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がんゲノム医療(プレシジョン・メディシン)のバイオインフォマティクス

当部門が開発したcisCall(Kato et al, 2018, Genome Medicine)およびcisInter の
製品版が搭載されたOncoGuide™ NCCオンコパネル・システムが、
がんゲノム検査医療機器として日本で初めて薬事承認されました。


近年、分子標的薬が多数開発されてきた。それに伴い、検出された遺伝子変異に応じて分子標的薬を処方するがんゲノム医療(プレシジョン・メディシン、より専門的には「臨床シークエンス」と呼ばれる)が進展しつつある。従来の検査法では候補となる遺伝子変異を一回の検査で通常一つしか検査できないが、もし一回で全てを検査できれば理想的である。がんゲノム医療においては、この理想的な検査を、最新の装置である次世代シークエンサーによって行う。しかし次世代シークエンサーは膨大なデータを産出するため、バイオインフォマティクスによるデータ分析が不可欠となる。


当センターでは、医師・科学者が一体となってがんゲノム医療を実現するための研究を行っている。その中で本部門は情報解析を担当し、基礎研究では遭遇しなかった様々なバイオインフォマティクス的問題を解決する研究を行っている。


具体的には、2012 年より院内トップギア(TOP-GEAR)・プロジェクトに関わり、NCC オンコパネル用に、FFPE 試料由来次世代シークエンサー・データから遺伝子変異を検出するソフトウェア(cisCall)の開発や、検出された変異に対応する候補薬剤を自動的に推薦し、その候補薬剤を載せた担当医返却レポート、およびシークエンシング・レポートを自動作成するソフトウェア(cisInter)の開発、出力されたレポートをデータベース化するシステム(cisVids)の開発、エキスパートパネル(がんゲノム医療の専門家会議)を効率的に進めるためのウェブベース・システム(cisMedi)の開発を行っている。また、そのための情報基盤の整備、情報ロジスティックスの策定、院内部門システムと電子カルテとの連携実現、などを行っている。


これらの成果を応用した臨床シークエンス・プロジェクトは、先進医療B「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」として、2018年4月に日本初のがんゲノム医療における先進医療として認定された。また、これらの成果はMASTER KEY プロジェクトでも利用されている。


2018年12月には、cisCall(Kato et al, 2018, Genome Medicine)およびcisInter が改良されて組み込まれた検査装置OncoGuide™ NCCオンコパネル・システムが、がんゲノム医療の体外診断用医薬品・医療機器として日本で初めて薬事承認された。


がんゲノム医療においては多種類のバイオマーカーを一括で測定できるため、新規バイオマーカー探索の重要性がこれまでにもなく増してきている。本部門では、がんゲノム医療に利用しうる新しいバイオマーカーの探索を、国際がんゲノムコンソーシアムのようながんビッグデータを用いて実施している。膨大なゲノムデータおよびその他オミックス分子データ(エピゲノム、トランスクリプトームなど)と臨床情報との関連を分析し、がんゲノム医療で用いうる薬剤効果予測マーカーや予後予測マーカーを探索している。


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  • Mamoru Kato, Hiromi Nakamura, Momoko Nagai, Takashi Kubo, Asmaa Elzawahry, Yasushi Totoki, Yuko Tanabe, Eisaku Furukawa, Joe Miyamoto, Hiromi Sakamoto, Shingo Matsumoto, Kuniko Sunami, Yasuhito Arai, Yutaka Suzuki, Teruhiko Yoshida, Katsuya Tsuchihara, Kenji Tamura, Noboru Yamamoto, Hitoshi Ichikawa, Takashi Kohno, and Tatsuhiro Shibata
    A computational tool to detect DNA alterations tailored to formalin-fixed paraffin-embedded samples in cancer clinical sequencing
    Genome Medicine, 2018, 10, 44.1-44.11 


総説:

  • 加藤 護「がん遺伝子パネル検査におけるバイオインフォマティクス分析手法の開発」、プレシジョン・メディシン、NTS, ISBN 978-4-86043-580-6, 2018, 71-80
  • 加藤 護「ゲノム医療のバイオインフォマティクス・パイプライン」、実験医学、2018, 36, 2645-2652
  • 加藤 護「がんのプレシジョン・メディシン」、アンチ・エイジング医学、2017, 13, 663-669
  • 加藤 護「最新がん個別化医療 - 臨床シークエンスのバイオインフォマティクス -」、癌と化学療法、2016, 43, 391-397
  • 加藤 護「バイオインフォマティクス解析によるがんバイオマーカー探索の現状と今後の展望」、Pharma Medica、2016、34、45-51

2018年6月