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国立がん研究センター 東病院

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診療について

エビデンス(科学的根拠)に基づいた最適な治療の提供

欧米では近年、頭頸部がんの治療成績向上のために高用量の抗がん剤を使用したり、多剤併用するような強力な治療法がさかんに開発されています。このような治療は治療成績を改善させている一方で、強い副作用を伴う治療であることが多く、安全に治療をやり遂げるためには高度な技術と知識を必要とします。わが国には頭頸部がんの薬物療法に精通した医師が少なく、副作用をなるべく出さないように最初から薬物の用量を下げたり(効果も低下)、手術まで待ち時間が長いために抗がん剤を行ったり(メリットは証明されていない)と、医療者側の都合に合わせた治療が横行しています。また、これまで適切な多施設共同臨床試験が行われてこなかったために、各施設独自の治療が行われ、エビデンス(科学的根拠)に乏しい治療が数多く存在しています。さらに十分な治療説明がないことから、治療方針に疑念を持ったがん難民も多いです。我々はこのような状況を打破するために、まず患者に病状・治療選択肢について十分説明し、合同カンファレンス(頭頸部内科、頭頸部外科形成外科放射線治療科放射線診断科歯科薬剤部)にてエビデンス(科学的根拠)に基づいた最適な治療を検討し、患者の価値観やQOLを重視したうえで患者にとって最適な治療方針を決めています。

根治切除不能な局所進行がんのみならず喉頭温存を希望する場合、あるいは術後再発のハイリスク因子を有する場合も、化学放射線療法が標準治療(科学的根拠に基づいて最も推奨される治療)です。しかし、その約半数は再発をきたします。したがって、標準治療だけ実施するだけでは不十分であり、さらなる治療成績向上を目指すべきだと我々は考えています。

標準治療では根治が難しいものとして、両側頸部リンパ節転移(N2c)、6センチメートル以上の頸部リンパ節転移(N3)、鎖骨上まで及ぶリンパ節転移(Level IV)など、遠隔転移のリスクが高い場合が挙げられます。このように標準治療では完治困難と思われる場合には、現在最も腫瘍縮小効果の高い「導入化学療法」を行い、その後、化学放射線療法を行っています。導入化学療法については、「導入化学療法→化学放射線療法」と「化学放射線療法単独」の無作為化比較試験においてその意義が検討されていましたが、2014年に導入化学療法による生存の上乗せ効果を示す試験が報告されており、最も期待されている治療の一つです。

頭蓋内浸潤、視神経浸潤している鼻副鼻腔がんは、最初に化学放射線療法を行うと脳壊死、失明のリスクが高くなり、根治する可能性も低いことから緩和的治療を提示されることも少なくありません。しかし、我々の施設では、まず導入化学療法にて腫瘍縮小を試みて、頭蓋内、視神経への照射の影響を最小化させてから、陽子線治療±化学療法の同時併用を行っています。すなわち、放射線照射による晩期毒性も考慮しながら、根治を目指しています。

頭頸部がん支持療法の啓発

化学放射線療法は、粘膜炎、嚥下障害、皮膚炎などの重篤な毒性が高頻度であるため、治療を完遂するには、感染管理、疼痛管理、栄養管理などの適切な支持療法が必須です。感染管理には口腔ケア、皮膚炎管理、骨髄毒性の管理、疼痛管理には医療用麻薬の積極的な使用、栄養管理には予防的胃瘻造設による経腸栄養を推奨しています。我々は早くからこの支持療法の啓発活動を院内のみならず、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)における多施設共同臨床試験、頭頸部癌支持療法研究会を通じて院外にも行っており、支持療法の重要性を全国に発信しています。支持療法が不十分であれば、患者のQOLを維持することが難しくなるのみならず、治療完遂が困難となり治療成績低下にもつながることをさらに啓発していきたいと考えています。

国際共同臨床試験への参加を通じたドラッグラグの解消

近年、頭頸部がんを対象とした分子標的治療薬の開発が世界中で進んでいます。EGFR阻害剤であるCetuximab(セツキシマブ)は、再発・転移頭頸部がん患者への化学療法との併用、さらに放射線照射との併用にて生存への上乗せ効果が示され、世界80ヵ国以上で承認されています。わが国では、頭頸部がんに対しては海外承認から約5年遅れでようやく2012年の12月に効能追加(承認)されました。このようなドラッグラグを解消するために、当科では頭頸部がんや甲状腺がんに対する新薬の国際共同治験に積極的に参加しています。そのおかげで2014年、Sorafenib(ソラフェニブ)が海外とドラッグラグなく、根治切除不能分化型甲状腺がんに効能追加されました。さらに2015年にはlenvatinib(レンビマ)が根治切除不能な甲状腺癌に承認されました。現在ではわが国で頭頸部がんに対する国際共同治験に参加可能な施設が増え、登録患者数も国別で上位を占めるようになりました。また、現在注目されている免疫チェックポイント阻害剤の治験にも数多く積極的に参加しおり、海外と遅れなく承認が期待されます。

亜部位、治療法別の年間新患者数
(総数276名 2015分年1月1日から2015年12月31日)
亜部位人数(N=276)治療法人数(N=276)
鼻副鼻腔 33 導入化学療法→化学放射線療法 45
上咽頭 17 化学放射線療法単独 34
中咽頭 44 化学療法 47
下咽頭 55 治験 14
口腔内 57 その他 136
喉頭 16    
唾液腺 14    
甲状腺 28    
その他 12