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希少がんセンター

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センター長ごあいさつ

更新日 : 2020年12月8日

公開日:2014年4月28日

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希少がんセンターは、希少がんの正しい診療を行うこと、希少がんに関する新しい知見を集め希少がんの研究、治療開発を推進すること、さらに実際の診療・研究活動を通して、希少がん医療の課題を明らかにし、解決してゆくことを目指して、国立がん研究センター横断的な組織として2014年6月に発足しました。2018年4月からは、国の希少がん対策を担う希少がん中央機関の中心的な役割も果たしています。

胃がんや乳がん、あるいは“5大がん”という言葉は聞いたことがあっても、“希少がん”という言葉を聞いたことがある人は、まだ少ないかもしれません。希少がんとは、特定のがん種をさす言葉ではなく、発生の“まれ”ながん全体をさす言葉です。

希少がんは、ただまれであるがゆえに、5大がん”など他のがんに比べて、それぞれの疾患の診断や治療、研究にたずさわる人材、経済的な支援に乏しく、診療の体制も十分に整えられたとはいえない状況にあります。近年、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など有効な薬物療法の開発が大きく進み、がん診療連携拠点病院の整備、がん医療の均てん化などの対策が進められた結果、5大がんをはじめとして多くのがんの治療成績は着実に改善しています。その一方で、希少がんに関しては、残念ながら、治療実態の把握もいまだ十分ではなく、生存率の改善もその他のがんに比べて劣るなど、多くの課題を残していることが明らかとなっています。 

わが国における希少がんの定義は、2015年の厚生労働省の検討会によって、『人口10万人あたりの年間発生率(罹患率)が6例未満のもの、数が少ないがゆえに診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きいもの』と定められました。この定義に従うと、骨の肉腫、軟部肉腫、脳のグリオーマ、眼の腫瘍、中皮腫、神経内分泌腫瘍、小児がん、など200種類近い悪性腫瘍が希少がんに分類されます。個々の希少がんは、いずれもがん全体の1%にもみたないまれな腫瘍ですが、すべての希少がんをあわせると、がん全体の15~22%にも達します。これは、5大がんの肺がんや乳がんに匹敵する数であり、希少がんの問題はけっして“まれ”なものではないことに気づかされます。 

国立がん研究センターは、これまでも国内でも圧倒的な症例数の希少がんを診療する施設として、世界に誇る治療成績を達成しています。一方、高度化・複雑化するがん医療においては、従来の診療科の枠を超えた対応がますます求められるようになり、新たな治療開発のためには、臨床医だけではなく、研究者、企業、行政、さらに患者さん自身も参加した、より幅広く広範な連携が求められるようになっています。希少がんセンターは、このようながん医療の大きな変革の中で、希少がんの患者さんが、その進歩の波に取り残されないよう、みずから変革を生み出してゆけるよう、国立がん研究センターの英知を結集して挑むために作られました。 

2017年からは、希少がんに対する治療開発を促進することを目標として、“MASTER KEY プロジェクト”という研究がスタートしました。これは、遺伝子パネル検査など最新のゲノム医療と、希少がんに関する貴重なデータをレジストリ(登録)し、希少がんの治療開発を患者さんとともに進めてゆく新しいタイプのプロジェクトです。医療者と患者さんのこのような緊密な協力は、患者さんの数が少ない希少がんにおいてこそ、とても重要なことだと考えています。 

一方、希少がんの患者さんの話をお聞きすると、ご自分の病気に関する正しい情報を得ることに大変苦労された経験をお持ちの方がとても多いことに気づかされます。希少がんセンターは、希少がんに関する正確かつ最新の情報を、広く社会に伝えてゆくことも重要な使命と考えています。そのため、ホームページの内容の充実とともに、フェイスブックを立ち上げ、より新鮮で身近な情報の発信に努めています。また、さまざまな希少がんに関する最新のエビデンスを専門家の先生が分かりやすく解説する“希少がんMeet the Expert”というセミナーを月に2回定期的に開催しています。 

さらに、希少がんの患者さんができるだけご自宅の近くで最適な治療を受けられるよう、より適切な受診のお手伝いをすることを目的として、専任のスタッフによる電話相談“希少がんホットライン”を開設し、希少がん患者さんとご家族、医療者の方々の相談に応じています。開設以来、“希少がんホットライン”の相談件数は2万件を超え、北は北海道から南は沖縄まで、多くの方々にご利用いただいています。希少がんの診断、治療、セカンドオピニオンに関するご相談など、どうぞお気軽に“希少がんホットライン”をご活用ください。 

希少がんセンターは、すべての希少がんの患者さんに“寄り添う”気持ちと、“グローバル“な視野をもって、希少がんのかかえる問題に全力で取り組んでまいります。みなさまのご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。 

国立がん研究センター希少がんセンター
センター長 川井 章

動画

希少がんセンターについて講演:川井章希~主に医療者向け~

(収録日:2018年12月13日)