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所長ごあいさつ

がん対策研究所が目指すこと
~高度化・多様化する社会ニーズに機動的に対応し、がん対策への一層の貢献を果たす~

中釜 斉 理事長写真

国立がん研究センターにおける公衆衛生科学・社会医学的な研究及び事業は、これまで「社会と健康研究センター」と「がん対策情報センター」の2つのセンターが主に担ってきました。「社会と健康研究センター」は、2004年に「がん予防・検診研究センター」として設置され、2016年には公衆衛生学研究の一層の充実を図るために「社会と健康研究センター」へと名称を変え、日本の疫学研究をリードする住民コホート基盤(JPHC及びJPHC NEXT)を構築・運営し、科学的根拠に基づいたがんの予防・検診の普及と実装、がん患者・がんサバイバーへの支援、支持療法の充実と開発などの役割を担ってきました。「がん対策情報センター」は、2006年に制定された「がん対策基本法」及び「がん対策基本計画」に基づいて2007年に設置され、全国のがん医療ネットワークのハブ機能の構築、科学的エビデンスの確立された情報の提供、全国がん登録・院内がん登録事業の運用、がん医療の均てん化に資する施策提言とモニタリング、がんサバイバーシップ支援等を担ってきました。

一方で、近年の急速な超高齢社会の進展と医療技術の革新的な進歩を背景に、がん対策及びがん情報に対する社会的なニーズは急速に高度化・多様化し、社会医学・公衆衛生学的な課題を各センターや部門が個別に対応することが容易ではなくなってきました。このような高度化・多様化する社会のニーズを的確に捉え、積極的かつ機動的に課題解決に向けた政策提言をしていくためには、社会医学系の研究者の多様な専門性を結集し、組織横断的プロジェクトとして、研究開発から政策実装までを一貫して実施できる体制が必要となります。また、医療技術の進歩は、ゲノム医療や免疫学的治療などの最新の治療法を提供する医療現場にもその対応が求められています。がん患者及び国民が刻々と進化する治療法や医療情報に確実にたどり着くためにも、最新のエビデンスの迅速な普及と実装に関わる技術も高度化する必要があります。「社会と健康研究センター」と「がん対策情報センター」を統合・再構成し、両センターがこれまでに培ってきた技術や知識、経験を集約し、こうした課題に対して効率的かつ戦略的に取り組んでいくために、この度、新たに「がん対策研究所」を開設しました。

がん対策研究所の理念は、“すべての人が、健康と尊厳をもって暮らせる社会を実現する”ことです。“社会と協働して、エビデンスを創り、がん対策につなげ、すべての人に届ける”ことをその使命とし、(1)世界を変える新たな科学的知見を創り、(2)社会のニーズに応え、科学的知見を結集してがん対策につなげ、(3)すべての人に確かな情報を届け、がん対策の実装とその支援を行うことを目指します。新たな組織として生まれ変わる「がん対策研究所」が、職員の総力を上げて、国民ががんを予防できる、そしてがん患者が安心してがんと共生できる社会の実現に取り組んでいきます。皆様のご理解とご支援をお願いしたいと思います。


国立研究開発法人 国立がん研究センター 理事長
がん対策研究所 所長
中釜 斉