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国立がん研究センター

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国立がん研究センターバイオバンクでの分譲試料提供を開始研究内容の機密性保持や知的財産の帰属に配慮した提供方法により企業等による開発研究を推進

2025年5月19日
国立研究開発法人国立がん研究センター

発表のポイント

  • 国立高度専門医療センター(ナショナルセンター)では各施設の特色を活かした研究を進めるため、さまざまな疾患の試料を確保し、研究での利活用を進めるバイオバンク事業を推進しています。[1]
  • 国立がん研究センターバイオバンクは、国内最大のがん関連試料を有するバイオバンクである[2]とともに、ナショナルセンターバイオバンクの中ではもっとも多くの共同研究を実施しています[3]
  • さらなる研究促進のため、企業等への試料提供を共同研究での活用に加え、独自のがん研究に活用できる試料の分譲提供を開始します。
  • 分譲提供は、研究内容の機密性、成果の独占や派生する知的財産の帰属の点で企業等に有利であるため、企業等での創薬や革新的な技術開発における利活用の拡大が求められていました。
  • 開始されるがん試料の分譲提供によって、日本でのさらなるがん研究の推進が期待されます。

[1] https://ncbiobank.org/(外部サイトにリンクします)
[2] https://www.ncc.go.jp/jp/biobank/achievement/index.html
[3] https://ncbiobank.org/research/index.php(外部サイトにリンクします)

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(所在地:東京都中央区、理事長:間野 博行)は、がんの創薬や革新的な技術開発を加速させるため、国立がん研究センターバイオバンク1に保管されるがん試料の企業等での利活用範囲を拡大し、2025年6月から分譲提供を開始します。

国立がん研究センターバイオバンクでの企業等への試料提供はこれまで国立がん研究センターの研究もしくは国立がん研究センター研究者との共同研究に限定し、研究を推進してきました。しかし、企業による創薬や革新的な技術開発においては、その情報・技術の機密性や知的財産の独占が重要であるものの、共同研究ではその内容を明かし、研究成果としての知的財産についても取り決めを行う必要があるため、独自開発を行いたい場合、特に開発初期においては共同研究での試料活用を行い難い状況がありました。一方、分譲提供は機密性、知的財産の独占などの点で、特に企業における研究開発に大きく利する内容となっており、利活用の拡大が求められていました。そこで、2022年より患者さんへの倫理的な配慮を最優先として、試料の分譲提供について検討・準備を進めてまいりました。

分譲という新しい提供方法を加えることで、企業等による試料の利活用がさらに進み、日本でのがん研究が加速することが期待されます。また、分譲提供に関する説明会を2025年6月2日に行います。

背景

国立がん研究センターは、がんの診断、治療、予防に向けて国のがん対策の中心拠点としての役割を担い、国内外を問わず広くがん研究を支援しています。がん研究では、研究に資する血液・組織などの試料が必要となることから、試料の研究活用について患者さんから同意をいただきがん研究に役立てるバイオバンク事業を1994年から開始しています。国立がん研究センターバイオバンクは、これまで13万人以上の患者さんにご協力いただいている国内最大のがん関連試料を有するバイオバンクです。ナショナルセンターバイオバンクの中でも最も多くの共同研究による試料の活用が進んでおり、胆道がんの治療標的の同定およびその阻害剤の特定、肺腺がんの新たな融合遺伝子の同定およびその治療薬の開発、精密医療のための遺伝子パネル検査の開発など、現在の医療に活かされているものも多く存在します。また、試料活用された研究にはNatureをはじめとするインパクトの高い雑誌に掲載される報告も含まれています。

バイオバンク試料の分譲提供方法について

分譲についての詳細は、国立がん研究センターホームぺージに記載されている通りで、そのフローチャートを示します。試料の分譲申し込みのあと、分譲審査委員会で、5つの項目(研究の目的の妥当性、研究内容の妥当性、分譲する試料・情報の妥当性及び適格性、分譲を希望する研究機関の研究実施体制の妥当性及び適格性、その他分譲に必要な事項)が審査されます。審査に合格するとMTA注2を締結した上で、提供となります。

20250519.jpg

分譲試料および費用

希少がんを含む多様ながん患者由来の血液から採取された以下の2つの試料が分譲の対象です。バイアルあたりの試料を準備する費用に相当する実費相当額を対価として受領します。

DNA

分注量(濃度)

50 μL/tube (150ng/μL以上)

保管温度

-80℃

血漿

分注量

700 μL/tube

保管温度

-80℃

分譲提供開始に当たっての説明会

事業の開始にあたり、利用に関する説明会を開催させていただきます。 分譲を希望、または今後検討を予定される方はご参加ください。

説明者:      谷田部 恭(研究所バイオバンク部門長) 
日 時:      2025年6月2日(月曜日)13時00分から13時30分 
会 場:      国立研究開発法人国立がん研究センター(東京都中央区築地5-1-1) 
                  管理棟1階 第二会議室(現地及びTeams開催) 
申込方法:   NCCバイオバンク ホームページ(https://www.ncc.go.jp/jp/biobank/index.html)からお申し込みください。

国立がん研究センターバイオバンクのホームぺージ

試料の分譲に関する詳細は、ホームページをご確認ください。

NCCバイオバンク ホームページ(https://www.ncc.go.jp/jp/biobank/index.html

展望

一般に、バイオバンクやデータベースを構築し、広範に利用することによって種々の疾患の理解や治療につながることは科学界の統一見解[4]であると考えられており、バイオバンクの有効な利用は世界中で進められています。これまで国立がん研究センターバイオバンクの試料を用いて、2024年(令和6年度)末までに全国1,040の研究機関と共同研究が行われ、1,228報の論文が作成されました。この数は年々増加しており、さらに日本における研究の広い推進に寄与し、さらなる疾患の理解や新たな治療に発展することが期待されます。

[4] OECD Guidelines on human biobanks and genetic research database, Eur J Health Low. 2010; 17: 191-204

国立がん研究センターバイオバンクの活用実績

研究実施件数(累計値、単位:機関)

資料提供先区分

2022年度

2023年度

2024年度

  企業

282

307

338

  大学

362

407

461

  その他

169

202

241

研究論文数(累計値、単位:報)

 

2022年度

2023年度

2024年度

年度ごと発表論文数

1,036

1,155

1,228

 

用語解説

(注1) バイオバンク

患者さんや健康な方々の試料(血液や組織などの生体試料)と、それらに紐づく診療情報や生活習慣に関する情報を収集、一括保管し、医学研究に利活用する仕組みです。国内ではバイオバンクジャパン、東北メディカルメガバンク計画、ナショナルセンター バイオバンクネットワークが3大バイオバンクと呼ばれています。国立がん研究センターバイオバンクは、ナショナルセンター バイオバンクネットワークに参加するもっとも試料数の多いナショナルセンター バイオバンクです。

ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク:https://ncbiobank.org/(外部サイトにリンクします)

(注2) MTA

Material Transfer Agreement(物質移動合意書)の略で、主に研究機関間で有形物(細胞、遺伝子、試薬など)の提供・受領を行う際に締結される契約書のことで、試料採取の際の患者さんの同意の範囲、試料の取扱いや権利、免責事項などが合意されます。

お問い合わせ先

バイオバンクに関するお問い合わせ

国立研究開発法人国立がん研究センター
研究所 バイオバンク事務局 
坂本、田中、飯村 
電話番号:03-3547-5201(内線 3160)
Eメール:Biobank_office●ml.res.ncc.go.jp

広報窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室 
電話番号:03-3542-2511(代表)
E-mail:ncc-admin●ncc.go.jp

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