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褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)

更新日 : 2020年6月1日

公開日:2020年5月18日

褐色細胞腫について

褐色細胞腫は、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍です。主に、腎臓の上に位置する副腎の髄質から発生します。まれに副腎の外(頸部・胸部・膀胱付近などの傍神経節)に発生することもあり、これらはパラガングリオーマ(副腎外褐色細胞腫)と呼ばれます。
本疾患は、発作性の高血圧や、通常の降圧剤での治療でよくならない高血圧を詳しく検査する過程で発見されることが多いとされています。2009年時点の国内調査では、推定患者数は年間約3,000人で、高血圧患者のうち1%未満で見つかったとされています。また、副腎に偶然みつかった腫瘍の詳しい検査で診断される方が約10%にみられます。

症状について

カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たします。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉そく(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈することがあります。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもあります。

検査について

副腎腫瘍の精査として、カテコラミンを過剰に産生しているかどうか評価するため、カテコラミンおよびその代謝物を尿中・血中で測定します。また、腫瘍の位置や広がりを評価するためにCTや、MRI検査、123I-MIBGシンチグラフィー、FDG-PET-CT、オクトレオチドシンチグラフィーなどを行います。

 

  • 造影CT検査

    造影CT検査

  • 123I-MIBGシンチグラフィー

    123I-MIBGシンチグラフィー

 

遺伝性について

褐色細胞腫は、発症した原因の約30~40%が遺伝によるもの(家族性腫瘍)と報告されています。SDHB・SDHD・VHL・RET・NF1と呼ばれる遺伝子をはじめとし、現在では10種類以上の、褐色細胞腫と関係した遺伝子の変化が明らかになっています。遺伝子の変化がみつかることで、フォローアップの方針検討や血縁者の発症リスク特定に役立つことがあります。多発性内分泌腫瘍II型・Von Hippel Lindau 病(フォン・ヒッペル−リンダウ病)・レックリングハウゼン病などの遺伝性疾患と判明すれば、褐色細胞腫以外の疾患の併発のチェックなど、継続的なサーベイランスなどが有効な可能性があります。しかし、遺伝子の変化の同定によりご家族への遺伝の可能性など、考慮するべき点が増える可能性があり、遺伝子検査の前後にはその結果わかることと懸念事項について、十分な遺伝カウンセリングを受けることを推奨します。

治療について

治療には、腫瘍そのものに対する治療と、カテコラミン過剰症状に対する治療の2つがあります。
腫瘍そのものに対する治療の第一選択は手術での腫瘍摘出です。
手術には血圧や体液量管理が重要であり、降圧剤(α遮断薬)、補液の投与など全身管理を慎重に行います。手術後は、術後再発のチェックのために、定期的な画像検査や採血などを行います。
手術で切除困難なケースや、ほかの内臓に病巣を認めたり、術後に再発をきたした際は、抗がん剤治療を行うことがあります。抗がん剤治療の内容としては、CVD療法(シクロフォスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジン)の治療成績が最も多く報告されています。CVD療法により、約半数の症例で腫瘍の縮小を認めると報告されており、症状改善など、短中期的にQOL改善に繋がる可能性はありますが、効果に関したデータは乏しく、主治医の先生とよく相談して治療法を決めることが大切です。
その他、本邦では保険適用外の治療ですが、海外においては、131I-MIBG内照射や分子標的薬(スニチニブなど)といった治療も、有効性が報告されています。
カテコラミン過剰産生による症状のコントロールは、それぞれの症状に対する治療を行います。例えば、高血圧に対しては降圧薬を内服します。しかし、降圧剤のみではコントロールが難しい場合、カテコラミン合成酵素阻害剤(メチロシン)を使用します。高度便秘や腸閉そくをきたした場合、フェントラミン(α遮断薬)も使用されます。
薬剤投与、腹部の触診、侵襲的な検査・処置をきっかけにカテコラミン分泌が急に上昇し、褐色細胞腫クリーゼと呼ばれる血圧の著しい上昇をきたして、放置すると臓器障害で致命的となる場合があります。そのため、診察や投薬の際には注意が必要です。
このように、治療に際しては、外科医、麻酔科医、放射線治療医や腫瘍内科医だけではなく、ホルモンの専門家である内分泌内科医のサポートを含めた、多職種で治療を行うことが重要な腫瘍です。

執筆協力者

米盛 勧(よねもり かん)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 米盛 勧(よねもり かん)

  • 国立がん研究センター中央病院
  • 乳腺・腫瘍内科 先端医療科

 

下井 辰徳(しもい たつのり)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 下井 辰徳(しもい たつのり)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 乳腺・腫瘍内科

 

須藤 一起(すどう かずき)
  • 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 須藤 一起(すどう かずき)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 乳腺・腫瘍内科 先端医療科

 

小島 勇貴(こじま ゆうき)
  • 小島 勇貴(こじま ゆうき)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 乳腺・腫瘍内科  Physician Scientist

 

新垣 誉子(あらがき もとこ)
  • 新垣 誉子(あらがき もとこ)

  • 国立がん研究センター中央病院 レジデント

 

内原 正樹(うちはら まさき)
  • 内原 正樹(うちはら まさき)
  • 国立がん研究センター中央病院 専攻医

 

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