コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター

トップページ > 広報活動 > プレスリリース > 受動喫煙対策について法改正3年後の意識や課題を調査 受動喫煙対策強化について周知が不十分であり、普及啓発に課題

受動喫煙対策について法改正3年後の意識や課題を調査 受動喫煙対策強化について周知が不十分であり、普及啓発に課題

国立研究開発法人国立がん研究センター

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)は、5月31日の世界禁煙デーに合わせ、受動喫煙対策についての世論調査結果をウエブサイトに公開しました。
たばこによる健康への悪影響は科学的に明白で、たばこは本人の健康を損なうだけでなく、家族など周りの人の健康にも悪影響を及ぼします。
令和2年(2020年)4月より改正健康増進法(以下、法律または改正法)の施行に伴い、多数の人が利用する施設については原則屋内禁煙となり、違反者への罰則も設けられました。また、喫煙専用室等を設置する施設の入り口には喫煙環境を示す標識の掲示が求められ、標識を確認することでたばこの煙を避けることができるようになりました。さらに、望まない受動喫煙が生じないよう配慮義務も求められています。
そこで、国立がん研究センターは、法改正後3年が経過した現時点での受動喫煙対策に関する改正内容や標識の認知度、他人の煙に対する意識、屋内喫煙室や屋外喫煙所についての意識を把握することを目的に本調査を行いました。

受動喫煙対策に関するアンケート調査(報告書)

調査結果のポイント

改正健康増進法に関する認識

  • 法律が変わり、受動喫煙対策が強化されたことについて、喫煙者の39.2%、非喫煙者の70.3%が十分には知らないという結果で、普及啓発に課題があることがわかりました。
  • 店舗入り口の喫煙環境を示す標識について「見たことがある」と回答した人は、喫煙者が62.4%、非喫煙者が28.3%と、喫煙環境に対する意識が大きく異なることが読み取れました。

他人の煙についての意識

  • 屋外や自宅等での配慮義務について、非喫煙者は喫煙者に対して、周囲に人がいる場所では喫煙しないという配慮を求めていることがわかりました。
  • 他人のたばこの煙にさらされることを不快と感じている人は、非喫煙者では77.2%、喫煙者でも36.2%で、特に不快に感じた場所として「路上」が多いことから、屋外での喫煙に意識が向けられていることが考えられます

喫煙室・喫煙所についての意識

  • 喫煙者は、喫煙できる場所が減ってきていると感じている人が多いことがわかりました。
  • 喫煙室・喫煙所の設置は、喫煙者には支持されますが、非喫煙者では肯定的あるいは否定的と、認識がわかれる結果となりました。

調査概要

本調査は、たばこを取り巻く実態や対策に関する国民の意識を把握することを目的にしています。具体的なたばこ対策の検討や実施にあたっては、国民世論の動向だけでなく、代替案やコスト、政策効果などを、政策の特性に応じて比較衡量する必要があります。したがって、本調査結果は、あくまで政策検討のための参考の一つとしての位置づけです。

実施期間 令和5年4月19日(水曜日)から4月26日(水曜日)

  • 実施方法 インターネットによるアンケート調査(株式会社ネオマーケティングへ委託)
  • 回答者(性別・年代別の回収数は報告書3ページ表1参照)
    成人2,000名のうち、喫煙者(毎日吸っている、または時々吸う日がある)1,000名、非喫煙者(吸わない)1,000名と18歳・19歳29名の計2,029名
    注:20歳以上については、性別、年齢別、喫煙状況の実際の比率に合わせて結果を調整
  • アンケート調査の回答者について(参考)
    上述の調査概要のとおり、本調査はインターネット・アンケート調査を用いて実施しています。

「インターネット調査」には、(1)インターネット画面上で回答する、(2)調査対象が登録モニターである、という二つの特徴があります。前者は「測定誤差」、後者は「サンプリング・バイアス」の規定要因となり調査結果の誤差に影響を与える可能性があります。そこで委託先に、広範なカバレッジの中から確率的に回答者を集める方法が採られていること、モニターの募集、管理が適切になされ、質の確保がなされていることを確認しています。また、サンプリング・バイアスについては、性別、年齢別、喫煙状況の比率にあわせてウェイトバックを行い調整しています(調整の詳細については報告書3ページ表1、図1のとおり)。

主な結果

受動喫煙対策についての認知状況(報告書5から10ページ)(図1)

  • 法律が変わり、受動喫煙対策が強化されたことについて、喫煙者は60.7%が知っていたが非喫煙者は29.6%と、非喫煙者の方が知らない人が多いことがわかりました。
    図1の図

    図1【20歳以上・喫煙状況別】受動喫煙対策が強化されたことの認知度について

  • 20歳以上の全体では、法律が変わり受動喫煙対策が強化された内容のうち、知っていることとして「多数の人が利用する施設の屋内は原則禁煙になった」をあげた割合が53.4%で、続いて「病院・学校・行政機関等の施設は、他の施設より規制が厳しく、屋内に喫煙室が設置できない」が51.5%、「小規模飲食店では店によって喫煙できる店とできない店がある」が51.2%でした。一方で、喫煙環境を示す標識(図3)の掲示や喫煙室の基準について「知っている」という回答は3割に満たない結果となりました(図2)。
    図2の図
    図2【20歳以上全体】受動喫煙対策の強化について知っていること
  • 喫煙環境を示す標識を飲食店等で「見たことがある」は34.0%と、半数に満たない結果でした(図3)。
  • 受動喫煙対策が強化されたこと、煙を避けるための喫煙環境を示す標識については、2020年に全面施行された改正法のポイントでしたが、施行後3年が経過した現状において、なお普及啓発に課題があることがわかりました。
    図3の図
    図3【20歳以上全体】喫煙環境を示す標識を飲食店等で見たことがあるか

配慮義務について(報告書13から14ページ)

  • 法律では、屋外や自宅などでも望まない受動喫煙を防ぐための配慮義務を求めています。よいと思う配慮として回答順に、「周囲に人がいる場所では喫煙しない」と回答した人が62.5%、「こどもが同乗する自家用車内では喫煙しない」が57.4%、「こどもや患者等の特に配慮が必要な人が集まる場所や近くにいる場所等では喫煙しない」が56.0%でした(図4)。
  • 周囲に人がいる場所で喫煙しない配慮を求める意見が多いことが伺える結果でした。
    図4の図

    図4【20歳以上全員】たばこの配慮義務について、良いと思うもの

たばこの煙についての認識(報告書15から16ページ)

  • たばこの煙について、20歳以上全体で「不快に思う」と回答した人は半数以上の70.4%で、喫煙状況別にみると、喫煙者でも周りの人のたばこの煙を「不快に思う」36.2%と回答していました。非喫煙者は、「不快に思う」が77.2%と高く、喫煙状況によって認識が異なることがわかりました(図5)。

図5の図
図5周りの人のたばこの煙について

受動喫煙で不快な思いをした場所(報告書16ページ)

  • 受動喫煙で不快な思いをした場所については、「路上」という回答が最も多く64.1%でした。続いて、「屋外喫煙所の近く」が34.3%、「食堂・レストラン・フードコート等の主に食事を提供する店舗」が31.2%の順でした(図6)。
  • 法律の改正により屋内の受動喫煙対策が進み、不快に感じることが少なくなってきたためか、路上や屋外喫煙所近くなどの屋外で不快に感じる機会が相対的に意識されたと考えられます。
    図6【20歳以上全員】受動喫煙で不快な思いをした場所

    図6【20歳以上全員】受動喫煙で不快な思いをした場所

政府として力を入れてほしいたばこ対策(報告書24ページ)

  • たばこ対策について、政府として力を入れてほしいと思うことについては、「たばこ税の引き上げ」という回答が最も多く41.9%でした。続いて、「受動喫煙対策の強化」が41.5%とほぼ同じ割合でした(図7)。
    図7の図

    図7 【20歳以上全員】たばこ対策について、政府として力を入れてほしいと思うこと

まとめ

  • 本調査は、国民の意識を把握することを目的として、2023年4月にインターネット調査により実施し、2,029名(20歳以上の喫煙者1,000名、非喫煙者1,000名、18歳・19歳29名)の回答を得ました。
  • 法律が変わり、受動喫煙対策が強化されたことについての認知・理解度は全体で3割台と低いことから、普及啓発に重要な課題があることがわかりました。
  • 他人の煙を不快と感じる人の割合は高く、周囲に人がいる場所では喫煙しない配慮を求める意見が強いという結果が示されました。
  • 他人の煙を不快に感じた場所として路上が多いことから、屋内での受動喫煙対策が進み、屋外での喫煙に対して課題が認識される傾向にあるということがわかりました。
  • たばこ対策として、政府に力を入れてほしいと思うことは、たばこ税の引き上げ、受動喫煙対策の強化が意見として多くあがりました。
  • 今後、さらにこの調査を発展させ、以下のような調査研究を行うことで、国民の健康づくりを促進し、喫煙率を下げるための具体的な政策提言へつなげることができると考えます。
    • 受動喫煙強化のための法改正についての普及啓発活動の推進および効果検証
    • 受動喫煙対策をはじめとする各種たばこ対策による喫煙開始の抑制や喫煙率低下へのインパクト評価
    • 配慮義務の具体例を明確化
    • 喫煙室や喫煙所整備に関する詳細なニーズの把握や分析

お問合せ先

本調査に関するお問い合わせ先

国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部 たばこ政策情報室
担当:平野、出川、梶原
〒104-0045 東京都中央区築地 5-1-1
ダイヤルイン:03-3547-5201(内線 1646) E-mail:tobacco●ncc.go.jp

その他全般についてのお問い合わせ先

国立研究開発法人 国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
担当:がん対策研究所 がん登録センター 院内がん登録室 高橋 ユカ
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
ダイヤルイン:03-3547-5201(内線 3548)(担当:高橋)
TEL:03-3542-2511(代表) E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp

関連ファイル

Get Adobe Reader

PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

ページの先頭へ