コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター

トップページ > 広報活動 > プレスリリース > アジアに多い難治がん6がん種でアジア国際共同研究を実施

アジアに多い難治がん6がん種でアジア国際共同研究を実施リキッドバイオプシーによる遺伝子解析・臨床情報データベースを構築し個別化治療の研究開発を目指す

2021年12月23日
国立研究開発法人国立がん研究センター
in English

発表のポイント

  • アジアでの発生頻度が高い6種類のがん(子宮頸がん、卵巣明細胞がん、卵巣がん、上咽頭がん、子宮体がん、トリプルネガティブ乳がん)に対して、血液による遺伝子解析および臨床情報を合わせたデータベースを構築・解析する国際共同研究を実施します。
  • 日本とアジア7か国、検査機器開発企業5社との協働により、それぞれのがん種に適した遺伝子パネル検査を用いて、アジアにおける研究開発のデータ基盤を構築します。
  • データベースの解析により治療標的となる遺伝子異常を明らかにし、アジアに多い難治がんに対する個別化治療の研究開発を目指します。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:島田 和明)は、アジアの子宮頸がん、卵巣明細胞がん、卵巣がん、上咽頭がん、子宮体がん、乳がん患者を対象に、血液を用いるリキッドバイオプシーで網羅的に遺伝子異常を調べ、治療の詳細や予後などの臨床情報と合わせたデータベースを構築・解析し、治療標的となりうる遺伝子異常の特定や治験の実施につなげるアジア多施設共同前向き研究*1「A-TRAIN(エー・トレイン)」を韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムのアジア7か国の施設と協力して実施します。

これらのがんは、日本をはじめアジアでの発生頻度が高く、また難治がんであることから新規治療開発が強く望まれています。しかし、欧米主導では研究開発が進みにくいため、アジア地域で連携して主導的に研究開発を進めていくことが欠かせません。しかし、アジア地域では臨床検査品質の標準化が十分でない等の課題と、また世界的にも腫瘍組織の採取が難しいがんの臨床検査開発の課題があります。そのため本研究では、より簡便な血液を用いた遺伝子解析で実施し、これらの課題解決にも取り組みます。血液による遺伝子解析は、患者さんの負担が少なく、さらに治療経過に応じた検査・解析も可能となり、検体の品質管理もしやすいことから臨床活用への期待が高まっていますが、腫瘍組織に比べて感度が低いなどの課題もありさらなる臨床研究が求められています。本研究は、「アジアがん臨床試験ネットワーク構築に関する事業(ATLAS Project)」の中で実施し、アジアでの臨床試験実施基盤の構築にも取り組みます。

研究方法

本研究では、検査機器開発企業や国立がん研究センター研究所と協力し、がん種ごとに特徴的な遺伝子異常などを選出した血液用の遺伝子パネル検査を用いてがんに関連する遺伝子を解析し、各がんの遺伝子異常の情報について患者情報との統合解析を実施します。

転移性および/または再発の病変を有する6がん種の患者さん約500名を対象に血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)*2を網羅的に解析し、同時に臨床情報を収集しデータベースを構築・解析し、治療標的となりうる遺伝子異常の特定や治験の実施を目指します。また、腫瘍組織を用いたパネル検査も実施し、血液による解析との一致度も解析します。

図1. アジア多施設共同前向き研究「A-TRAIN」の全体像
Fig1.png

アジア多施設共同前向き研究「A-TRAIN(エー・トレイン)」

ATRAIN.jpg

子宮頸がん

研開始時期

2021年12月

参加国

日本、マレーシア、タイ、シンガポール、ベトナム

登録数

100名

遺伝子解析

Guardant Health Asia, Middle East & Africa (AMEA)

卵巣明細胞がん

開始時期

2021年12月

参加国

日本、フィリピン、マレーシア、タイ、シンガポール、ベトナム

登録数

50名

遺伝子解析

サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ

上咽頭がん

開始時期

2021年12月

参加国

日本、フィリピン、マレーシア、タイ、シンガポール、台湾、ベトナム

登録数 

 96名

遺伝子解析

イルミナ株式会社

卵巣がん

開始時期

2021年12月

参加国

日本、台湾、ベトナム

登録数

100名

遺伝子解析

中外製薬株式会社、Roche社

子宮体がん

開始時期

2022年2月

参加国

日本、フィリピン、マレーシア、タイ、台湾、ベトナム

登録数

60名

遺伝子解析

サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ、国立がん研究センター研究所

トリプルネガティブ乳がん

開始時期

2022年1月

参加国

日本、韓国、フィリピン、タイ、シンガポール、ベトナム

登録数

100名

遺伝子解析

国立がん研究センター研究所

参加予定施設(2021年12月23日時点)

  • 国立がん研究センター中央病院
  • St. Luke’s Medical Center, Philippines
  • Hospital Umum Sarawak, Malaysia
  • University Malaya Medicine Center, Malaysia
  • Hospital Kuala Lumpur, Malaysia
  • National Cancer Institute, Malaysia
  • National University Cancer Institute, Singapore
  • National Taiwan University Hospital, Taiwan
  • National Cancer Hospital of Vietnam, Vietnam
  • Ho Chi Minh City Oncology Hospital Vietnam
また、上記の国の他の施設や、タイ・韓国の施設も参加予定です。

参加企業

  • Guardant Health Asia, Middle East & Africa (AMEA)
  • サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ
  • イルミナ株式会社
  • 中外製薬株式会社
  • Roche社
  • 株式会社インテリム
  • 株式会社エスアールエル
  • Eurofins

研究代表者

yonemori.jpg

国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科長 米盛 勧

研究代表者メッセージ 

国立がん研究センター中央病院では、アジアのがん患者さんのためにアジアの治療開発を促進する研究をアジアの医師や研究者と議論を重ね、この度、Asian multicenter prospective study of circulating TumoR DNA SequencINg (A-TRAIN)を開始いたしました。
A-TRAIN、アジアを駆け抜ける列車、さあ、“TRAIN”と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? 力強く前に進む蒸気機関車、ワクワクする人生の冒険に連れて行ってくれる列車、人との出会いや別れのある駅など色々あります。
このプロジェクトは、我々国立がん研究センターの中央病院・日本医療研究開発機構・様々な企業の支援や協力など様々な人の情熱とエネルギーを原動力にA-TRAINとして走り出しました。 私たちが、私たちのため、そして誰かのために役割をそれぞれ担うもので進んでいきます。
さあ、アジアに生きる我々を載せてワクワクする未来に連れて行ってくれる夢の列車になるように皆さんと手を握り合って前に進めていきましょう。

研究の背景

2020年の統計では全世界で新規のがんと診断される人数は約1,930万人で、がんによる死亡は約996万人と推計されています。それらの中で、アジアの占める割合は約半数(図2)にも上ります。アジア諸国を含む途上国では、平均寿命の延長、喫煙者の割合が多いこと、がん検診制度が整備されていないことなどに加えて、子宮頸がんや咽頭がん、肝臓がんなどアジアで発生頻度が高いがん種が存在し、それらに対する研究開発が不十分であることなどが原因と考えられています。

図2. 世界の新規がん患者推計数(2020年)
Fig2.jpg
 

近年、がんの遺伝子情報を基に治療方法を決めるがん遺伝子パネル検査*3が開発され、がんゲノム医療が推進されています。国立がん研究センターが開発を手掛けた「OncoGuideTM NCCオンコパネルシステム」が2018年12月25日に医療機器として承認されていますが、腫瘍組織を検査に用いるため、腫瘍組織を十分に採取できない状況や、腫瘍組織の劣化によって遺伝子解析ができない場合、リアルタイムの患者さんの遺伝子情報を評価したいなどの目的として、血液を用いた遺伝子パネル検査の開発が求められています。

「ATLAS Project」について

「ATLAS Project:Asian clinical TriaLs network for cAncerS project」は、アジア地域でがん治療開発を今後積極的に推進しようとしているマレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムと共に、国際共同試験のプラットフォームを日本主導で構築し、がんゲノム医療の導入と薬事承認申請のための医師主導治験/企業治験の実施を通じたアジア地域におけるがんの早期薬剤開発の発展を目指しています。また、アジア地域でのドラッグアクセスの改善とがんゲノム医療の本格的な導入を推進することでアジア全体での開発力を高め、アジア特有の課題をアジアで解決することを目指します。

日本にとってもアジア諸国と共同して治験を実施することにより、早期に試験を完了することができ、迅速な新規薬剤承認につながることが期待されます。最終的にはアジア地域での確固たる臨床試験ネットワークを構築し、アジアが世界の治療開発をリードしていくことを目指します。

ATLAS.jpg

2020年9月9日 プレスリリース

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0909/index.html

研究費

本研究は、研究費として、「公益財団法人小林財団 第8回(令和元年度)研究助成金 研究代表者:中央病院 腫瘍内科 科長 米盛 勧」のほか、「日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験推進研究事業(アジア地域における臨床研究・治験ネットワークの構築事業)補助事業代表者:中央病院 院長 島田和明」の一部を研究運営に使用しています。

用語解説

*1前向き研究

前向き研究は、患者さん協力のもと、新たにデータやサンプルを集め、実際に検証する研究です。一方、後ろ向き研究は診療情報や臨床検体など、カルテ記載事項、検査結果のデータ、組織サンプルを用いて様々な事柄を調査し、糸口を見つける研究です。

*2循環腫瘍DNA

ヒトの血液中には、からだの細胞が放出する遺伝情報(cell free DNA)が循環しており、さらにがん患者の血液中には、がん細胞由来の遺伝情報である、循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA)が循環していることが知られています。この循環腫瘍DNAを解析することにより、がんゲノム医療に役立てる研究が注目されています。今後、この技術を用いて治療薬を決定するコンパニオン診断、スクリーニング、治療効果のモニタリング、手術や放射線治療などの根治的治療後の残存病変の評価といった様々な目的に幅広く活用されることが期待されています。

*3がん遺伝子パネル検査

がん遺伝子パネル検査は、生検や手術などで採取されたがんの組織を用いて、高速で大量のゲノムの情報を読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置で、1回の検査で多数の遺伝子を同時に調べる検査です。遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などを含めその薬の使用を検討します。国立がん研究センターでは、迅速かつ精度の高い遺伝子異常の同定のため、癌関連遺伝子の変異、増幅、融合が1アッセイで検出可能なマルチプレックス遺伝子パネル検査試薬を用いた遺伝子検査システム(OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム)をシスメックス株式会社と共同で開発し、体外診断用医薬品・医療機器としての製造販売承認(2018年12月25日)および「標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者」を対象に、保険適用(2019年6月)が認められております。

問い合わせ先

研究に関する問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
臨床研究支援部門 研究企画推進部 国際研究支援室 
Eメール:NCCH1905_office●ml.res.ncc.go.jp

広報窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表) FAX:03-3542-2545 
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

関連ファイル

Get Adobe Reader

PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。