を導入(LC-SCRUM-Asia)/AIを用いたマルチオミクス解析で、がんの本態解明と新規治療開発を加速(MONSTAR-SCREEN-2)

2021年6月30日
国立研究開発法人国立がん研究センター
in English

発表のポイント

  • 広範な固形がんを対象とした日本初の産学連携がんゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan」の第四期の研究を2021年6月より開始しました。
  • 「LC-SCRUM-Asia」では、肺がんのスクリーニング基盤を東アジアに拡大し、また、検査時間が短い最新の解析技術を導入することで個別化医療の実現を目指します。
  • 「MONSTAR-SCREEN-2」は、RNAやタンパク質発現などを含めたマルチオミクス解析による分子プロファイリングを行い、がんの本態解明とそれによる新しい治療開発の推進を目指します。

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区、以下国立がん研究センター)は、進行固形がんを対象とした日本初の産学連携がんゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan(スクラム・ジャパン:Cancer Genome Screening Project for Individualized Medicine in Japan)」(プロジェクト代表者:国立がん研究センター東病院長 大津 敦)の第四期の研究を2021年6月より開始しました。2015年2月の設立から6年間で20,000例を超える進行固形がん患者さんが研究に参加し、世界最大規模のゲノムスクリーニング基盤に成長しました。また、進行固形がん患者さんの遺伝子解析結果や治療経過を含むデータを、セキュアな環境のもとで全国の医療機関と製薬企業で共有し、これまで11剤の新薬(13適応)と7種類の体外診断薬の薬事承認をサポートし、全国の患者さんに有効な治療薬・診断薬をいち早く届けてきました。

2021年3月までの第三期SCRUM-Japanでは、東アジアの医療機関と共同で、希少頻度の遺伝子変化を持つ肺がん患者さんを大規模にスクリーニングすることで、東アジアの新薬開発につなげることを目的とした「LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア)」と、第二期までの消化器がんに加え、頭頸部がんや泌尿器がん、婦人科がん、乳がん、皮膚がんなど広範な固形がん患者さんに対象を拡大し、血液を用いた遺伝子解析(リキッドバイオプシー)と腸内細菌叢(そう)解析*1を行う「MONSTAR-SCREEN(モンスター・スクリーン)」の大きく2つのプロジェクトで研究を進めてきました*2。

第四期SCRUM-Japanにおいて、「LC-SCRUM-Asia」では、2019年3月からこれまで日本、台湾で展開してきた肺がんの国際的スクリーニング基盤に、タイやマレーシアなどの東南アジア諸国も参加することによりアジアの国際競争力を高め、標的遺伝子を対象とした治療薬及び診断薬開発を推進し、東アジアの個別化医療の実現を目指します。また、「MONSTAR-SCREEN」は新たに「MONSTAR-SCREEN-2」として、DNAによる遺伝子異常の評価のみならず、RNAやタンパク質発現などを含めたマルチオミクス解析*3による分子プロファイリングを行うことで、がんの本態解明とそれによる新しい治療開発を推進していくことを目指します。

「SCRUM-Japan」は、引き続き、有効な治療を適切な患者さんにいち早く届けるため、さらに活動を加速してまいります。

第四期プロジェクトの概要

LC-SCRUM-Asia(エルシー・スクラム・アジア:Lung Cancer Genomic Screening Project for Individualized Medicine in Asia、アジア肺がん遺伝子診断ネットワーク)(旧:LC-SCRUM-Japan)

LCSCRUM.png

プロジェクト代表者:国立がん研究センター東病院 呼吸器内科長 後藤 功一

1.アジア諸国へ遺伝子スクリーニング基盤を拡大

日本では、次世代シーケンサー(NGS)*4を用いた網羅的な遺伝子解析が一般化し、個別化医療が本格化してきましたが、アジア諸国における個別化医療は、まだ発展途上の段階です。アジアにおいて発生頻度が高い遺伝子変化に対する治療開発を進めるためには、アジア人の遺伝子解析データを広く収集するスクリーニング基盤の構築が必要です。第四期LC-SCRUM-Asiaでは、第三期に台湾が参加したスクリーニング基盤を活かし、さらにタイやマレーシアなどの東アジアにも拡大することで、アジアでの個別化治療の実現と治療開発の促進に貢献していきます。

2.検査所要時間(TAT)の短縮を維持した網羅的なバイオマーカーの探索

NGSの導入により多くの遺伝子を一度に解析することが可能になりましたが、現状でTATが2-3週間かかることは、特に初回治療において、解析結果を治療に結びつけるための障壁になっています。LC-SCRUM-Asiaでは、TATが3-5日と短く、50種類のがん遺伝子変化の検出が可能な、次世代シーケンサー解析システム「Ion TorrentTMGenexusTM System (Genexus)/ Ion TorrentTM OncomineTM Precision Assay (OPA)」を第三期より導入していますが、更に第四期では、遺伝子発現の解析まで行える大型のNGSパネルである「AmoyDx master panel®(AMP)」を導入します。AMPは、DNAを用いた解析では571遺伝子を、RNAを用いた解析では2660遺伝子を標的としています。治療標的となる遺伝子変化の網羅的な探索のみならず、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測バイオマーカーを、短いTATで行うことが可能となり、新たな治療開発につなげていくことを目指していきます。

3.血液を用いた新たなNGSパネル(Genexus/OPAリキッドシステム)の導入

近年の遺伝子解析技術の進歩は目覚ましいものの、がんゲノム医療における課題のひとつとして、検体採取における患者さんの肉体的・精神的負担(侵襲)が挙げられます。そこで最近は、より簡便で低侵襲な、血液を用いた遺伝子解析(リキッドバイオプシー)の開発が進んでいます。従来のリキッドバイオプシーでは、がん患者さんの血液中に存在する腫瘍由来のDNAを解析することで、腫瘍に起こっている遺伝子変化を検出していましたが、課題として、通常はRNAを用いて検査を行う融合遺伝子の検出感度が極端に低いことが挙げられています。また、リキッドバイオプシーの多くは、国外で解析が行われており、検体の搬送などに多くの労力を必要としていました。この現状を打開するために、LC-SCRUM-Asiaでは、リキッドバイオプシーが国内で実施可能となる「Genexus/OPAリキッドシステム」を第四期から導入します。Genexus/OPAリキッドシステムは、血液中のDNAとRNAを用いてがん関連50遺伝子を迅速に解析し、これまでの血液の遺伝子解析では検出感度が低かった融合遺伝子をRNAから効率よく検出することが期待されています。この新たな血液解析システムを導入し、患者さんの負担が少なく、解析精度が高い診断薬の開発を目指します。

4.遺伝子解析結果と治験情報を患者さんへ直接提供し、臨床試験を推進

LC-SCRUM-Asiaには、これまでに13,000例を超える肺がんの患者さんが登録され、様々な遺伝子変化に対する治療薬の開発に貢献してきました。しかし、遺伝子変化が見つかっても対象となる臨床試験へ登録された割合は5%程度とまだ低いのが現状です。第四期では、LC-SCRUM-Asiaへ登録してくださった患者さんご自身へ、遺伝子解析の結果とそれに関連する臨床試験の情報を提供する予定です。臨床試験への参加を啓発することで、患者さんの協力のもとで、治療開発や診断薬開発を推進していくことを目指していきます。

MONSTAR-SCREEN-2(モンスター・スクリーン・ツー:Max Onco-Network with STARS-SCREEN-2、未来のがん治療の星(スター)となる若手ドクターとともに創る世界最大のがん研究ネットワーク)(旧:GI-SCREEN-Japan, MONSTAR-SCREEN)

MONSTAR.png

プロジェクト代表者:国立がん研究センター東病院 消化管内科長 吉野 孝之

1.AI(人工知能)を用いたマルチオミクス解析によるがんの本態解明

がん細胞はDNAの変化だけでは捉えられない様々な異常を有していると言われており、その本態解明には、DNAによる遺伝子異常の評価のみならず、RNAやタンパク質などを含めたマルチオミックス解析による分子プロファイリングが求められています。

MONSTAR-SCREEN-2では、腫瘍組織から抽出したDNA/RNAを用いたマルチオミクスアッセイ「MI Profile」を新たに導入し、全エクソーム解析(WES)*5、全トランスクリプトーム解析(WTS)*6を行います。さらに、免疫組織染色(IHC)*7を行い、臨床検体におけるタンパク質発現・局在を評価することで、がん細胞のみならず、腫瘍免疫微小環境を構成する様々な細胞やマーカーを含めた網羅的な解析を行います。従来のゲノム解析にとどまらないマルチオミクス解析の導入により、多様性・複雑性に富むがんの理解を深め、本態解明とそれによる新しい治療開発を目指します。

また、血液から抽出した血中循環腫瘍由来核酸(ctNA)を用いたマルチオミクスアッセイ「MI Profile™ Blood」を導入し、薬物療法前後におけるctNAのWES/WTS解析を行うことで、がんの時空間的不均一性や治療抵抗性の機序についても評価を行っていきます。

これらマルチオミクスデータにより得られるデータは膨大であることから、多量かつ多種類の情報を処理し病態の本質を抽出するための情報処理としてAIを用いた解析も導入します。多層的でより病態の本質・治療効果を反映したバイオマーカーを明らかにすることで、患者さんにとって真に最適な個別化医療の実現を目指して研究を進めていきます。

2.個別化医療構築に向けた国際データ統合

2021年2月より、「MONSTAR-SCREEN」は国際がんゲノムコンソーシアム「ICGC-ARGO」に参加しました*8。ICGC-ARGOは、100,000症例のがんのゲノムデータを集積し、かつ同時に豊富な臨床情報とともに解析を行うことで、がん撲滅に向けた重要かつ未解決の課題に取り組む国際的プロジェクトです。MONSTAR-SCREENが参加することにより、がんの原因と制御に関する研究を加速させ、がんゲノム医療の発展に資することが期待されています。「MONSTAR-SCREEN-2」のデータも、今後ICGC-ARGOへの提供が計画されています。引き続き国際協調のもと、ゲノム解析データに質が高い臨床情報が付加されたビッグデータベース構築への協力と、それを利活用することによる世界レベルでの新たながん診断・治療技術の開発等を目指します。

第三期プロジェクトまでの成果

1)企業・医師主導治験での成果

20,000例を超えるがん患者さんの臨床・ゲノムデータが得られ、その中で希少頻度の遺伝子変化を有する患者さんが、医師主導治験、企業治験に登録されました。最終結果が報告された30試験中、11剤の新薬(13適応)で薬事承認をサポートしました。また、SCRUM-Japanで収集した遺伝子解析データを基に、7種類の体外診断薬においても薬事承認をサポートしました。

2) 医師主導治験全国ネットワークと産学での臨床ゲノムデータ共有システムの構築

現在、国内の9施設において、SCRUM-Japanのゲノムスクリーニング基盤を活用した21の医師主導治験が行われています。また、オンライン臨床ゲノムデータは66のアカデミア施設、17の製薬企業との間で共有・二次利用されており、参加医療機関での研究活用が加速しています。

3) 臨床・ゲノムデータ産学共有による新たな創薬・臨床開発

SCRUM-Japanデータベースを活用し、新しい耐性メカニズム・治療標的の発見や、新規医師主導治験がアカデミアで開始されました。また、データベースを共有した国内企業による新薬開発のための企業治験も行われています。

4) リキッドバイオプシーの実用化

2018年より、患者さんの血液から腫瘍の遺伝子スクリーニングを行うリキッドバイオプシー研究に取り組んでいます。従来の腫瘍組織の遺伝子スクリーニングと比べ、検査結果が分かるまでの時間も短縮され、以前よりも多くの患者さんが新薬の企業・医師主導治験に参加することを可能にしています。また、がんの遺伝子変化をリアルタイムに知ることにより、新たな研究や治療薬の開発を推進しています。

第四期プロジェクトの概要

実施予定期間

2021年6月~2024年3月31日(更新の可能性あり)

対象症例

進行固形がん

肺がん、大腸がん(直腸がん、結腸がん含む)、胃がん、食道がん、肝細胞がん、胆道がん(胆のうがん、肝内胆管がん含む)、膵がん、小腸がん(十二指腸がん含む)、虫垂がん、肛門管がん、消化器原発の神経内分泌腫瘍/がん、消化管間質腫瘍GIST、乳がん、皮膚がん(悪性黒色腫、メルケル細胞がん)、頭頸部がん、前立腺がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、腎細胞がん、卵巣がん、卵管がん、腹膜がん、子宮体がん、子宮頸がん、骨軟部悪性腫瘍、原発不明がん

目標症例数

  • LC-SCRUM-Asia:肺がん5,000例 
  • MONSTAR-SCREEN-2:肺がん以外の進行固形がん2,750例

参加企業(2021年6月現在)

アムジェン株式会社、株式会社医学生物学研究所、エーザイ株式会社、小野薬品工業株式会社、協和キリン株式会社、第一三共株式会社、大日本住友製薬株式会社、大鵬薬品工業株式会社、武田薬品工業株式会社、中外製薬株式会社、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、バイエル薬品株式会社、ヤンセンファーマ株式会社

参加医療機関(2021年6月現在)

  • LC-SCRUM-Asia:158施設
  • MONSTAR-SCREEN-2:31施設

用語解説

*1 腸内細菌叢(そう)

ヒトの大腸には多数の雑多な腸内細菌が生育し、腸内細菌叢と呼ばれる集団を形成しています。

*2 2019年9月12日 産学連携全国がんゲノムスクリーニング「SCRUM-Japan」第三期プロジェクトを開始 

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/0912_1/index.html

*3 マルチオミクス解析

遺伝子解析(ゲノミクス: Genomics)・RNA解析(トランスクリプトミクス: Transcriptomics)・蛋白質解析(プロテオミクス: Proteomics)等をすべて一括して分析する手法で、“ミクス (-omics)”は総合的解析を意味します。

*4 次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)

DNA(遺伝子)の塩基配列を、高速にかつ大量に読み取る解析装置。

*5 全エクソーム解析(WES)

全遺伝子(約2万2千遺伝子)のエクソン領域(タンパク質をコードする部分)を網羅的に解析する手法。

*6 全トランスクリプトーム解析(WTS)

全遺伝子(約2万2千遺伝子)から転写されたRNAを網羅的に解析する手法。

*7 免疫組織染色(IHC)

組織上の目的成分の存在や局在を顕微鏡下で可視化するために、特異抗体を利用して標的抗原を検出する手法。

*8 2021年5月17日 国際がんゲノムプロジェクトICGC-ARGOに「MONSTAR-SCREEN」が参加 

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2021/0517/index.html

お問い合わせ先

患者さん・医療機関・企業等からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 SCRUM-Japan事務局
電話番号:04-7133-1111(代表) E-mail:scrum_office●east.ncc.go.jp
参加方法:http://www.scrum-japan.ncc.go.jp/patient_participate/

取材・報道関係からのお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室(柏キャンパス)
電話番号:04-7133-1111(代表) FAX:04-7130-0195  E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp

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